アミのこと

 今回も「黒のシャンタル」の登場人物についてです。


「アミ」


 あまり登場場面は多くありませんが、結構重要人物です。なにしろトーヤと不思議な縁で親友になったダルの幼馴染で愛する人ですから。


 アミはダルの1歳年下ですが、ダルが小さな頃少々体が弱く、祖母のディナにずっとくっついていて、自然と女の子たちとの方が親しくなったことから、気がつけば一緒に遊んでいたという仲です。


 アミはダルと同じく2人の兄がいます。3人年子で家では兄と一緒におかずの争奪戦なんかをやってたことから、結構活発な女の子に育ちました。体も大きく、同じぐらいの年の子たちの「あねご」的ポジションだったことから、1歳年上のダルにも姉のような態度を取るようになりました。何しろダルはずっとどちらかというと弱気なタイプだったもので。

 

 最初は姉と弟みたいにかばってやってるうちに、


「こいつにはあたしが付いててやらないと」


 と、保護者のような気持ちになり、気がつけばその「ヘタレ」なところも含めてダルのことが好きになってしまっていました。

 成長するに従って、ダルも自分のことを好きなんだろう、というか自分以外がダルのことを好きになることなんてないだろう、そんな気持ちでダルから告白されるのを待っていたんですが、待てど暮らせどダルはなんにも言ってこない。


「こいつ一体どういうつもり! こうなったら自分からは絶対に好きだなんて言ってやらない!」


 と、ほぼ意地になって何も言わずにいたところ、なぜだかダルはシャンタル宮へ出入りするようになり、シャンタル交代の封鎖の時にすら宮に行ったまま帰らず、気がつけばあれよあれよという間に「月虹兵」なんてものになってしまいます。

 聞けばダルには宮から専属の侍女まで付いてるらしい。しかもその子はオーサ商会のお嬢様で結構な美人だとか。


 ふと自分の姿を見ると、大柄でがっしりした体格。陽に焼けてそばかすが浮いた浅黒い肌、海風に洗われたとてもツヤツヤとは言えない髪。時々村に来るミーヤを見ても、侍女なんて人種とは全く違うとの自覚がある。きれいな格好もしてなければ礼儀や教育も習ったことはない。


 ダルが宮に近づけば近づくほど自分とは距離が空いていく。そんな風に感じてさびしく虚しく、そして情けなく思っており、ダルがトーヤたちと戻ってきた時にはなんとなく胸の中がチクチクする。封鎖が明けてリルが一緒に村に来て、ダルと仲良くしている姿を見た時には、もうなんとも言えない気持ちで泣きたくなるほどでした。


「漁師のおかみさんにはなれても、月虹兵なんてものの奥さんになれるはずがない」


 そう思って、密かに心の中でダルのことは諦めないといけないとまで思うようになりましたが、元々が気の強いアミは、全くそんな姿を誰にも見せることがありませんでした。


 ところがところがで、突然あんなことがあったもので、思わず、


「この野郎!」

 

 と思ってダルをひっぱたいてもしょうがないでしょ、ね?


 という感じの女の子です。


 アミという名前は、当時再放送していた朝ドラに「アミ」という名前の漁師の娘が出ていたので、


「あ、これもらおう」


 とそのまま拝借しました。


 タイミングぴったりに漁師の娘が登場したのは、


「この名前を使いなさい」


 との神様の思し召しでしょう。 


 さっぱりした気性の気持ちのいいお嬢さんです。もうちょっと活躍させてあげたいなあと思ったりもするんですが、


「あたしは日々の生活で忙しいんだから、そんなことにつきあってるひまないの。ダル貸したげるから、こっちのことは気にしないで」


 と言われてしまったので、そんじゃすみませんとダルをお借りしてあれやこれやしています。


※登場人物紹介の「アミ」の項目です。


https://kakuyomu.jp/works/16816700427488930867/episodes/16816700427489574945

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