第1話 新しい朝

目覚ましの音が鳴っている。

3月13日、午前8時。


どことなく体が軽い気がするのは、環境の変化ゆえだろうか。


僕こと辻村誠実つじむらまことは昨日、3年間通った市立嶋村中学を卒業した。

正確には月末まで中学生であるとはいえ、何者でもなくなった自分というのは新鮮な心地がする。

昨夜は所属していた陸上部の3送会があったので普段より遅めの起床となったが、決められた時間までに動く必要がないというのもいいものだ。


両親は既に出勤した後か。


朝食を済ませ、適当な服装に着替えたところでタイミングよくチャイムが鳴る。


「泥棒です」

「泥棒さん…!」

「今はこれが精一杯」

「雑すぎだろ。製作者さんに謝れ」


親友、真庭孝介まにわこうすけがやってきた。

ちなみにヤツの主食は深夜アニメである。


「いやぁ、普通にチャイム鳴らしても面白くないし?」

「そこに面白さを見出そうとすんなよ」


孝介がネタに走るのはいつものことなので、適当なツッコミを入れて流しておく。


なぜ親友が朝から自宅に突撃してきたかといえば、今日は僕らの志望校である県立浦浜第一高校の合格発表日だからである。


「でもさ、発表の瞬間に行かなくてよかったわけ?ローカルだけど毎年テレビカメラ来て面白いのに」

「僕が人混み嫌いなの知ってるだろ。それに僕らは合否の心配してるわけでもないし」


我が家から最も近い高校、浦浜第一高校は過去5人の内閣総理大臣を輩出するなど全国的にも有名な、いわゆる進学校と呼ばれる類の学校である。その割に規模は大きくなく、試験は超高倍率となるため合格発表は大変な混雑が予想されるのだ。


「ま、お前は“しらぬい”しか眼中にないか」

「違う意味が含まれていた気はするが、まあ意識してはいるな」


 不知火しらぬい あかり

中学の間に計6回行われる県内学力模試において、万年2位の僕の上に常に居続けたまさに目の上のたんこぶである。


隣の中学にいることはわかっているし、実績から見て確実に同じ学校だろう。6度目の敗北を喫して後、僕は“しらぬい”を下して首席の座を勝ち取るために猛勉強したのだ。


「意識したところで今日成績がわかるわけでもなし、本当のところ見に行かなくてもいいんじゃないかって気がしてる」

「お、誠実余裕じゃん。さてはこれ死亡フラグか?ナンマンダブナンマンダブ…」

「勝手に殺すな、雑な弔い方するな」

「これは手厳しい」


他愛ないやりとりをしながら歩くこと40分、ようやく目的地だ。


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素人の初投稿ですがお付き合いいただけたら幸いです

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