第2話「残念!! 完全に大ハズレ!!」
魔法水晶を覗き込み、驚く司祭の様子を見て……
リオネルは期待する。
「凄い!」と驚く司祭の様子だと……いけるかもしれない。
甘い考えだと思いながらも、つい期待してしまうのだ。
最底辺に沈んでいた『どつぼ』の人生が巻き返せるかもしれないと。
だから思わず、声が上ずる。
「し、し、司祭様あ! その驚きようって!! も、も、もしやあ!! す、す、すげえスキルですかあ!?」
「おお、確かに凄いよ、リオネル君が授かったのは、レアな『フリーズ』のスキルだからな」
「レレレ、レアぁ!? フ、フ、フリーズぅ?」
リオネルは勢い込んで、聞くが……
引き続き魔法水晶を覗き込む司祭は、何故か眉間にしわを寄せる。
「むうう、能力は、っと……おいおい何だこりゃ?」
「は!? おいおい何だこりゃって……ど、ど、どういう事ですかあ!?」
リオネルはすご~く、嫌な予感がした。
そして、運と間がめちゃくちゃ悪く、こういうヤバイ引きはすごく強いリオネル。
司祭は、きっぱりと言い放つ。
「ははははは、どうもこうもない! 残念だが、リオネル君。ぬか喜びだ。こりゃ完全に大ハズレ! いや! くそハズレ! だなっ」
完全に大ハズレ! いや! くそハズレ!
がががががが~~~んんん!!!!
思い切り持ち上げられて、大いに期待したが……
すぐに思い切りガクンと、落とされた。
リオネルの淡い希望は……人生への夢と希望は無残に打ち砕かれた。
スキル授与の司祭は無情にも、「大ハズレ」「くそハズレだ」と絶望の判決を告げたのだ。
戸惑い、動揺するリオネルは必死に声をからす。
「えええええ!? し、し、司祭様ああ! く、くそハズレって!! そ、そもそもフリーズって!? 何ですか? こ、『凍らせる』とかですかあ!? お、お、俺は風属性の魔法使いなんですよぉぉ!!!」
魔法水晶から目を離した司祭の興奮は……完全に冷めていた。
リオネルの悪い予感はますます高まって行く。
「いやいや、違う違うぞ、リオネル君。フリーズのスキルとはな、君の言う、対象を凍らせる、つまり水属性魔法の氷結とかじゃない」
「え? 氷結じゃない?」
「うむ! 君が授かったフリーズとはな、単体、それも自分より格下の相手だけに対し、身体活動を一時停止させるものさ。簡単に言うと金縛りだな」
「え? 金縛り? そ、それって?」
「つまり敵の動きを一時止めるだけだ。それも君のフリーズは完全にクソ! 有効時間はたった3秒間だけだぞ」
「は!? 単体の相手に対し、金縛りで動きを止める? た、たった!? さ、さ、3秒間!? うええ、もっと詳しく教えて貰えますかあ」
全くわけが分からない。
大混乱するリオネルは、司祭に対し、必死に食い下がった。
対して、司祭はさも馬鹿にしたように高らかに笑う。
「がっははははははははは! 良いだろう、教えよう! つまりだ。リオネル君は現在レベル5だろ?」
「は、はい、そうです」
「だからレベルを相当アップしないとこのスキルは使えない! クソだ!」
「さっきから、何度も、何度も、ク、クソって……聖職者がそう言います?」
リオネルは抗議するが、司祭は敢然と言い放つ。
「ははははは! くそは、所詮どう言い換えてもくそさ! 現状でリオネル君のフリーズは、君より弱いレベル4以下と認定される相手にしか通用しないんだ」
「レベル4以下にしか通用しないって……じゃ、じゃあ! お、俺のスキルが通用する魔物って、もしやスライムとかっすかあ?」
「ああ、魔物で言えば最弱な超雑魚敵スライムのノーマルタイプくらいだ」
「うおい! やっぱりぃ!?」
「ちなみに、ゴブリンはレベル8だから、現状では絶対に通用せん!」
がががががが~~~んんん!!!!
リオネルはまたまた大きなダメージを受ける。
「うぐぎぎぎ、スライムと同じ雑魚敵のゴブリンにも、俺のスキルが通用しないなんて、す、すげ~ショックっすぅ!!」
「ああ、君のフリーズが通用する人間もレベル4以下、そんな相手は一般人のかよわい女子供だろ? それに王国の刑法で、プロの魔法使いが素人相手にそんなん使ったら、衛兵に逮捕されて、牢屋へ一直線だ」
「そ、そ、そうっすね……」
「それにフリーズはな、レアなスキルだが、普通は1分間くらいが有効時間なんだよ」
「ふ、普通は1分?」
「おう、ちなみに最高レベルのフリーズはレベル無視で複数の相手に対し、1時間以上、動きを止めると古文書にはある!」
「ええっと、最高レベルのフリーズはレベル無視で複数の相手に対し1時間以上! だったら、結構なスキルですよね?」
「ああ、そうだな」
「で、でも司祭様。俺が授かったフリーズのスキルは、単体且つ最弱スライム相手に、たった3秒しか効かないっすか!!」
「ははははははは! ああ、そうだ! スライムみたいな超雑魚や素人相手にたった3秒なんて本当に笑えるな!」
「いや、笑えるなとか、……そ、そんなあ……」
「そんなあ……と言われても仕方がないだろ! リオネル君が授かったのは、誰でも大笑いするくそな! 屑のスキルなんだよ! あ~はははははは!」
「う、ぐぐぐぐ……ううう……」
くそな! 屑のスキルと思い切り馬鹿にし、大笑いする司祭に対し、
リオネルは、何も言えず口ごもってしまったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます