Cunning&My life~カンニングした俺、気づいたらハーレムだった~
@3623
第零話(プロローグ)
俺のカンニングは、完璧である。
テストの点がいいだけで皆が俺を誉める。が、そんなことで誉めるなんておかしいのだ。俺は勉強なんて一ミリもしていない。
そんなことで評価をつける世界なんて間違っているのだ。
教室の廊下から、どたばたと音が聞こえる。次の瞬間ドアが開き、女の子がひょっこりと顔を見せる。
すると、俺の近くに詰め寄ってきて、
「ねー! みぃー! また満点だったって聞いたけど本当!?
すごいね、この間まで私と同じくらいの点数を取ってたのに、いつの間にこんなに差がついちゃったんだろうね」
と、切実なことを言ってくる。
この子もまた、俺の少ない友達なのだが、カンニングのことは知らない。
さっきの会話に対し、差はカンニングだよ! とつっこみそうになるのをこらえ、
「うーん、むーも頑張ればきっととれるようになると思うよ」
と何とかフォローをいれるが、意味はなかったらしく、彼女は両手を顔の両側に出し、左右に振って見せる。
「それがぜーんぜん
勉強時間増やしてみたり、しっかり復習したりしてはみてるんだけど、それがもうからっきしで。
どんどん成績が上がっていくみーが、うらやましくてしょうがないよぉ」
こいつは、幼馴染の成瀬睦美。
むつみのむをとって、むーとよんでいる。こいつが俺のことをみーと呼ぶのは、俺の名前が、佐藤三好だからである。
さっきから、勉強の悩みばかり話してうなだれているむーに立ち返って顔を合わせる。
「むーだって頑張れば絶対にできるようになるって!」
励ましの言葉を口にはしたものの、こんなもの本人には何の効果もないことはわかっている。
実際、彼女はうなだれた顔を上げることなく、ただ、ありがとう。とだけ言ってどこかに行ってしまった。
次の日登校すると、もうテストの話なんてしている奴はおらず、みんないつも通りの生活に戻っていっているようだ。
「おはよーー! みー! 今日からまた普通の授業にもどっちゃうねぇ。テストは、点は取れないけど早く帰れるから意外と好きなんだけどなぁ」
朝早くから、俺の机にきて話しかけてくる。
いつも通り、そんな奴はむーしかいない。朝からテンション高いのがだるいのと、ただただ眠いのとで適当に答える。
「ん、おはよ。そうだね、俺も早く帰れるからテストは好きだったりするかも」
「だよねーー! みーはやっぱりわかるやつだ!」
そう言って喜んでいるむーは、見ていて可愛い。
俺の場合は、答えを覚えるだけではやく帰れるのだから、うれしいに決まっている。
そう思っていると、むーがぱーっとしたような目でこちらを見ていた。何やら悪い予感がする。
「ねぇーみー! 私いいこと考えた! ただでさえ早く帰れるだけでもうれしいテストでいい点がとれたらもっと嬉しいと思わない?」
「まぁ、そりゃね? でも、それが出来たら皆テスト嫌がらないよね」
「うんうん、そうだよね。だからね、最近頭よくなったみーに勉強教えてもらうのがいいと思うんだよね!」
あーうん。なるほど。
でもな、俺はカンニングを始めただけだから、別に頭よくなったわけじゃないんだよ……。
なんて言えるわけもない。でもこれをOKしてしまったら彼女の質問に答えられなかった時にどうなるかわからない。最悪カンニングが疑われるかもしれない。
そう思って、
「仕方ないなぁ。今回だけだよ?」
と答えた。
(本当はそんなことできっこない、無理、、)
実は、思ったことと違う言葉が出てしまうのは割とあることで、彼女の楽しそうな眼をみて、断るなんてことができなくなってしまうのである。
頭では思いつつも、口に出るのはどうしても彼女が喜ぶことになってしまう。
しかし、ふと彼女の顔を見た時に見えた笑顔を見た瞬間に後悔など吹き飛んで、僕も笑みを返してしまう。
「ありがとう! これでみーに勉強教えてもらったら私もみーみたいに頭よくなれるかなぁ」
などと無邪気に言うむーを見ていると今更断ることなどできなくなってしまう。
「じゃあさ、さっそく明日からでもいい?もういきなりわからないとこだらけで大変なんだよぉ」
「明日!?」
反射的にそう言ってしまった。
一週間後とかなら、少しくらい勉強してから望めるなぁとか考えていたのに、明日!? どうしようもないではないか。
さすがに無理である。明日では何も準備ができていなさすぎる。
「もちろんいいよ!」
(明日は無理だろおおおお)
あああああああああまたやってしまった。もう最悪だ。
どうしようか。授業をまだ一度も受けていないから、勉強もできないし、どうしよう。
むーの家への行き方は覚えているので、すぐにつくことができた。
ぴんぽーん。チャイムを鳴らす。中からむーがでてきて
「いらっしゃい。もう皆来てるよ。遅いじゃんー。早く早く!」
むーは、そういうと素早く俺の来ていた上着を脱がせてハンガーにかけている。
むーの家には何回か来たことがあるので、家の構造はわかっているつもりだ。
たしか、一階にリビングで二階にむーの部屋があったはずだ。というか、皆来てるよってどういうことだ?むーひとりじゃないのか?
