第200話「兄に負けじとばかり」

※第200話到達です!

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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


オークの群れが来る!


戦闘準備スタンバイしたミリアンが、リオネルへ話しかけて来る。


「ねえ、リオさん」


「ん?」


「予備をたくさん……買った、って言っていたよね?」


「え? 予備?」


リオネルはそう言われて、首を傾げた。

一瞬、何の事か分からなかった。

『予備』を購入したモノはいろいろあるからだ。


ミリアンは更に言う。


「うん! 後で構わないから……私も、リオさんが使っている『小型盾』を……使いたいの。カミーユと同じく、シールドバッシュで戦ってみたい」


このコメントで、リオネルは理解した。


「ああ、構わないよ」


……確かに予備の小型盾は多めに買った。

同じく多めに買った予備の魔法杖とともに、収納の腕輪にしまってある。


だが、ミリアンの目の前で取り出すわけにはいかない。

ゴーチェの目も、あるからだ。


先ほどの戦いで、リオネルは確信している。

小型盾が無しでも……シールドバッシュが無しでも、充分に戦えると。


今のリオネルなら、オークどもと戦う手段はいくらでもあるからだ。


あっさりと了解したリオネルは、

ガントレットより少し上部に装着した小型盾を外した。


「新品が良いなら、後で取り換えよう。とりあえずこれを渡すよ」


と、ミリアンへ渡そうとする。


「え、今、くれるの? リオさんは盾ナシで大丈夫?」


「ああ、問題ナッシングだ。俺は他の戦法でいくらでも戦える。練習してからとか、今は邪魔なら後で渡すけど」


「ううん! 今、これを貰う。新品じゃない方が良い! リオさんの使っていた盾で、リオさんと別れてからも、一緒に戦いたいの! カミーユと同じように!」


「分かった! でも、ミリアンはシールドバッシュが未経験だろ?」


「ううん! 大丈夫! リオさんとカミーユのシールドバッシュをいっつも見ていたし、たまにカミーユから盾を借りて練習していたから!」


「そうか! じゃあ、この戦いは盾を実戦で使う良い機会だ……む、そろそろ、奴らが来るぞ」


「よし! 盾を左腕につけてと! はい、これで戦闘準備OKよ!」


そんなリオネルとミリアンのやりとりを見て、


「うっわ! 姉さん、ずるいっす! 俺の真似っす!」


と、背後に控えたカミーユは、苦笑して叫んでいたのである。 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……やがて、通路の奥にオークどもが現れた。


リオネルが魔力感知――索敵で捕捉した通り、

内訳は上位種のオークオフィサー、オークソルジャーが各1体、

ノーマルタイプオークが10体。

先ほどリオネルが戦ったオークカーネルの群れよりも小群である。


リオネルは打ち合せ通りに動いた。


否、正確には打合せ通りではない。


リオネルは万能スキル『威圧』レベル補正プラス25威圧のスキルを発動させ、

わずかの時間差で、特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40を放ったからだ。


スキルの発動に魔力は不要。

そしてリオネルはふたつのスキルをほぼ時間差なしで発動可能。


全てのオークどもはあっという間に動けなくなり、崩れ落ちて行く……


「今だ! ミリアン! 冷気の魔法を放てっ! 自分だけで奴らを戦闘不能にするくらいの気持ちで、思い切り放つんだっ!」


「リオさん! 了解! ……ビナー、ゲブラー、大気よ、凍れ! 我に仇為あだなす者を、全て凍りつかせよっ!」


びしびしびしびししっ!!!


ミリアンの魔法が発動した。

リオネルのスキルにより、倒れ伏し、折り重なるオークどもが……

大気と共に凍って行く……


オークどもの放つ波動――活動の波動も低下して行く。


「よし! 俺がノーマルタイプを倒す。ミリアンはオークオフィサーとオークソルジャーの上位種を倒してみろ。俺のスキルとお前の魔法で動けないから、一方的にダメージを与えられるはずだ」


「了解!」


「俺が突撃して、戦い、問題がなければ、合図として、右手を挙げる。そうしたら、ミリアンも続いてくれ。もしも魔法を撃つ場合は、発動前にひと声かけてくれ」


「了解!」


「よし、行くぞ!」


だん!

と迷宮の床を蹴った、リオネル。


弾むような走法で、あっという間に、

倒れ伏し、折り重なるオークどもに近付いた。


ここで、またリオネル自身も課題への挑戦を。


倒れ伏すオークどもを蹴り飛ばして息の根を止める。

……蹴りの威力の再確認。


また至近距離から攻撃魔法『風弾』を飛ばし、とどめを刺す。

『風弾』の威力のこれまた再確認。

そして至近距離からの魔法攻撃の熟練度アップ。


数分で、ノーマルタイプオークは全て倒されてしまった。


残ったのは、戦闘不能となったままの、オークオフィサーとオークソルジャー各1体のみだ。


念の為にリオネルは、オークオフィサーとオークソルジャーへ、

『威圧』と『フリーズハイ』を放っておく。


さすが石橋を叩いても渡らないリオネル。


『可愛い妹』ミリアンの安全の為なら、尚更である。


ここまでして、リオネルは右手を挙げる。


待機するミリアンに対し、「突撃OK」の合図だ。


「は~い! リオさあん! ミリアン、いっきま~っす! 相手がノックダウンされているんで、残念ながら、シールドバッシュはなしぃ! 破邪聖煌拳はじゃせいこうけんの連発蹴りみっ! 魔法は使いませ~ん!!」


気合を入れ、大声を発したミリアン。


猛ダッシュで、倒れ伏したままのオークオフィサーとオークソルジャーへ、接近!


どかっ! ばぎっ! がんっ! どごっ!


と、フルボッコの嵐が炸裂さくれつ


宣言通り、『連発の蹴り』のみで足蹴あしげにし、肉打つ音を重く響かせた。


結果、ミリアンは、リオネルに……兄に負けじとばかり、

上位種2体へ、あっという間に、とどめを刺していたのである。

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