第23話「俺、学ぶ事が大好きなんだ!」
冒険者ギルド金髪碧眼の美人職員ナタリーの懸念は当たった。
しばらくの間、リオネルは超多忙……
常人なら絶対こなすのが無理と言われる、ウルトラ超ハードスケジュールとなったのだ。
その日、リオネルは午前10時から12時まで冒険者ギルドにおいて剣技の基礎講座を受けた。
ギルドが契約した指導教官は『剣聖』と称される達人であった。
剣聖はリオネルの剣を見て、我流だが素質はある、非凡だと言ってくれた。
そして構え、振り、突き、受け、切り返し、体捌き、足捌き等、攻防の基本をレクチャーを受ける。
教官の剣聖は自ら実演をしてくれた。
剣聖の実演に対し、チートスキル『見よう見まね』はわずか10%の習得しか示してくれなかった。
だが、我流で剣を振るっていたリオネルには十分。
指導を念入りに受け、基礎をより深く習得。
また模擬戦闘で直に剣を受ける事で、熟練度を大幅に上げる事が出来た。
その後、いつものようにお昼は食べず、そのままゴブリンの狩場へ。
ギフトスキル『ゴブリンハンター』の称号を得たリオネルはゴブリンどもの攻撃を全く受け付けず、無双全開!!
授かった剣技の初歩を駆使し、約100体を速攻で討伐。
ゴブリン限定ではあるが、特異スキル『フリーズハイ』を使わずとも、睨むだけで威圧し動けなくする事が可能となった。
ちなみに、ゴブリンどもの本拠地『ゴブリン渓谷』の探索はひとまず延期となった。
ウルトラ超ハードスケジュールの為、あまりにも時間がないからだ。
午後4時にはゴブリンとのバトルを終わらせ王都へ帰還。
宿へ戻り、早い夕食を摂ってからアンセルムの宿屋の手伝いを夜遅くまで行う。
その後、後片付けした後、就寝。
翌朝も朝一番で、アンセルムに同行し、市場へ買い出し。
料理や宿屋稼業以外にも、市場の人々とのやりとり、食材の知識習得等、
様々な経験を積んで行った。
結局、出発までは毎朝、市場へ行く事となった。
次の2日目、午前中は未経験だった打撃武器の基礎について学ぶ。
こん棒に始まり、メイスや戦斧を使った講義と実践である。
剣と同じく、構え、振り、突き、受け、切り返し、体捌き、足捌き等、攻防の基本をレクチャーして貰う。
高名な武闘派司祭が指導教官であり……
指示を聞き、こん棒、メイスで思い切り『標的』が粉砕されるまで「ぶん殴る」リオネルの口が……
何かを言いたげに、音もなく動いていた。
『仮想敵』が家の恥と罵った父なのか、目の前から消えろと蔑んだ兄達なのか、それともガン無視し、落ちこぼれと馬鹿にした同級生達なのか……
誰を想定して、殺意を込め、標的を殴っていたかは定かではない。
3日目は、盾の基礎講座。
リオネルは防御の基礎とともに……
特に得手とするシールドバッシュの上達を望み、指導教官から熱心に手ほどきを受けた。
盾の指導教官は、名の通った盾役のたくましい戦士である。
リオネルの実技を見て、小さな盾を使っての効率的な防御と攻撃のコツを教えてくれた。
4日目は格闘術。
剣を使い、盾で防ぎながらの蹴りのバリエーションは敵に対して、隙を与えず変幻自在な攻撃といえるもの。
また剣も盾も無い状況で素手の時に使う拳法も、初歩の型を教えて貰う。
チートスキル『見よう見まね』により動物の能力を習得したリオネルの素早い動きは指導教官を、大いに感嘆させるものであった。
打撃武器、盾、格闘術に関しても剣同様、チートスキル『見よう見まね』はわずか10%の習得しか示してくれなかった。
でもリオネルには十分。
全ての基礎をより深く習得する事が出来た。
こうして、リオネルの一日は、朝夕がアンセルムを手伝う宿屋の仕事。
午前中はギルドで講座受講。
午後は『狩場』でゴブリン討伐と……
己へ課した超ハードスケジュールを逆に楽しみながら……
完璧に消化していったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルが学んだのは『基礎編』に終わらなかった。
学び実践する事がとても面白くて……
時間が許す限り、剣技、打撃武器、盾、格闘技の『応用編』の講座も受け続けた。
更に冒険者には必須の回復講座は、特に必死に頑張った。
薬草の一般知識を得た上で、回復魔法にも挑む。
しかし残念ながら、最も初歩の回復魔法『治癒』しか習得は出来なかった。
回復魔法『治癒』は、全生命力の1割分しか回復しないのだ。
もしも致命傷を受け続けたら、発動する事が出来ても回復がおっつかず、すぐ死に至る。
しかし自前で回復可能というのは、冒険者にとって最低限の担保のようなもの。
これもチートスキル『エヴォリューシオ』の効果かもしれない。
学生時代、どうしても回復魔法を習得出来なかったリオネルは、ホッとし、更に前向きに学んだのである。
今後の事を考え、お約束で現れる
破邪と葬送魔法の基礎、応用の講座も受けた。
こちらも初歩レベルにとどまったが、知識も含め、大いに勉強となり嬉しかった。
そして魔法学校で散々失敗した召喚魔法にも再挑戦した。
リオネルは使い魔を召喚出来ず、課題をクリアする事が出きていない。
結局、今回もまた失敗、召喚対象を呼ぶ事は出来なかった……
だが、いつか成功して、使い魔以上の忠実な『従士』も欲しいと願う。
迷宮都市フォルミーカへ赴く想定もし、迷宮探索術の基礎応用も学んだ。
猫の能力を得て、夜目が効くようになったリオネルだが、闇を照らす照明魔法は、
魔物の巣穴探索等、いろいろな状況下で役に立ちそうだ。
ここでひとつ。
受けたどの講座においても、リオネルは己の能力の全てを出さないよう気を付けている……
下手に目立って、父や兄達から妨害工作をされたら、まずいと考えていたからだ。
この頃になって、冒険者ギルド各講座指導教官の間では……
『未完の大器』リオネル・ロートレックの存在が「気にされる」ようになっていた。
数多の講座に出て、学んで実践し、リオネルは改めて思う。
王都の魔法学校において成績は下の下。
同級生に散々馬鹿にされた超劣等生ではあったが……
自分は、学び習得する事が大好きなのだと。
なんやかんやとあって……
名門魔法使い家ディドロ家の3男超劣等生リオネルが修行の旅へ出て……
否!
実際は勘当&追放されてから、20日間が過ぎようとしていた。
気が弱く、自信もなく……
いつも、おどおどしていた魔法学校を卒業したての『ひょっこ』リオネルは……
まもなくランクDになろうかという、たくましき一人前の冒険者へ向け……
一歩一歩力強く、確実に前へ向かって進んでいたのである。
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