第17話 王女・従姉・メイドと一緒の入浴その1

 結局、僕はクロエ、アウレリア、そしてリィネの三人に引きずられるようにして、大浴場へと連れ込まれた。

 三人ともレノはまだ子供だから平気、というけれど、その理屈であれば、アウレリアとリィネも子供だし、僕は中身は18歳……。


 ともかく、さすが公爵家の屋敷の大浴場は立派で、大理石でできていて、天然の温泉がなみなみと浴槽に注がれていた。


 四人どころか、十数人でも入れるほどの大きさだ。


 そこに俺は、美少女三人と一緒にお風呂に入ることになったわけで……。


 三人ともバスタオルを身にまとっているけれど……恥ずかしそうにしている。

 というかアウレリアは王女なのに、こんなことをして問題にならないんだろうか?


 と僕が聞くと、アウレリアは、顔を赤くしてふるふると首を横に降った。


「わたしはレノに命を助けられました。言いましたよね。わたしはレノのものなんです」


「ええと……」


「だから、何をされても平気です」


 小さな胸をバスタオルで隠しながら、アウレリアは上目遣いに僕を見つめた。エミリそっくりの顔でそんなことを言われると、動揺してしまう。


 そこに割って入ったのが、クロエだった。


「ふ、二人とも子供なんだから、いかがわしいことをしたらダメ!」


「いかがわしいことってなんですか?」


 アウレリアに尋ね返され、クロエは言葉に詰まったようだった。


「それは……その……」


「クロエさんこそ、そういうことをレノにしたいんじゃないでしょうか?」


「そ、そんなことありません!」


 クロエは頬を真っ赤にして、否定した。アウレリアは青い瞳でじーっとクロエの体を見ている。


「やっぱり……クロエさんは大人ですね」


 クロエはこのなかで唯一3歳年上の15歳だ。体つきもずっと大人びている。……セシルほど胸は大きくないけれど。

 

 そういえば、あのあと、セシルに会えていないな。学園に入学すれば、また会う機会もあるんだろうか。


 そんなことを考えていたら、クロエに睨まれる。


「レノ……私の胸がセシルより小さいとか、失礼なことを考えていたでしょう?」


「ど、どうしてわかったの?」


 と言ってから、しまったと思う。クロエはますます不機嫌そうに僕を赤い瞳で見つめた。


「やっぱり……。レノのエッチ。お仕置きしないと……」


 僕が口を開けかけたとき、突然、後ろから抱きしめられた。


「レノ様♪ 不機嫌で素直になれないクロエ様なんて放っておいて、あたしと一緒にお風呂に入りましょう♪」


「り、リィネ……」


 気づくと、リィネが僕の背後から密着していた。リィネもまだ12歳の小柄な女の子だけれど、でも、かなり可愛い。

 淡い色素の瞳が僕をまっすぐに見つめ、僕の耳元で「あたしはレノ様に意地悪なんてしないですよ」と冗談めかして言う。


 リィネはメイドだけれど、僕が転生する前のレノ少年とも仲が良かったみたいだ。それは良いのだけれど、距離感が近すぎる気がする。


「わ、わたしも……


 慌てた様子のアウレリアが、正面から僕に抱きつく。背後からはリィネ、目の前にはアウレリア。


 二人の女の子と密着すると、その甘い香りと温かさでくらりとする。

 まだ12歳なのに、ふたりとも小さいけれど胸の膨らみはあるし、それが押し当てられると……。


 僕はドクンと心臓が跳ねるのを感じた。

 ……まずい。正気ではいられなくなってしまうかもしれない。


「ふ、二人とも、その、困るから……」


「嫌です。あたしはご主人さまのことを離しません」


「……わたしはレノのもので、レノはわたしのものだもの」


 ふたりとも離れるつもりがないどころか、ますます僕のことを強く抱きしめた。僕が逃れようともがくと、その拍子に、正面のアウレリアと体がこすれる。


「ひゃうっ」


 アウレリアが甲高い悲鳴を上げた。胸のあたりを刺激してしまったらしい。

 僕はうろたえた、心臓がうるさいほど音を立てている。


 仕方なく、僕は言う。


「く、クロエ……助けて」


 そう言うと、クロエは急に機嫌を直して、ぱあっと顔を輝かせた。頼られて嬉しいということだろうか。


「ほらほら、ふたりともレノを困らせちゃダメだから」


「はーい」


 リィネとアウレリアは仕方なさそうに俺から離れた。

 でも、ほっとしたのは一瞬だった。


 クロエが微笑みながら、照れたように、何かを期待するように頬を紅潮させる。


「じゃあ、私がレノの体を洗ってあげる」

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