転生守銭奴女と卑屈貴族男の美醜(女)事情 01
義叔母様登場~婚約発表パーティーの間。説明補足回。
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さあ寝るか、となって寝支度をするディルミックの横顔を見ながら、やっぱり美人だよなあ、なんて思っていたわたしは、ふと気が付いてしまう。
――この世界、男性の美醜はハッキリしているけど、女性の美醜って曖昧じゃないか? ということに。
世界を救った英雄とその仲間たちが『美しい』の基準になっているのは、流石のわたしだって知っている。かつての英雄が男の『美しい』。そして、その仲間が女の『美しい』。
そこまでは分かるのだが、女性の美しい基準が二つあって、その二つは、似ているようで似ていないのだ。仲間たち、という風に言われているだけあって、勇者の仲間が二人の女性だったんだろう、ということはなんとなく察するけど。
豊満で美しい髪の女性か、幼げな顔立ちで胸はなだらかか。
これが女性の『美人』の条件。そう考えると、義叔母様ってこの世界ではめちゃくちゃ美人なんだろうな、と今更ながら思う。いや、義叔母様はたぶん前世でも通用する顔面を持っていると思うが。
ただ、逆に、『醜い』と言われる女性を見たことがない。こと女性に対しては、美人か不細工、ではなく、美人かそうでないか、という扱いを受けているように思う。
いや、でも、女性は髪が綺麗であれば一定ラインを超えられるように思うから、そう考えると女性の方が生きやすい世界なんだろうか。顔立ちはどうしようもなくても、胸のサイズはある程度ならば自分でどうにかできる範囲だと思うし、髪なんか手入れ次第で綺麗にもみすぼらしくもなる。
男にとってはかなり生きにくい世界だけれど、女にとってはそうでもないのかな、なんて考えていると――ふと、わたしの方を見てきたディルミックと目が合った。
「……どうかしたか」
ぎこちない声音。じっと見すぎていたか。
「いや、その……なんで男には醜い基準があるのに、女にはないのかな、なんて……思いまして」
言い終わってからディルミックの顔を見ながら言うことではないな、と思った。これではわたしがディルミックを醜いと言っているようなものじゃないか。
でも、ただ、本当に不思議ではあるのだ。この世界、『醜男』という言葉は前世同様にあるのに、『醜女』という言葉はない。それはつまり、女性に対して醜いという発言をすることがないということではないだろうか。
わたしの質問に、一瞬眉をひそめたディルミックだったが、溜息を吐いてわたしの疑問に答えてくれた。
「簡単なことだ。英雄には仲間がいて、その仲間が女だったが、魔王には仲間がいなかっただけだ」
その答えに、本当にこの世界は英雄と魔王に振り回されているな、なんて思ってしまった。
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