第245話「さらば! 英雄の迷宮」

いにしえの英雄、

リオネルと邂逅したソヴァール王国建国の開祖、

アリスティド・ソヴァールの亡霊が行使した失われた古代精霊魔法、

転移魔法で一気にスキップ!


最下層地下10階層記念碑前から、一気に地下6階層へ送られたリオネル一行。


そのまま、地下5階層へ戻った。


その後、慰労会という事で、

いつもの居酒屋ビストロで昼食会兼打ち上げを行うと、

その日は疲れを癒す為に、それぞれの宿へ一泊。


さすがにぐっすりと眠り……


翌日、午前7時にブレーズ、ゴーチェと待ち合わせして、全員で出立。

地下4階層へ赴いた。


今日は、転移魔法で飛ぶとかではなく、

『自力』で一気に地下1階層経由で地上を目指す。


リオネルは5階層から一気に10階層へ降りた昨日同様、

先行する魔獣ケルベロス、アスプへ指示。

彼らへ索敵と同時に、約8割くらいの敵を排除して行くように命じた。


残りの約2割の敵に対しては、リオネルはモーリスと相談。

ブレーズとゴーチェへお願いし、了解を取った。


お願いしたのは……

ミリアンとカミーユの『大きな成長』も考慮し、

並びを……『フォーメーション』を変更する事にしたのだ。


未知だったリオネルの能力を見極めたいと望んでいたブレーズ。


いくつかの奥義と魔法、スキルを見極めたゆえ、納得して中段へ下がり、

入れ替わりで、ミリアンとカミーユが、リオネルとともに前衛へ入ったのである。


結局、

魔獣軍団を先行させ、リオネル、ミリアンとカミーユ、ブレーズ、モーリス、最後方はゴーチェという形となった。


こうして……

地下4階層から1階層まではリオネルのフォローを受けながら、

姉弟が前面に立って戦う事となった。


この英雄の迷宮へ入った当初は臆し、緊張気味のミリアンとカミーユであったが……


リオネルのフォローありきとはいえ、戦いを重ね、

すでにオークの上位種オークカーネル、バジリスク等の強敵を、

姉弟ふたりで倒している。


ケルベロス、アスプが約8割の敵を倒し、出現する敵が少ない事、

リオネルを始め、心強い味方がそばに居たこともあり……

ミリアンとカミーユは余裕を持ち、敵に対し、堂々と渡り合う事が出来た。


リオネルは、ふたりの戦いぶりを見て確信する。


これなら、モーリスと3人で上手く戦えば、

とんでもなく上位の敵ではない限り、充分に通用するはずだと。


という事でミリアンとカミーユの快進撃は続き、リオネルのフォローも入りはしたが、危なげなく地下1階層まで戻る事が出来た。


一行は、安全エリアの地下1階ホールへ入った……


ブレーズ、ゴーチェに対し、守衛達が最敬礼するのを見ながら……


リオネル、モーリス、ミリアンとカミーユは、

地下1階層から下層へ降りる入り口を見つめた。


ここから、この英雄の迷宮の探索……冒険が始まった。


多分この4人が揃って、この迷宮へ来る事は、もう二度とないだろう。

そう思うと、ひどく感慨深い。


リオネルは記憶をたぐる。


……最下層地下10階層へ行くまでに、いろいろな出来事、事件があった。


ふらちなルーキーキラーどもの襲撃事件。


その事件の後、地下2階層においての、15歳のミリアンから愛の告白……

人生18年、リオネルが生まれて初めて受けた、

可愛い女子からの愛の告白である……


残念ながら、その場でミリアンへ応える事は出来なかったが……

共に交わした『5年後の約束』の想い出も含め、一生忘れない事だろう。


ブレーズ、ゴーチェとのいきなりの再会にはびっくりした。

食事を一緒に摂り、いろいろ語り合ったのはとても楽しかった。

仕事から、趣味、他愛のない話まで、存分に。

食べた料理も美味しかった。


一度は見たいと願っていた、

剣聖ブレーズの誉れ高き剣技を目の当たりにする事も出来た。


今後のリオネルの戦いの参考とし、かてにもしたいと思う。


宝箱も開け、隠形、忍び足も上達。

さすがにブレーズには探知されたが、シーフ職のレベルも大きく上げた。


そしてソヴァール王国建国の開祖、

アリスティド・ソヴァールの亡霊との邂逅……

失われた古代精霊魔法、転移魔法の習得。


成長したのはミリアンとカミーユだけではない。


むしろふたり以上に成長する事が出来たのは、リオネルであるといえよう。


リオネルは数多の奥義、魔法、スキル、武技を習得し、最強への一歩をまた上った。


習得した全ての技能を極めたい。


特に、アリスティドから習得した『転移魔法』を試してみたい気持ちが強い。


だが、使いどころが難しい。

タイミング、場所に関しては充分な注意が必要であり、

修行にも細心の注意を払わねばならない。


しばらくは、公の場では使わない方が良いだろう。


超が付く俊足のリオネルだから、アリスティド同様に、

足の速さで神出鬼没という事でごまかすのも、ありかもしれない。


あ、そうだ!

身体能力も更にビルドアップしよう!

特に跳躍力が上がっていそうだ!

鍛えるぞ!


魔法も研究し、上位レベルの魔法をガンガン習得しよう!


気合が満ち、やる気がみなぎる。


英雄の迷宮、地下1階ホールは相変わらず、

様々な種族、数多の人々が居て、とてもにぎやかである。


リオネルはしばし、その光景を見つめていた。

心にしっかり、刻んでおこうと思う……


……つらつら物思いにふけるリオネルへ、モーリスが声をかける。


「さあ、そろそろ行こうか……リオ君。まだ任務が残ってるぞ」


モーリスの言う通り、

ブレーズとゴーチェをワレバットの街へ送る、『オプション任務』が残っていた。

ふたりを送って、この任務は完遂となる。


冒険者ギルド総本部へ赴き、完遂の報告をし、報奨金を受け取る。

ランクアップの確認も楽しみである。


「はい! ですね!」


と返事を戻せば、ミリアンとカミーユも、


「うん! リオさん、ブレーズ様とゴーチェ様をお送りして、一緒に、ワレバットのウチへ帰ろう!」


「おふたりをお送りしてから、とりあえず、みんなでゆっくり、休むっす! その後、ギルドへ報告っすよ、リオさん!」


「了解! よし行こう! ワレバットの街へ!」


リオネルは元気に返事をし、6人全員で英雄の迷宮を出て、

地上の『ヘーロースの町』経由で、冒険者の街『ワレバット』へ、無事に帰還したのである。

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