第11話 探検章3…【虚像】
目的の場所まで、森の中を歩いている俺は、早く着いてくれと心の中で神に懇願している最中だった…。
……何故かって?
それは、この状況を見てもらえば分かってくれると信じたい……。
俺の片腕を両腕でガッチリとホールドし、首まで延びた髪『ショートボブ』を揺らしながら、小柄で笑顔が可愛い少女『シャルル』がずっと
それだけじゃない…。
歩きながら俺の事を見続け、絶え間なく質問してきて話を聞いてくる。
おまけに前を見ていないから、何回も
俺の腕にしがみ付いているから大丈夫だとはいえ…、毎回、
(うっ、腕が…、モゲル………。)
『歳はいくつなのか。』
『好きな食べ物と嫌いな食べ物は何か。』
『好きな異性はいないのか。』
『髪はショートとロングどちらが
『女性を異性として見れたりするのか。』
『肌色は明るめか暗めどちらが好みか。』
『細身と太身どちらが好みか。』
『将来は何になりたいか。』
答えても、答えても質問が止むことはない……。
それにしても……。
片方のホールドを止めてくれたのは、嬉しかったのだが、手を握ってくるのは想定外だった…。
シャルルの小さい手の感触…。
熱い眼差しを送ってくる彼女の顔をみれば分かる。
(彼女は未来、有望な『ギャル』に育つと……。
絶対に可愛くなる!
賭けてもいい!!
だから、今は、未来のアイドルになる『シャルル』ちゃんの握手会を…、先行体験さしてもらっているんだっ!
………そうゆう事にしよう!
…いやっ、そう考えるべきだっ!!)
服の上からでも分かる細く柔らかい腕…。
少し赤くなった頬に、腕から視線を送ってくる彼女の上目遣い…。
歩きながらも漂ってくる、幼さの残る
彼女の胸元に目が行くと、あと少しで服の
今、
俺は、自然と彼女の抱き付いている腕に、顔が倒れ込む。
すると、彼女と目が合い、
まだ見てはいないのだが、罪悪感と言うものを感じ、それでも少し『ドキドキ』した。
ロリコンではなかった俺に新たな道が、光差そうとしている…。
(駄目だ…。
俺は一応、転生の年を合わせたら40歳になる。
もし、40歳や50歳のおっさんが子供に、『ドキドキ』したら周りの人間はどう思う…。
こいつ、自分の子供でも『性癖』の対象に、性欲が湧いたりするんじゃねえのっ?
なんて、言われたりしても仕方がないし、思われても当然だと思う…。
まさに、ぐうの
いやっ、俺に子供は居ないんだけどもっ。
だから、俺はそう思われないためにも隠し、騙し続ける…。
誰にもバレないように、『相棒』が眠る墓まで一緒に連れていくんだっ!!
『隠せっ!』
己が死ぬ、その日まで…。
『信じろっ!』
自身のプライドと、周りの者を…。
『騙せっ!』
この世界を見ている『神』さえも!!
『証明してやるっ!』
己の誇り、『相棒』にかけて!
『エル・プサイ・コングルゥ』
この言葉に意味はないっ。―――――)
―――――――――――――
「………………」
『ハッ!?』
(一体、俺は何を考えて…。
しかし、シャルルがこんなに抱き付いてくるのに、まったく『ドキドキ』しない…。
前世の俺なら、女という女から避けられていたから、喜ぶはずなんだけどな…。
俺が女になったのにも、原因が有るのかな?
俺は、ロリ少女や、貧乳よりも巨乳の方が大好きだからそれも原因の1つなのだろうか?
もう少し、『シャルル』のパイオツがデカければ話は変わるのだろうか?
