元歌い手の彼女を甘やかしてみた

優斗

第一章 

プロローグ

「光星くん、それ何ですか?」

「これはピーラーだな」

「何に使うのです?」

「玉ねぎとかの皮を剥いたりする時に使うぞ」



俺が夜ご飯を作っている時に話しかけてきた少女の名前は、黒崎有栖くろさきありすという。



ピーラーの名称と使い方すら知らない有栖は、今日も当たり前のように俺の料理姿を眺めていた。




「私にやらせてください!」

「駄目だ。危険すぎる」

「そこを何とか!」

「ちょっとだけだぞ?少しでも危ないと思ったらすぐに辞めさせるからな」



そう言い、ピーラーを渡すと有栖はとても可愛らしい笑みを浮かべる。



そんな有栖は、学校では『氷の姫』というあだ名が付いていた。だが実際は天使だという事を俺だけが知っている。



天使なのは外見だけでなく中身もだ。




「これってこんなに分厚く剥けるんですね」

「剥きすぎだ。いいか?こうやってやるんだ」

「は、はい」



萎縮したような、小さな返事が聞こえる。



「どうした?」

「そのち、近い…です」

「あ、……す、すまん」



こちらが動揺しているのがバレないように俺も小声で謝る。有栖は顔を赤くして、照れた表情でこちらを向いている。その表情がより彼女の可愛さを引き立てる。



「とりあえず、生姜焼き作り頑張りましょう!」

「そうだな」



そんな俺は、有栖の世話係として夕飯を作りに毎日彼女の家に行っている。すでに合鍵も持っているので、いつでも出入りが出来るのだ。


玉ねぎをフライパンに入れて、良い感じになるまで炒めたら、その後に肉を入れる。




「有栖は油が飛んできたら危ないから離れていて」



真っ白で雪のような肌を持つ彼女に油を飛ばすわけにはいかない。




「過保護すぎです」

「有栖、離れていてね?」 

「はい…分かりました」



肉を炒める時は、いつも彼女にはフライパンから離れた所に立っていてもらう。これが安全だし、1番安心できるのだ。



「肉の良い香りがしますね」

「良いのはここからだぞ」



生姜焼きのタレをぶち込む。このタレは手作りだ。



『ジューーーッ』


とキッチン中に音を響かせる。



「これは絶対美味しいですよ!」



手作りの料理を食べてもいないのに評価されるのは、いつになっても嬉しい。




「じゃあ有栖はご飯とか運んでくれるか?」

「お茶と箸もお任せを」



料理は危険だといってあまり練習させていない。なので、いつも雑用的な事ばかりがメインになるのだが、有栖は何でも率先してやってくれる。



「じゃあいただきます」

「いただきます」



出来上がった生姜焼きとその他の適当な盛り合わせは、シンプルで作るのが簡単だ。




「やっぱり美味しいです」

「そうか、作った甲斐があるよ」




大きな瞳を細めながら、ニコッと笑う。



これが二人の、初心うぶで甘い毎日の日常だった。






☆アドバイス等あれば、遠慮なくコメント欄に書いてほしいです。



可愛いと思ったらレビューお願いします!!!



次が1話です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る