転生守銭奴女と卑屈貴族男の本館事情 08
手紙自体は即日届いたものの、流石に即面会、とはいかなかった。ディルミックの都合も、お義母様の都合も、王子の都合もある。そして、そうそう三人の都合がつく日があるわけではない。お義母様に会う日は、結構先になってしまった。
その間、わたしは部屋――というよりは、別館から出ることができなくなっている。ふらっと温室へ散歩にでかけて、お義母様に再会してしまっては、前回誤魔化して逃げたのも、今回練っている計画も無駄になってしまう。
まあ、わたしとしては、暇を潰せれば、多少の間、室内にこもることくらいは苦ではない。元々、こっちに来てから、頻繁に街へ遊びに行くこともなかったし、別館の中だけで過ごすのは慣れている。前世でも、お金を極力使わないように、と、家の中でお金がかからないようなことばかりしていたし。図書館で借りた本を読むとか。
今日はディルミックが貸してくれた児童書を読んでいる。ディルミックが子供の頃に読んでいたものらしい。
内容的には結構な子供向けで、大人になった自分が読むと少し物足りないのだが、文字の量や表現なんかはすごく丁度いい。あと、児童書ということもあり、文字が大き目で一ページ辺りの文章が結構スペースを取って書かれているので見やすい。
働きづめだった前世に比べれば、こうして日中、窓際でゆっくり本を読んでいられるのって、すごく贅沢な時間の使い方をしているように思う。
――と。
視界の端で何かが動いたような気がして、わたしは窓の外を見る。本の内容が一段落して、集中力がふっと途切れたタイミングだったのもあって、なんとなく気になってしまったのだ。
案の定、窓の下に誰かがいた。
わたしの部屋の窓から見える場所は、洗濯場に繋がっている最短ルートなのか、時折、ミルリや、ミルリとノルテとも違うメイドが歩いているのを見かける。
わたしが部屋にいるときは誰も傍についていないし、ノルテが洗濯でもしに行ったのかな、と思い、本に目線を戻し――思わず二度見してしまった。
――え、あれ、誰!?
何かを探しているのか、きょろきょろと辺りを見回している女性が一人。その女性は、どう見てもメイド服ではない。
見覚えのない人物に、わたしはじっくりと見入ってしまったが、ふと、下にいた人物が、頭を上げる気配を感じて、慌てて立
ち上がり、下から見えない場所に移動した。
完全に目が会う前になんとか隠れられたが……彼女の髪、金髪だったよね?
金髪で褐色肌。グラベイン人のスタンダードな見た目ではあるけれど……。どことなく、着ている服の色に見覚えがあって、わたしは一つの人物にたどり着く。
――あれ、もしかして、温室で出会った大奥様、もとい、お義母様なのでは……?
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