第228話「……悪いな。 俺は敵には非情のようだ」
テレポーターの罠で、地下9階層へ飛ばされたリオネル。
ケルベロスとの会話が終わり、起き上がると、もろもろ準備を始める。
いまだにケルベロスの幻影効果は継続しているらしい。
周囲の敵は襲って来ない……
転移魔法で飛ばされたからか、
召喚し、辺りを照らしていた魔導光球が見当たらない。
革鎧に装着した魔導灯はあるが、心もとない。
なのでまず、リオネルは照明魔法を再発動する。
『ルークス!』
ぽわ!
リオネルが照明魔法の
やや魔力を抑えた『魔導光球』が「そっ」と闇に浮かび上がった。
リオネルは、愛用の懐中魔導時計を見た。
午前10時少し過ぎ……
朝早く出たから、あまり時間が経っていない。
ブレーズ様とゴーチェ様も居るし、まだまだ仲間は地下8階層に居るはず。
俺を探しているに違いない。
今は、この英雄の迷宮、地下9階層にたったひとりのぼっち。
目指すは8階層へ昇る階段。
そして、仲間との合流。
それまでに『いろいろ』試してやろう。
俺は「転んでもただは起きぬ」だ。
転移魔法の罠で飛ばされたけど、前向きになれ!
このチャンスを大いに有効活用してやる!
依頼されたギルド総本部公式地図の確認、9階層分も、
リミットを決め、時間が許す可能な限りやっておこう。
合流した後に要確認だが、
上手く行けば、明日は地下10階層へ直行が可能かもしれない。
ぱぱぱぱぱぱ!とリオネルは考え、実行のシミュレーションを行う。
よし! やる事は決まった。
また……
大いに迷ったが、熟考して、念話で無事を知らせる事はやめておく。
自分を心配する仲間の気持ちを考えれば……
ひどく申し訳ない気持ちとなる。
だが、仕方がない。
最後まで絶対に秘す、チートスキル『エヴォリューシオ』『見よう見まね』
そして、現時点でモーリス、ミリアン、カミーユだけに明かした、
ぎりぎりまで秘す
それ以外の習得した能力を本格的に公開するのは、他国、の、
フォルミーカ迷宮へ行ってからだと決めたのだ。
冒険者ギルド総本部発行の公式地図を見てと、
魔力感知も併せて……俺が今居る、現在位置を確認。
装備した武器――スクラマサクス、こん棒。魔法杖を確かめ、
小型盾を装着し直す。
さあ!
行くぜ!
リオネルは不敵に笑い、地下9階層の探索を開始した。
ついでに地下10階層へ降りる階段の確認もしておくつもりだ。
シーフ講座の受講で習得した、
気配を限りなく消す『隠形』と、足音を極力小さくする『忍び足』とを使い、
敵に存在を感知されにくくし、リオネルは軽快に歩いて行く……
習得してから、気が付けばまめに使っていた。
結果、熟練度は習得時から大幅にアップしていた。
8階層へ昇る階段の位置も地図と魔力感知で分かる。
だから、足取りに迷いはない。
……すぐ敵に遭遇した。
気配を消したリオネルに全く気付いていない。
よし!
隠形、忍び足、両テスト合格!
遭遇したのは……
半人半獣の魔獣ミノタウロス1体である。
レベルは……45。
補足しよう。
ミノタウロスは、『ミノスの雄牛』という名を持つ、
頭は牛、身体は人間、足先が牛という半人半獣の怪物である。
人肉を好み、性格は残忍。
肉体は
魔法は使えないが、人間では対抗出来ぬほど力が強い。
知能はそれほど高くなく、完全に脳キンである。
すすすっ、とミノタウロスに肉薄したリオネル。
小型盾で軽く小突いた。
ぶもおおおおおおおおおおお!!??
ようやくリオネルの存在に気付いたミノタウロスは、持っていた
リオネルは敢えて避けず、左腕の小型盾で受けた。
カミーユ、ミリアンにも譲った盾であるが、
もしも壊れても、予備を大量に購入済みなので、全く平気だ。
がいいいいいいんんんん!!!
凄まじい音がしたが、さすが強化ミスリルの高級品。
少しへこんだものの、耐久力は抜群である。
そして、受け止めたリオネルの
盾の耐久テスト&俺の防御力、パワーのテスト、ともに合格!
そして次のテストだっ!
ぎんっっ!!!
と、リオネルの瞳が妖しく光る!
瞬間!
底知れない地獄の深淵のような恐怖がミノタウロスを襲う!!
ぶもおおおおおおおおおおお!!!!
驚き、大きな悲鳴をあげるミノタウロス。
完全な威圧とまではいかない。
だが行使した万能スキル『威圧』レベル補正プラス25、
効果は充分にあったようだ。
隙あり!
すかさず!
特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40だっ!
俺はレベル19!
通用するはずだっ!
ぶもおお……………
リオネルの計算通り、……今度は効いた。
あげた声がかすれ、消え……
ミノタウロスはがくん! と脱力。
迷宮の床へ崩れ落ちて行く……
よし!
テスト合格!
さあ!
とどめだ!
俺は、
習得したばかりの水属性魔法を使ってやれ!
いつもは、魔法杖を発動体に見立てて使っているが、
今の俺は『ぼっち』!!
誰も見ている者は居ない!
目の前の敵以外はな!
リオネルは後方へ飛び退って、距離を取る。
習得した動物の能力も、著しくビルドアップされており、楽々15mは跳んだ。
「すたっ!」と、軽やかに立ったリオネル。
動けないミノタウロスを見据えた。
ビナー、ゲブラー、氷結!!
リオネルは心で吹きすさぶ冷気と言霊をイメージ。
瞬時の神速で魔法は発動された。
ばりばりばりばりばりばり!
派手な音を立て、ミノタウロスは即座に凍結!!
絶命した。
よし!
もろもろ課題をクリアしたぞ!
敢えて言えば、上位の攻防その他も、魔法をもっと習得したい!
今は戦闘に特化しているけど、本来、俺は魔法使いなのだから!
でも!
隠形、忍び足、防御、膂力、威圧、フリーズハイのスキルはOK!
……防御力は多分、破邪霊鎧に裏打ちされた力だろう。
そして、水属性魔法もばっちり!
最後は葬送魔法だ!
リオネルは最後に葬送魔法『昇天』を行使。
倒したミノタウロスの魂の残滓を浄化した。
……悪いな。
俺は敵には非情のようだ。
お前も俺の経験値になってくれ。
既に亡きミノタウロスに一礼。
リオネルは再び、8階層への階段を目指し、歩き出したのである。
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