第138話「有言実行すべく、一緒に頑張ろうぜ!」
リオネルは、約15分ほどで、宙に浮かんでいた数多のウィルオウィスプを撃墜、
まずは自分の仕事を終わらせる。
そしてモーリスが
破邪の
更に現世への怨念を断ち、『浄化』して行くのをしっかり観察しながら……
自分も同じように魔力波飛ばしで、亡霊どもを浄化していった。
おごり高ぶるのも、自信過剰もまずい。
だけどリオネルは、習得中の破邪聖煌拳が、どんどん上達しているのが分かる。
やがて、ふたりは亡霊どもの浄化を終了。
目の前から、邪な気配は消え失せた。
しかしモーリスはまだ警戒を解かない。
身構えながら、辺りを鋭く
当然リオネルも魔力索敵と肉眼での視認は欠かさない。
「お疲れ様、よくやったぞ、リオ君。これでゾンビ、ウィルオウィスプ、亡霊を倒したな」
「お疲れ様です。はい、今後の
「うむ! しかしだ、私には分かる、まだ
「え? 新手? 気配が分かるのですか?」
……リオネルは驚いた。
索敵には何の反応もない。
視認もそう、改めて見回しても敵は見えない。
しかし、モーリスはきっぱりと言い放つ。
「ああ、私は長年の経験で分かるよ。創世神教会の
「…………」
見守るリオネルの前で、モーリスは墓地全体を「ぐるり」と見渡した。
「間違いない! この王立墓地へ葬られた白骨化した遺体が数多動き出している。成る程、そうか。……スケルトンが現れるぞ」
「え? スケルトン?」
補足しよう。
スケルトンは、簡単に言えば『動く骸骨』である。
骸骨が魔法や、亡霊など邪なる存在の憑依により疑似的な生命を得た不死者だ。
出現するのは、戦場、墓地、処刑場など、死者が多数眠る場所だ。
スケルトンは
個々の戦闘能力はけして高くはない。
魔法もほぼ使っては来ない。
但し、集団で、武器を持つ個体が混在する場合、侮ると危険である。
スケルトンを倒すには物理攻撃で粉々に破壊するか、高温の炎で燃やすか、
破邪葬送の魔法で邪気を遮断し、浄化するしかない。
話を戻そう。
モーリスは、現れるのがスケルトンだと確信したようだ。
「ああ、間違いなく現れるのはスケルトンだよ」
「ですか!」
「うむ! そうだ! ここは私へ任せろ」
「と、言いますと?」
「ああ、管理小屋は破邪の魔法がかかっているから大丈夫だとは思うが、リオ君は、ミリアンとカミーユの様子を見て来てくれ。もし出撃可能だったら、ふたりをここへ連れて来てくれないか」
「了解! すぐ戻ります。もしもやばかったらモーリスさんも退いてください」
「おう! 分かった! 無理はしない」
「じゃあ、一旦離脱します!」
「頼むぞ、リオ君」
モーリスの声が終わらないうちに、リオネルは駆け出していたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こういう時は動物の能力が役に立つ。
『馬』の能力が全開!
リオネルはあっという間に、管理小屋へ戻った。
管理小屋から、ミリアンとカミーユが身を乗り出していた。
ふたりは、開け放たれた扉から、リオネルとモーリスの戦いをずっと見守っていたらしい。
「リオさん! お、お疲れ様ですっ!」
「おっつっす! リオさん! 師匠は戻らないっすか?」
「うん、新手が来ると言って、現場にスタンバイしているよ」
「新手?」
「まだ、
「ああ、スケルトンが現れると言われたよ。お前達が出撃可能なら連れて来るように指示された。……どうだ、行けそうか?」
「え? スケルトン? 骸骨の
「う~、少し怖いっすけど、ゾンビや亡霊みたいに、おぞましくも気持ち悪くもないっす。ちょっとだけなら、人体標本だと割り切って、触るのも我慢出来るっすよ」
「もう! カミーユ! あんたはどこかの箱入りお嬢様? 私の事、しっかり守ってくれるんでしょ? さっき言ったのは嘘なの? 誓ったのなら、ちゃんと有言実行しなさいよ!」
姉の手厳しい詰問を聞き、カミーユは仰天した。
「ええええ~っ!? ゆ、ゆ、有言実行って!? ま、まさか! 俺、何か言ったっすか? リオさん、頼むから教えてくださいっす!」
カミーユは墓地中に響き渡るほど、思い切り叫んだ事を憶えていない。
やはり、精神的に追い詰められ、無意識に出た叫びなのだろう。
「え、ええっと……」
「リオさん! 言ってくださいっす! お願いしまっす!」
「分かった。そこまで言うのなら、教えよう」
「お、恩に着るっす!」
「……ミリアンの言う通りだ。さっきモーリスさんにぶん投げられて、カミーユは、ゾンビどもの目の前で、大声で叫んでいたぞ」
「ゾ、ゾンビどもの目の前でぇ!? お、俺が!? お、大声で、さ、さ、叫んでいたっすかあ!?」
「ああ、多分、無意識で叫んでいたんだ」
「な、何をっすか、ま、まさか!」
「ああ、そのまさかだ。……ちっきしょ! こんな所で死なないぞ! やってやるっす! 俺は戦うっす! 姉さんを守り抜くって決めたっすう! 原文まま……って感じな」
「くわわあ!? し、しまったあ! カミングアウトしちまったっすううう!!」
『生涯の誓い』が守ろうとする当人ミリアンにばれ、カミーユは言葉にならない叫びをあげ、顔を真っ赤にしてうつむき、頭を抱えてしまった。
ここは、リオネルがフォローするしかない。
頭を抱え、うつむいたカミーユへ、リオネルは声をかける。
「カミーユ」
「……はいっす」
か細い声で返事を戻すカミーユへ、リオネルはきっぱりと言い放つ。
「恥ずかしがるな、カミーユ。俺も宣言しよう。守るぞ、ミリアンを!」
喜んだのは、ミリアンである。
「わお! リオさん、嬉しい!」
姉の反応に驚き、思わず顔を上げるカミーユ。
「え? えええ?」
「カミーユ、お前達と一緒にいる間は、俺もお前とともにミリアンを守る! だから有言実行すべく、一緒に頑張ろうぜ!」
「うお!?」
自分にエールを送るリオネルを、カミーユはびっくりして、じっと見つめていたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます