SFとファンタジー
前回、
「SFはファンタジーと決まって守らないといけない約束がある」
と書きましたが、では、ファンタジーはやりたい放題かと言うとそうではないと思います。
自分で好きな世界を作れると言っても、その芯の部分、根底の決まりごとがきっちりしていないと、その世界自体がいい加減になってしまう。
かなり昔になりますが、私が買っていた漫画雑誌で、それまで学園物などを書いていたまだ新人の方がファンタジーの連載を始めました。
ファンタジーが好きなので読んでいたんですが、なんとなく心地が悪い、読んでいて世界に入れない。
どうしてかなと思っていたある回で「ああ、なるほど」と納得する場面がありました。
主人公と、なんだったか忘れましたが人間がまたがって乗れるぐらいのサイズの犬かなあ、まあ何かの生き物が絶体絶命の危機になります。どうやって助かるのかと思ったら、いきなりその動物に羽が生えて、飛んで逃げて助かりました。
それまでその動物に羽根があるとか飛べるとかの前提が全くなく、その後も説明はなかったと記憶しています。いくらファンタジーだからってこれはなかろうと思いました。
これから「見聞録」で紹介しようと思っているあるSF系のファンタジーにも同じようなシーンがありました。同じように、絶体絶命になった主人公が、いきなり羽が生えたその生き物と飛んで逃げて助かるのですが、この場合、それまでにその生き物の設定がきちんと決まっていて、「羽が生えても当然だな」と思わせる説明もありました。その下地があるから「ああ、なるほど」と、同じ言葉で感想を持っても、正反対の内容となったというわけです。
本当は伏線のように、「こうなってもおかしくない設定ですよ」と読者に分かってもらえてればいいんですが、あとづけでもいいから「これはこういうことでして」って最低限納得してもらえるだけの説明は必要かと思います。
この世界で一番硬い物質はダイヤモンドだと言われていますが、自分が描く、創る世界で「ダイヤより硬い物質がある」と決めて、それに合わせて話を進めるなら、ファンタジーの場合問題ないんじゃないかなと思います。SFではおそらくそれはだめでしょう。
そういうしっかりした「お約束」がなく好き勝手書いてるファンタジーっぽい作品を私は勝手に「なんちゃってファンタジー」と呼んでるのですが、自分はできるだけ「なんちゃって」にならないようにしたい、と思ってはいます。できてるかどうかは別ですが。
空想はある意味嘘の世界です。空想世界を作るのなら、できるだけうまく嘘をつくことを心がけていきたいと思っています。そうでないとダイヤもガラスになってしまいますからね。
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