第16話「新たな敵へ挑もう!①」
翌日……
リオネルはまたも草原へ赴いた。
しかし昨日とは状況が変わっていた。
探索すると、スライムが数多出現したのである。
「ふ~ん。これがリスポーン現象って奴か……成る程なあ」
このような事象が起こる事をリオネルは冒険者ギルドにおいて、美人女子職員のナタリーから教えて貰った。
リスポーンとは『再発生』、または『復活』という意味である。
ナタリー曰はく、この世界の魔物は繁殖のみで生まれるのでなく、不定期に異次元の裂け目から現れ、増えていくというのだ。
「ははは、だったら、いくら人間が魔物を倒してもきりがないって事か。ま、良いや。俺に世界の
開き直ったリオネルは、著しくビルドアップした身体能力、魔法、そしてスキルを使い、スライムを倒しまくった。
結果、たった1時間強で、何と何と!
自己最高記録スライム603体を倒し、ウサギ115羽をゲットした。
経験値603を獲得する。
討伐依頼も受けているから、1体あたり銅貨1枚、603体で総賞金が金貨6枚と銅貨3枚をゲット出来る。
ウサギはさすがに、この数なので、アンセルムの反応を見て、適当な数を渡す事とする。
残りは自分用の食料として、魔法の収納腕輪へ備蓄しておく。
と、ここで、
チャララララ、パッパー!!!
心の中で、独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、内なる声が告げて来る。
リオネル・ロートレックは、スライムノーマルタイプを1,000体倒しました。
チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、
ギフトスキル『スライムハンター』の称号を得ました。
スライムへの物理及び魔法の攻撃力が50%アップします。
スライムノーマルタイプからの物理攻撃が無効化します。
「おお、ギフトスキル? 何だそれ! やった! 俺、普通のスライムには無敵って事かよ!」
リオネルは張り切って、改めて索敵を行う。
だが、周囲に敵スライムの気配が完全になくなった。
ここでリオネルは考える。
今日すぐにスライムがリスポーンする事はない。
草原に居ても無駄だろう。
かといって雑木林に行っても倒せる魔物が出現するとは限らない。
先述したが、鹿や猪は領主が狩猟権を設定していた。
無許可でむやみに狩ると、厳しく罰せられてしまう。
「よっし! 次の段階へ行こう」
今の状況は想定内である。
リオネルは、もしもスライムが現れなかった場合も含め、考えていた事があった。
「決めた! 戦う相手をランクアップする。ゴブリンと戦い、一気にレベルアップを狙おう」
ゴブリンイコール『雑魚』だと笑うなかれ。
ぼっちの駆け出し冒険者にとって、レベル8相当の強さを有し、数十から100体以上の群れで行動するゴブリンは更に強敵なのである。
またゴブリンは、街道まで出没し、人間を襲い捕食する。
オーク、オーガとともに人間の敵、害獣として……
ソヴァール王国を含め、全世界の国々から討伐依頼が出ていた。
この草原から約10㎞先に、ゴブリンが数多跋扈する険しい渓谷がある。
通称『ゴブリン渓谷』と呼ばれている。
地下深き洞窟が無数にあり、いくつもの巣穴があるという。
たまにゴブリンを捕食しにオークも現れる魔物の巣窟だと認識されている場所だ。
但し、この場へ単独で挑んで問題ないのはランカーと呼ばれるランクBの上級冒険者、もしくはレベル20以上だといわれている。
たったレベル7のリオネルが単独で挑むのはいかにも無謀であり、リスクが大きすぎる。
命を失いかねない。
ちなみに4名以上でクランを組んだ場合、平均レベル12以上が推奨ともいわれていた。
しかし、リオネルは諦めきれない。
王都を出るまでリミットを1か月と切られていたからだ。
時間は限られている。
1日たりとも無駄には出来ない。
今まで倒したスライムは亜種もあるが、この草原に出現するのはノーマルタイプのみである。
倒しても経験値は1しか貰えない。
対して、ゴブリンは経験値20、オークなら経験値40が獲得出来るのだ。
ある程度倒せば、次のレベル8へアップするのは間違いない。
「考えた策はあるし、勝機もある。ゴブリン渓谷の地図もギルドの図書館で写しておいたしな……それに、ただ戦うだけじゃ駄目なんだ。現状の俺の力がどこまで有用するのか、課題を持って戦うぞ」
リオネルは改めてゴブリンとの戦い方を確かめる。
基本形はスライム戦と変わらない。
進化した特異スキル『フリーズハイ』で相手の動きを止める。
風の魔法でかく乱しながら、先制攻撃して、少しでもダメージを与える。
最後は愛用の剣、スクラマサクスでとどめを刺す。
オプションとして、チートスキル『見よう見真似』で身に着けた格闘術、そして盾の技『シールドバッシュ』を使う。
ともに冒険者ギルドで見ただけの技であるが、無理をしなければ牽制ないし、付け足しくらいにはなる。
リオネルは『シールドバッシュ』を使う為、肩に装着していた小型盾を手甲代わりに左手へ装着し直した。
これまでの対スライム戦は個人戦基本1対1である。
だが……ゴブリンは群れで行動する。
個人戦はほぼありえない。
対集団戦は勝手が全く違うと思う。
「今まで以上に慎重に行こう。囲まれないよう退路はしっかりと確保して、状況を見極める、そして一度に戦うのは5体まで、絶対に無理はしない」
ソロで戦いに挑む今のリオネルを、もしも知人が見たら違和感を覚えるだろう。
そもそもリオネルはとても臆病なのだから。
しかし、リオネルは臆してはいない。
不完全ながら、習得した『狼の能力』が、彼の心に大きな勇気と剛毅さ、そして冷静さを与えていたのである。
こうして、自問自答、己に念を押し……
大きく頷いたリオネルは渓谷へ向け、 ゆっくりと歩き出したのである。
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