第257話「これからも俺達は、人々を支え、支えられる人生を送って行くだろう」

リオネルが開拓した新たな農地、農地全体を囲む頑丈な岩壁を見て、

村長と助役はとても大喜びした。


当然モーリスも、リオネルが生成した岩壁を事前に念入りに確認、

100点満点を出した。


嘘も方便とばかりに、

「いかにも自分が魔法を使った」ように偽ったのは、言うまでもなかった。


一方……

リオネルが新たな農地を開拓しているのと同時間に、モーリスが地の魔法を行使。


頑丈な岩壁を生成し、

村の周囲を高さが10mもある防護壁を造って囲んでしまった。


結果、村の安全度、防衛力は著しく増した。


「いずれは物見やぐらも造り、警戒は怠らない」

と、新農地の完成を喜んだ村長は嬉しそうにリオネル達へ告げた。


村民はオークどもを始め、様々な外敵にいきなり襲われる事は無くなったのだ。


そのオークどもの脅威も、リオネル達の討伐により、無くなった。


しかし魔物は、どこからともなく現れ、人間の賊も容赦なく襲って来る。


外敵の脅威は再び無い、二度と無いとは、断言出来ない。


リオネル達は切々と、「油断大敵」「勝って兜の緒を締めよ」と、

丁寧ていねいな物言いで村長と助役をさとした。


そんなこんなで農地の確認が終了。


リオネル達と帰村後、


村長と助役は村の中央広場へ、村民全員を集め、

リオネル達から受けた注意を話した。


そして新たな提案を示したのだ。


新たな提案とは……『村の自警団の結成』である。


対して、村民は即座に全員が賛成した。


創世神教会の元司祭の冒険者モーリスに率いられた、

リオネル達、若き少年少女が勇ましく戦う姿を見て、

怯え、臆していただけの村民達の意識は変わっていたのだ。


明日からは1週間、大勢の村民有志が、リオネル達から訓練を受ける予定である。


そして、そして!


いよいよ満を持して、発表。


既存の農地の隣に、『広大な新農地が完成』した!!


という、これまた村長の喜ばしい通達で村民達は大歓喜。


「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」


そんな村民達を見て、リオネル達も大いに喜んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌日は早朝から……


張り切った村民達は総出で、農作業となった。


そして、村民達全員は、はっきりと目の当たりにした。


今までの農地の隣に、リオネルにより開拓された、

広々とした新たな農地が増えていたのを。


「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」


再び、村民全員から大歓声があがったのは言うまでもない。


皆、張り切って作業に取り掛かる。


村の防護壁同様、農地の周囲には、表向きモーリスが、

実はリオネルが生成した頑丈な岩壁があるから、安心して農作業が出来る。


既存の農地と合わせ、村の作物生産量は、とても多くなるだろう。

それゆえ、村民達の表情はとても明るい。


作業は順調に進む。


ミリアンの水属性魔法により、灌漑設備も整った。


村民達は、大声で話している。

何を植えようか、相談しているらしい。


一昨日おととい夜の慰労会で、

リオネル達は村民達から感謝され、握手攻めにあった。


村民達は皆、晴れやかな笑顔だった。

感極まって、泣いている者も居た。


……リオネルは、キャナール村における、モーリスの言葉を思い出す。


「ようやく! キャナール村の明日が! 彼らに未来が見えたんだ! はっきりとな!」


そしてキャナール村の司祭兼村長パトリスの言葉も、


「モーリス達にも、充分感謝しているが……リオネル君! 村民へ戦う勇気をくれ、絶望に陥っていたキャナール村の明日を! 未来を! 切り開いてくれたのは君だ! 本当に本当にありがとう!」


オークに難儀していたこの村も、やっと前を向き、歩き出せた。


明るい未来に向けて、第一歩を踏み出せた。


俺達4人は、その手伝いが出来たんだ。


これまで、いろいろな町村へ赴き、何度も同じ喜びを味わった。


俺も、モーリスさんも、ミリアンも、カミーユも、

この喜びを絶対に忘れない。


これからも俺達は、人々を支え、支えられる人生を送って行くだろう。


達成感を覚えたリオネルは村民達に混ざり、

農作業で懸命に汗を流していた。


……新農地が完成してから、1週間。


リオネル達が、村民の自警団を訓練したり、

村の作業に協力する中、……話はとんとん拍子に進んだ。


ローランドの援助、教育的指導に近いアドバイスもあり、貴族領主からも、

今後の騎士隊の定期的な警備、巡回、緊急時の派遣、が確約されたのだ。


更に商業面でも話はまとまった。


村長からは、安全面に関する以上の発表が為された後、

物資の搬入搬出の頻度アップも通達されたのだ。


モーリスを含め、ワレバットを含め、各地から来訪する商人の往来が多くなり、

村に物資が不足する事はもう無いだろう。


逆に村の余剰生産の作物も売る事も可能になると、村長は言う。


村民が、再び大歓喜したのはこれまた言うまでもない。


リオネル達は、予定よりも更に5日長く、村に滞在。


再訪を望む、村民達から熱い声援を受け、村を後にしたのであった。

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