…っていうか、前世では女性に話もされず、触れられもしなかった俺が、今では普通に話もできて、触られたりもしている。
もし、俺『レイナ』が大人になったとき、巨乳になってたら皮肉すぎて笑えないよね。
『あははっ♪』)
女性に興味はあるが、子供は範囲外という事にたどり着いてしまった『俺』…。
結論として彼女のスキンシップや質問の多さから、俺は『シャルル』に対して友達がいない、寂しがり屋の女の子なんだと決めつけた。
そんなことを思いつつ、会話をしながら歩いていると、ようやく待ちに待った薬草が取れる目的地の森に到着した。
やっと、あの長ったらしい馬鹿げた質問攻めから解放されたと思い、うっすら笑みが溢れてしまった。
シャルルから採取する薬草を見せてもらい、摘み方を教えてもらう。
「薬草は根を取らずに
根まで全部取っちゃうと、次が生えてこないから…。
それから…―――――」
「なるほど…。
わかった!
じゃあ、俺は向こうの方から集めてくるよ。」
一緒にとるより効率がいいと思ったからだ。
見えなくなるまで離れてから、集めて来ることにした俺は、黙々と教えられた通りに薬草採取に
(早く集めて帰らないと、クリスやセバスに怒られる…。)
短い時間なら、許してもらえると思って出てきたけど、そろそろ帰らないと、時間的に許してもらえる
グラン『お父様』にバレたら、また部屋から出られなくなるかもしれない…。
それだけは、ごめんだ…。
黙々と薬草を摘む俺に『ゼブラ』は不満そうに近づく。
「(あるじー、つまんないー。)」
「…ん?
じゃあ、シャルルの所までこの採った薬草を持って行ってくれないかな…?
早く帰りたいし、ゼブラが手伝ってくれたら助かるんだけどなぁ…。」
困った顔を作りゼブラの反応を伺う。
「(わかったぁー!
お手伝いだいするー!!)」
(ふっ…、計画通り…!!)
俺は薬草を摘み取り、ゼブラに見えない角度で、口元が三日月の形に変わり悪い顔になっていた…。
俺は近くにあった、デカイ葉っぱを持ってきて、摘み取った薬草を包み、ゼブラに軽く噛まして渡した。
思った通りに
「わぁ!
ワンちゃんも手伝ってくれてありがとぉー!
賢いワンちゃんね!」
薬草を渡したゼブラの姿は、シャルルにワシャワシャされて
カッコ付けているのだろう…。
小さくも凛々しい姿を見せ付けられた『シャルル』は、可愛さと見た目と合っていないゼブラの凛々しい姿に、自然と笑顔になる。
「ほんとに可愛い♪
私も飼ってみたいな…。
あなたみたいな賢いワンちゃん…。」
シャルルはワンちゃんの
抱き締められたゼブラは不思議な顔をした…。
優しく抱き締めるシャルルの顔が、今にも泣きそうな顔をしていたから…。
「……よし。
遊んでないで早く終わらせないと!
じゃあ、また持ってきてね!
カッコいいワンちゃん!」
「キャン!」
元気良く返事をしたゼブラは、俺の元に向かって葉っぱを咥えて帰って行く。
その後ろ姿を消えるまで見ていたシャルルは、気を取り直して薬草を摘み取るのに集中した。
時間も経ち………摘み取り、場所を変えてまた摘み取る。
何回かワンちゃんも持ってきてくれて、もう少しで袋が一杯になるところまできた。
『…ガサガサっ……』
後ろで草木を抜けてくる音が聞こえる。
(…また、ワンちゃんが、持ってきてくれたのね!
さっきは隠れんぼしながら採ってたから…。
…よーし、次は驚かしちゃお!)
静かに後ろまで来る足音に耳を凝らし、
両手を広げて『笑顔』で声を出そうとしたが、思っていた姿とは違う者を目にして笑顔が消え、息を飲み込み…声が出せない…。
緑色の肌、とがった耳、おぞましく笑う顔。
目の前には、自分の腕より太い木の棒を
震える体を抑え、大声で助けを呼ぼうと声を荒げる。
『ゴンっ…』
「たす……ケテ。」
振り上げられた太い棍棒は、シャルルの助けの声が言い終わる前に頭に振り下ろされた。――――――――――――――
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