第201話「姉の思いやり、弟のやる気」
リオネルが行使したスキル『威圧』『フリーズハイ』により、
『戦闘不能』状態に陥ったとはいえ……
連続して繰り出す蹴りの威力は凄まじかった。
オークオフィサー、オークソルジャー2体のオーク上位種へ、
一方的にフルボッコし、あっという間に、とどめをさしたのだ。
とどめをさした後の死骸は、いつものお約束。
これでバッチリ!
ミリアンが、「心の底から嬉しそうな!」という感じで、晴れやかな笑顔を向けて来た。
「よっし! 討伐完了だあ! ありがと♡ リオさん! 愛してる♡ 感謝! 超大感謝だよおっ!」
「おう、良くやったな、ミリアン」
「うふふっ♡ 私、リオさんの意図が分かっちゃったもん!」
「俺の意図?」
「うんっ! リオさん、私が戦いやすいように、セッティングしてくれたじゃない! 相手が戦闘不能なんて、だいぶズルしたけど、これで、オークに対して戦える
「おお、目途がついたか?」
「うん! リオさんは分かってるでしょ? 実は私、オークの上位種に対して、自分の攻撃が通用するのか? そしてギラギラしたエッチな波動を向けて来るオークに対し、女子として、怯えず臆さず戦えるのかって『課題』があったんだ」
「ああ、分かってたよ」
「うふふ♡ 嬉しい! リオさんは私の事を本当に良く分かってる! そしてさ! いっつも
「あったり前さ」
「うふふ♡ おかげさまで、私の蹴りの威力がオークの上位種へ通用するって分かったよ。奴らへ近付く事も全然大丈夫になった!」
「おお、次回は更に上を目指そう! オークどもと正面から戦って、ミリアンの『拳』と『蹴り』が通用するのか、レッツトライだな。やばかったら、魔法を使ってもOKだ。まあ、行けると思うよ」
「うん! ここからが本番だよ。襲いかかる奴らと正対して、攻撃をかわしながら、パンチをぶち込めるか、そして、蹴りも入れられるか、はたまた魔法を使うのか! うんっ! 正念場だね」
「大丈夫、次回もフォローする。今度はミリアン、お前の
「わお! 心強いっ!」
盛り上がるリオネルとミリアン。
だが、ここで
「もうっ! 姉さんばっかり、リオさんを独り占めはNGっす! 次は俺の番っすよ!」
「あ~、ごめん、ごめん、カミーユ。すぐに交代するよぉ! リオさんまたね♡」
「おう! またな」
ミリアンは去り際に、小声でしれっと、
「もしも同じ作戦で行くのなら、私と違って、カミーユには先に『意図』を言っておいた方が良いからねっ、リオさん」
勘が特に鋭いミリアンに比べ、カミーユは常人並み。
それと「むこうみず」な部分もある。
課題と意義を持って戦いに挑むのと、ただ意味もなく無為に戦うのは違う。
無駄であると断言は出来ないが、今この場の戦いはミリアンの言う通りである。
双子の弟を良く知る姉は、本当に心配して助言してくれたのだ。
そんな優しいミリアンが、リオネルは愛おしい。
「了解! 任せろ」
笑顔を向け、後方へ下がって行くミリアンに対して、
リオネルは大きく頷き返事を戻したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ようやく、俺の番っす。頑張るっすよ。リオさん、宜しくっす!」
大いに張り切るカミーユ。
気合がみなぎっている。
姉ミリアンの戦いぶりに大いに刺激を受けているようであった。
「おう、こちらこそ、宜しくな」
遠くに『気配』は感じるが……
まだ敵は、こちらの『警戒区域』へ入ってはいない。
今のうちに、ミリアンがアドバイスしてくれた事を実行しておこう。
「カミーユ」
「はいっす! 何でしょう、リオさん!」
「自分で、課題を持って戦っているな?」
「当然っす!」
「その課題クリアのフォローを俺がしよう」
「本当っすか?」
「ああ、お前の課題クリアに役立つなら、だけどな」
「大丈夫っす! リオさんを信じているっす!」
「よし! では、先ほどのミリアンと同じ状況で戦って貰うぞ」
「本当っすか? じゃあ! リオさんが威圧のスキルを使い、奴らに対しマウント取って、思い切りフルボッコ出来るっすね!」
やはり……カミーユは深く考えていない。
いや、考えていたとしても……
念押しして、改めて確認しておいた方が良い。
「ああ、フルボッコ出来る。お前は魔法を使えないから、魔法杖を最大限活用しろ」
「了解っす! 魔力残量に注意して、使うっすよ」
「OK! それと……」
「それと?」
「試してみるんだ」
「試す?」
「ああ、試すんだ! カミーユ、お前が奴らに近付いて、びびらないか? それと、お前の攻撃が奴らにどれくらいダメージを与えるかをな」
「な、成る程! お、俺! や、やってみるっす! 持てる力、技を全て使うっす! 姉さんに絶対に負けたくないっす!」
……ミリアンのように飛びぬけて勘が鋭くはない。
思慮深さに欠け、むこうみずな所もある。
大事な話も、聞き流してしまう時も多々あった。
しかし、カミーユの長所は『素直な性格』と、負けず嫌いな『勝負根性』
そして全力でひたむきになれるという『真摯』さだ。
更に、常人とは違う『視点の持ち方』も貴重だと、リオネルは思っている。
カミーユの資質は、彼が希望するシーフの適性にぴったりではないかもしれない。
しかし、短所を最低限指摘しながら、長所を大きく伸ばしてやれば良いと、
リオネルは思うのだ。
そうこうしているうちに、『敵』――オークの群れが接近して来た。
こちらとの距離が約500m……400m……300m……
ここでカミーユが気付いた。
「わお! リオさん! 敵っす! ええっと、でっかい気配があるから、上位種が混ざっているっす! 数は……全部で約20っす!」
敵を捕捉し、報告したカミーユ。
まだまだ拙いが、先ほどより早く察知し、精度も増している。
ここは褒める一手だ。
「良くやった! その調子だ! 偉いぞ、カミーユ! さあ! 戦闘準備だ。さっきのミリアンと同じ作戦で行くぞ!」
「はいっす!!」
元気よく返事をするカミーユの瞳はキラキラ輝き、
全身から放つ波動は『やる気』に満ちあふれていたのである。
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