『黒豹伝説』

さくらぎ(仮名)

『黒豹伝説』

手を

手を握り返して

あなたの温もりを

この手で感じたいのです

私は夢見る鳥

極彩色の羽を

島のあちらこちらに散らして

私の存在したことを証明するのです

誰もが分かるでしょう?

こんなにも目立つ羽ならば

天敵に――そう、今、目の前にいる

墨染めの獣

あの恐ろしい、黒豹

刹那、それは筆をはらうように

私の眼前に飛びかかり

それは、墨汁を散らすように

私の腹を裂き

骨を砕いて

その羽を――――――


   *


 あるところに

 一匹の黒豹についての伝説があった


   かの豹の黒いことは墨染めの羽織の如し

   極彩色の奇怪なる面を被り

   今日も静かに山を下りてくる

   よい子にせぬと黒豹が来て

   その腹裂かれて食われるぞ


   *


 果たしてこれは、

 夢か、現か。

 私は、今、起きたところである。

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『黒豹伝説』 さくらぎ(仮名) @sakuragi_43

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