まぁいい。
それは置いといて、リビングと部屋どっちで勉強するのか迷っていたら、すぐに分かった。理由は簡単だ。
二階から騒がしい声が聞こえてきたのだ。
またか……嫌な予感がする。みんな来てるよって、なるほどね。
二階のむーの部屋にはいると、むーの友達と思われる女の子たちが三人も来ていた。
頭がこんがらがっていると、むーがお茶をもって上に上がってきた。俺は反射的に体とともに問い詰める。
「おい、これどういうこと!? 生徒ってむーだけじゃないの?」
俺がそういうと、むーは何事もなかったかのようにお茶をテーブルに置いてから
「あれれー、そっか、伝えてなかったっけ。これ私の友達!」
手を大に広げてそう言った。おれは、少し呆れつつ
「いや、それはわかるけど、むーに教えるだけじゃないの?」
というと、むーは泣きそうな顔で
「この子たちも私と同じ境遇にある成績で悩んでる子たちなのよ。え、もしかしてみー、教えないとか言わないよね?
そんなひどいこと言わないよね?」
とせめよってくる。
そんな風に泣きつかれても、人が多ければ多いほど勉強してなのがばれるし、第一まとめて何人も教えるなんて俺には無理だよ……。
申し訳ないけど。と断ろうと思い顔を上げる。
「申し訳ないけど、それは」
「うん!なんか言った?」
会話を遮られた。
「みーさ、かおみて話そ?」
と言われ仕方なく向き合う。
あのね、もう一度言うけど。までいったところで視線に気づく。
むーがわくわくした顔でこっちを見ているのだ。これでは断れるものも断れないではないか。結局、むーの圧に負けて、
「できる限りは頑張るよ……」
と答えてしまった。
折角、いつものを乗り越えて断れると思ったのに……すぐそばでむーがやったー! とはしゃいでいる。
まぁ、言ってしまったものは仕方ないとわりきることにした。
来てからまだむー以外の生徒と一言も会話をしていないので、まず自己紹介をしてもらおうと思い、立ち返る。
「じゃあ、まず皆一人ずつ自己紹介をしてもらおうか。」
とあいさつのつもりで話しかける。普通にはーい! とかえってくる予想だったのだが、違ったようである。
三人のうちの誰かから声が聞こえた。
「えー。だるい。ていうかまず先生から自己紹介するもんじゃないの?」
言われてみてから、気づいた。確かにそうである。
人に自己紹介を求めるのなら、まず自分から紹介するのが筋というものであろう。そう思って生徒たちに真剣に立ち返り、自己紹介を始める。
「確かにそうだな。じゃあ、まずは俺から自己紹介しようか。
佐藤三好というものだ。みーとか、三好とか、好きに呼んでもらってかまわない。それじゃあよろしく。
じゃあ自己紹介したから今度こそお前らの番な」
ここでやっとはーい、というめんどくさそうな返事が返ってきた。
次に立ち上がったのは、黒髪のロングの子だ。
髪はおろしていて、顔のパーツも整っている。俺の目から見ても、美人である。
「大原恵といいます。よろしくお願いします」
次の子は、茶髪のボブで、一言で表現するなら小人、みたいな感じでとてもかわいらしい。
「えー? 自己紹介とかだるいんだけどー。まぁでも最後にやるよりははやく言った方が早いかぁ。神原さよ。よろしく」
うん、さっき俺に文句を言ってきたのはこいつみたいだ。
まぁいい、これで俺のこと嫌いになってくれれば授業にも出なくなるだろうし、俺としてはその方がありがたいのである。
気にせずに次に行くと、次の子は、黒髪の子でいまにも動き出しそうなほど活発に見える子である。
「三好先生よろしくー! 中島こはるでーす! 好きな食べ物はカレー。血液型はB、星座は牡羊座です!」
予想外すぎるほど、元気で活発な子である。
「みんな自己紹介ありがとう。
それで、今回の授業なんだけど、僕は何かを講義する先生ではないから、わからないところがあったら質問しに来てもらうスタイルをとりたいと思う。
問題と解説をもって、俺のところに来てくれ」
こうして、俺の学園生活は始まる……!!
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