第9話「衝撃の出来事3連発!!」

翌朝……

アンセルムから譲って貰った『スーパー魔道具』の礼を改めて言い、宿屋で早めの朝食を摂り、リオネルは出発した。

当然ながら左腕には収納の腕輪、右手の人差し指には回復の指輪が装着されていた。


現在の時間は昨日と同じで午前7時過ぎ……目的地も同じ、スライムを狩った草原だ。

今日も薬草を採取し、スキルと魔法を使い夕方までスライムを狩るとリオネルは決めていた。

そしてレベル7を目指す。


朝早いのに、相変わらず王都正門を出入りする者は多い。


正門を出たリオネルはご機嫌である。

一歩一歩間違いなく前へ進んでいる実感があるからだ。


リオネルの左腕に装着されている腕輪には昨日採取した薬草が入っている。

何日かに亘って採取し、まとめてギルドへ納品するつもりだ。


そして右手の人差し指に装着した回復の指輪の効果も素晴らしかった。

歩く度に体力が回復するせいか、全く疲れない。


また身体がとても軽くなり、切れも増している。

どうやら回復や経験値微増の効果のみでなく、視力、聴力、嗅覚等々、五感も鋭くなっているようだ。


「晩飯で出して貰ったウサギ、美味かったなあ。よし、アンセルムさんも喜んでくれたし、今日もウサギを狩って帰ろう」


王国の法律でウサギや鳥は狩猟権が不要だと冒険者ギルドの講習で習った。

また鹿、イノシシ、熊、狼などの獣は狩猟権が必要で、狩猟数にも制限がある。

但し、一体や二体を狩る場合や命が危険にさらされた場合、その限りではない。


街道を歩くリオネルはずっと索敵を継続、警戒を怠らない。

気のせいか、感知能力が更に鋭くなったような気もする。


そうこうしているうちに『草原』に到着した。


「まずは薬草、毒消し草の採取だ」


昨日行ったから、作業は円滑だ。

身体能力が向上したリオネルは、あっという間にいっぱいの薬草、毒消し草を集めた。

ざっと昨日の倍以上である。


「よっし、後はスライムとのバトルだ。試してみたい事もあるし……」


速攻で薬草の採取を終わらせ、収納の腕輪へ放り込んだリオネルは、草原の探索を開始したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「何だよ、あの司祭様、えらくいい加減だなあ……俺の授かったスキルを、思い切り馬鹿にしてたのに……アンセルムさんのいう事聞いて良かったよ」


リオネルがぼやくのも無理はない。


クソまじめで馬鹿正直……否!

とっても素直なリオネルは、昨日、司祭に言われた通り30分の間隔を取り、スキル『フリーズ』を使っていた。


しかし、3秒スライムの動きを止めた後、30分も待つのはあまりにも使い勝手が悪い。


「トライアルアンドエラー、挑戦をためらうな。失敗を恐れるな。時にはもがくのもありだ」


「は、はい!」


「但し、命を大事にしろ! 最後の最後まで絶対にあきらめるな」


と、アンセルムから冒険者心得をアドバイスされたので……

恐る恐る『ダメもと』で試してみたら……拍子抜けした。


30分のリロードが絶対に必要だと言われたはずである『フリーズの連続行使』が、全然と言って良いほど可能だったからである。


創世神教会の司祭は、リオネルがスキルを授かった時に、

「こりゃ完全に大ハズレ! いや、くそハズレだな」だとか、

「スライムにしか通用しないし、たった3秒じゃ物の役には立たん」とか、

ボロクソに言いたい放題であった。


それゆえ、改めてリオネルはスキル『フリーズ』の様々な能力を検証した。

スライムの討伐を兼ねて。


結果……敵の拘束時間は3秒フラット、有効射程は約100mまで。

だが連続行使は5回までだと判明したのである。


つまり、連続して発動すれば最大約15秒間、敵を戦闘不能に出来るのだ。


ちなみにスキルの再行使、つまりリロードは30分かかるどころか、たった3秒で行けた。

つまり5回連続行使した後、3秒間置けば、再び5回連続行使が可能なのだ。


フリーズのスペックが明らかになると、リオネルは嬉しくなり、拳を握り締めた。


「おいおい、これって! 俺のフリーズはけして『くそスキル』じゃないぞ。他の攻撃と組み合わせれば、結構使えるんじゃないか?」


実のところ……司祭は間違ってなどいなかった。

発した言葉は最低だったが、事実は語っていたのだ。


スキル『フリーズ』は通常、連発など不可能なのである。

リロードも、インターバルが30分はかかる。


何と何と!

リオネルが習得した屑スキルフリーズは、レアな『特異スキル』の『フリーズ』だったのだ。


しかし、スキル『フリーズ』の連射に気を良くしたリオネルは、『特異スキル』だと全く気が付かず、スライム討伐に夢中となる。

もっと距離を取り、ひたすら倒しまくった。


こうなると討伐数は跳ね上がる。

遠方の攻撃も多くなったからリスクも大幅軽減された。

攻撃の際の移動距離は増えたが、指輪により身体能力向上でカバーする。

風弾の魔法も有効に使い……

何と! 昨日の3倍以上、300体余りのスライムを倒したのである。


と、その時。


チャララララ、パッパー!!!


心の中で、独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、内なる声が告げて来る。


リオネル・ロートレックは、レベル7に到達しました。


新たなチートスキル『エヴォリューシオ』を……習得しました。

習得したチートスキル『エヴォリューシオ』により、

特異スキル『フリーズ』が進化、

特異スキル『フリーズハイ』を習得しました。


「え? 新たなチートスキル『エヴォリューシオ』!? え? 俺のフリーズが特異スキルって!? スキルが進化あ!? フリーズハイって何だ!? わけわかんね~~!!」


一度にいくつもの情報を告げられ、大混乱のリオネル。


しかし内なる声は答えず、更に告げる。


新たなチートスキル『見よう見まね』を……習得しました。


「は!? また!? 新たなチートスキル!? み、『見よう見まね』って……何だ?」


リオネルは驚いた。

スキルが進化という事は、つまりレベルアップだ。

それに人間が習得出来るスキルはたったひとつだと、司祭は言っていた。


更に更に!!

習得したのはチートスキルだというではないか!!

それも一度にダブル、ふたつも習得!?


到底信じられない衝撃の出来事。

それも3連続して起こった奇跡に、リオネルは驚愕するしかなかったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る