第71話「格上の念話」
『オークカーネル! 俺には分かるんだ! 手ごたえがある! お前と念話で話したおかげで、高位レベルの念話を使えるようになった。あつ~く礼を言っとくぜ!』
暗闇の中……
オークカーネルと対峙したリオネルは、面白そうに、ニヤリと笑った。
……リオネルの心を読み、自分と同じ能力を得たと知って、
オークカーネルはひどく戸惑い動揺する。
その動揺を何とか隠そうとして、リオネルを脅す。
しかし噛むわ、声がかすれるわ、動揺は隠しようがない。
『バ、バ、バカメ! タ、タカガ、ネンワヲコウシカノウニ、ナッタカラトイッテ、ナ、ナンニナルゥ! ド、ドノミチ! オマエハシヌノダア!!』
しかし!
リオネルは平然としていた。
『ははは、でかい
脅されても全く臆さず、動じないリオネルを見て、オークカーネルはいらだつ。
『クオオオッ!!』
『たかが念話じゃないだろ? それに念話を行使可能になったから、何になるって?
……おいおい! 寝言は寝てから言えよ! そんな事、お前が一番良く知ってるじゃないか』
『ナ、ナニィ!?』
驚くオークカーネルに対し、リオネルは余裕で笑う。
どうやら習得した『念話』の真の力を実感して来ているようだ。
『……ははは、成る程なあ! 念話に付随した読心の能力とは……こういう事か!』
リオネルは「ほう」と言うように驚きながら言う。
手に入れた読心の能力が、はっきりと確信出来たようである。
『オークカーネル! 動揺するお前の気持ちが見える! そして! 俺をどう殺そうかとするお前の意思が! 心の全てが! 手に取るように分かるぞ!!』
『!!!???』
戸惑うオークカーネルへ、リオネルは言い放つ。
『オークカーネル! お前は同胞にはない魔法の能力……と、いっても念話だけだが、その読心能力を利用し、のし上がって来た』
『フムウウ!?』
『そしてノーマルオークから進化し、今やオークカーネルまでとなった……だから更に欲が出た! もっと魔力を得て進化する為、人間を殺すと俺を脅し、おびき寄せ、喰らおうとしたんだ』
これまでの自らの行い、そして思惑を指摘された!!
リオネルが読心能力を行使しているのは、間違いなかった。
これまでの履歴を、思惑を指摘され、オークカーネルは動揺し、
『クオオオッ!!??』
更にリオネルは言い放つ。
『念話の読心能力を使い、相手が隠している弱点を露呈させ、攻撃する。そして相手の意思を読み取り、行動を先読みして、攻撃を回避する』
言い切って、大きく頷くリオネル。
不敵に笑う。
『ふっ、成る程! 読心――心を見通すサトリの能力か……コイツは便利だなあ! お前が仲間に対し優位に立てた理由……認識させて貰ったぜ!』
『キ、キサマ!!』
『凄く良い勉強になった。そして折角だから俺も使わせて貰う……お前を実験台にして、サトリの能力をなあ!』
『ナ、ナニィィ!?』
『それと、もうひとつ! お前が使うのは単なる念話だ!』
『タンナル、ネンワダト!!??』
『ああ、そうだ! 対して、俺が習得したのはハイレベルの念話さ!』
『ハイ!? レベル!!??』
『おうよ! ハイレベルが分からないのか? 格上の念話って事だ!』
『カクウエノ、ネンワダトォ!?』
『ああ、そうだ。一応試してみるが、心を読まれないよう、お前の干渉を
『クオオオッ!!』
『つまり! 俺はもう心を読まれない! お前は俺に対し、二度とサトリの能力を使えない! ……じゃあな!』
リオネルが一方的に告げると、特異スキル『念話ハイレベル』が発動!
『オークカーネル』が使う読心、サトリの能力の干渉が遮断された。
今まで手に取るように読んでいた、リオネルの心が読めなくなる……
ぐおおおおおおおおおおお!!!!
ぐおおおおおおおおおおお!!!!
大きなショックを受け、焦り、吠えまくるオークカーネルだが……
何とか余裕を見せようと、大きく咆哮して威嚇し、優位に立とうとする。
『バ、バカメェェ! オ、オレノ、ココロヲヨンデモ、ヒヨワナオマエハ、カテヌ! オマエニマサル、パワーデ! アットウシテヤルゥ!!』
『はは! 力で俺に圧倒? そう来ると思ったぜ! 見え見えなんだよ、脳キン野郎!』
『ウ、ウルサイ!! ダマレェェ!!』
激高したオークカーネルは逞しい腕を振り上げ、手近な岩石を掴み取り、
どんどん投げつけて来る。
『何だ、どこ狙ってる? そんなへなちょこ岩、当たりゃしないぜ!』
『クオオオッ!!』
しかしリオネルは、オークカーネルの心から『意思』を読み取り……
びゅんびゅん、放って来る岩石を巧みに、そして余裕で避けた。
岩石を避けながら……
先ほどから観察していた洞窟の地形を改めて確認し、心の中へ刻み込んでおく。
オークカーネルとの距離感も含めて。
だが、オークカーネルに岩石を好き放題に投げさせては……
もしも当たり所が悪いと、洞窟の崩壊につながってしまい、危険だ。
さあ! そろそろ遊びは終わりだ!
『オークカーネル! お前には他のオークと同じく! 怖れるいくつかの弱点がある! 心を読んだ俺には、はっきりと分かったぜ!』
リオネルは「ニッ!」と笑い、更に言う。
『うん! お前が怖がる事もろもろって、ギルドの図書館で読んだ通りだぜ! 大いに怖がらせてやる! ……でも俺の心が読めなければ、どんな攻撃を仕掛けて来るのか、お前には分かるまい!』
ごあおおおおおおおおっっっ!!!
投げた岩石が全く当たらず……リオネルの心も読めず……
焦れに焦れて、のどの奥が見えるくらい、大きく咆哮したオークカーネル。
リオネルに向かって襲い掛かろうとする。
その時。
洞窟最奥、オークカーネルが立つ位置からからやや上空……
リオネルが照明魔法で呼び出し……
探索用として、淡い光を放って浮かんでいた『魔導光球』が、
ぱああああああっっ!!
と、いきなり「まばゆく」輝いたのである。
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