食べるだけなのに、なぜか迷うのです。

一色 サラ

店を迷う

 お昼でアルバイトが終わって、じめじめした街を歩いている。お昼をまだ食べていなくて、腹が空いてきた。それに暑くて、どこか店に入りたい。

 スマホを開いて、ネットでお店を探すも、なかなか、決められない。星の数をみて、値段をみて、なぜか、レビューを見てしまう。この時点で、行く気が失せるのに、なぜかやめられない。高評価には、誰かに書かされていると思い、低評価には、“ここはおいしくない。”“店員の態度が悪い。”など、批判がばかりが目について、結局、どこにも決めることはできない。

 スマホを鞄に入れて、近くて食べようと、周りの店を見て回る。お腹も空いているし、暑いのに、どこにも入れない。いつも無難な選択をしてしまうので、今日こそ、町にある飲食店に入ろうと思ってはいる。美味しいなお店はあるが、どうしても入れない。どの店も店内が見えない。どんな雰囲気なのかさえ、分からない。入る勇気がでない。キョロキョロして、歩いて、どこにしようと思いながら、さらに歩いていく。ただ、どの店もスルーするよに、通り過ぎてしまって、止まることができない。そして、10分ほど歩いたところにあるショッピングモールに着いてしまった。無難な選択を、またしてしまう。

 ショッピングモール内に入って、エレベーターに乗った。上昇するエレベーターに、また、やってしまったと後悔の念が湧きたってくる。ただ、食事するだけの店に何をこんなに迷っているのだろう。

 エレベーターが11階について、お店を見て回る。そして、友達と着たことのある自然薯のお店が目に入った。そこに何の躊躇もなく入って行った。1人ですと言って、すぐに席に案内された。腕時計を見ると、14時過ぎだったのもあるのか、店は空いた。窓際に設置されているカウンター席に座る。

 外は、少し曇った梅雨空が広がっている。今の気持ちとそっくりだった。店員さんに牛タンの定食を頼んで、料理を待つ間、ぼーっと、外を眺めてしまっている。

 頭の中で、すぐに自分の行動を反省してしまう。何でもそうだが、迷いを減らして、行動できるようになりたい。町中にある店に、何の迷いなく、入れることができるようになるのは、いつになるのだろう。

 ネット情報の他人の意見など、流されず、自分の目で、足で、舌で確かめることが、できれば、本当はよいのだろうが、損したくない。できれば美味しいものが食べたいという気持ちが、どうしても勝手しまう。

 人間の本能には、まだ勝てそうにない。空が降りそうなどんよりとした空と、川を隔てる橋を渡るジオラマのような車が動いている。いつか、この優柔不断な性格とおさらばしなければ。

「お待たせしました」と、お皿に何枚かの牛タンと真っ白な自然薯とご飯、そしてお味噌汁が乗ったお盆が目の前に置かれた。

 牛タンを頬張ると、やっぱり美味しい。ただいまは、美味しいと思えるものを食べるのが、一番幸せを感じてしまう。

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食べるだけなのに、なぜか迷うのです。 一色 サラ @Saku89make

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