第241話「俺は希望を全て叶え、人生を全うしますっ!!」

何と何と!!

いにしえの英雄、ソヴァール王国建国の開祖、アリスティド・ソヴァールの亡霊は、


失われた古代の究極精霊魔法『転移魔法』を授けると、

驚くリオネルへ、はっきり告げた。


『て、転移魔法ですかっ!?』


リオネルはもう一度聞き直した。


対して、アリスティドはきっぱりと言い放つ。


『ああ、転移魔法だ』


『転移……魔法』


昨夜、内なる声が告げた大きな力を得るとは、転移魔法だったのだ。

と、リオネルは実感する。


一方、アリスティドは話を続けて行く。


『……我は、ある時、探索した謎めいた異界において『高貴なる4界王』のおひとり、地界王アマイモン様に邂逅かいこうしたのだ』


またも衝撃の発言が、リオネルの心を驚愕させる。


『えええっ!? ち、地界王!? ア、アマイモン様に!? アリスティド様が! お、お会いしたのですか!?』


補足しよう。


地・水・風・火、4つの元素がこの世界を成立させている。


その元素を司るのが4大精霊と呼ばれる存在である。


地はノーム、水はウンディーネ、風はシルフ、火はサラマンダー。


その4大精霊をそれぞれ統括する大いなる存在が、

地界王アマイモン、水界王アリトン、空気界王オリエンス、

火界王パイモンの4名……


この4名が『高貴なる4界王』と称され、精霊達の頂点に立つ最上級精霊達なのだ。


アリスティドが邂逅した、地界王アマイモンは、

ノーム、ノーミードを始め、全ての地の精霊を統括する。


そして、アマイモンは大地を体現したような肉体を持つ、

逞しい男性の姿をした精霊であり、地脈や植物の繁茂を支配する大地の王なのだ。 


『うむ! お会いしたぞ! そして我はアマイモン様にお気にめして頂き、地脈を使い、思う場所へ赴く、転移魔法を我が心へ刻む形で、しかとお教えして頂いたのだ! その後、我は転移魔法の制御と距離延長の修行を重ねた!』


補足しよう。


地脈とは、大地に見られる一続きの筋をいう。


地下水脈や、地層が連続している部分であり、

この世界では、魔術などにおける地の魔力、波動、

またはエネルギーの流れる筋なども指す。


当然、地脈は大地の王で最上級精霊、

高貴なる4界王のひとり、アマイモンが支配する領域なのである。


『アマイモン様とその一族は地脈を使い、世界の様々な場所へ赴く。我は厳しい修行の末、何とか、その入口へたどりつく事が出来た。だが残念ながら、完全に極める事は出来なかった……やっと数kmの距離を、瞬時に移動する事が可能となったレベルだ!』


アリスティドの言う通り、古文書に記載された、彼の逸話には、

『神出鬼没』という記述があちこちに見られた。


『精霊による身体強化魔法による走力の向上』という表向きとして、

その『神出鬼没』の秘密は、この転移魔法だったのだろう。


ブレーズの聞いた古文書記載の話は、

アリスティドの卓越した身体能力に憧れた者が古文書に、


「この英雄の迷宮、最下層に古代精霊魔法『身体強化魔法』の秘密があるのでは?」


という願望を込め、記述を残した。


……というのが、真相かもしれない。


だが……

アリスティドが習得したのは更にレベルの高い『転移魔法』だ。

しかも、彼ほどの逸材でも……

転移魔法の『入口』へしか、たどりつく事しか出来なかった……


アリスティドは更に言う。


『リオネルよ、お前に授けるものも当然、我が習得した未完成な転移魔法だ……』


未完成な転移魔法……

しかし、数kmの距離を、瞬時に移動する事が可能なのだ。


とんでもない魔法だと言えよう。


もし伝授して貰えるのならば、リオネルにはただただ感謝の気持ちしかない。


加えて、リオネルは相変わらず謙虚であり、前向きでもある。


『はい! でも俺ごとき未熟者に授けて頂くなど本当にありがたいですし、頑張って必ず、転移魔法を完全に習得してみせますっ!』


リオネルが、きっぱり言い切ると、アリスティドは、心底嬉しそうに高笑いする。


『ははははははははははは!!! リオネルよ! 見事だぞ! さすがに、たぐいまれな全属性魔法使用者オールラウンダー! その意気や良しっ!』


アリスティドから褒められ、嬉しくなり、リオネルは大きな声で返事を戻す。


『はいっ!』


『リオネルよ……失われた古代精霊魔法たる転移魔法の完全習得……果たせなかった我が夢を継ぐが良いっ!』


いにしえの英雄、ソヴァール王国建国の開祖、アリスティドの果たせなかった夢、失われた古代精霊魔法たる転移魔法の完全習得……それを自分ごときが継ぐ。


ひどくおそれ多い。


しかし、アリスティドは自分に期待してくれているのだ。


ならば、期待に応えるべく、頑張るのみ!


リオネルは再び大きな声で返事を戻す。


『はいっ!』


『リオネル! たぐいまれな全属性魔法使用者オールラウンダーたる、お前ならば! 日々地道に努力し、数多の人々とともに助け合い、支え合おうとするお前ならば! 近い将来、失われた転移魔法を完全に習得する事が出来るだろう!』


『はい! 手を抜かず日々努力し、頑張って上達し、いつの日にか完全習得してみせますっ!』


『うむ! 転移魔法を完全習得したら更に精進し、遥かなる高みを目指せ! そして! お前の希望を全て叶え、人生を全うせよっ!!』


『はいっ! 俺は希望を全て叶え、人生を全うしますっ!!』


アリスティドから、気合が満ちたエールを送られ、

リオネルの心は大いに奮い立ったのである。

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