ミーヤのこと・その4
※エッセイは「1000文字から1100文字で」と決めているのに、間違えて小説の「2000文字から2100文字で」の長さで「その3」を投稿してしまいました。分割して後半半分を「その4」として投稿しなおしています。
申し訳ありませんでした。
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侍女は諦めて村に帰りたいと思ったミーヤですが、神官様は、
「うちの村から侍女が選ばれるなんて、なんという誉れか!」
と大喜びしてくれるし、おじいさんも、
「無理せず嫌だった帰ってきていいんだから」
と言いながらも、気持ちよく送り出してくれたもので、帰ると言い出せず宮に残り、そのまま侍女となりました。
もちろん、大部分は「どうせ落ちるし」という気持ちでしたが、ほんのわずかですが、やっぱり侍女というものに憧れる気持ちがあったのも事実です。帰りたいと思う気持ちも確かに大きかったのですが、やはり通った事実はうれしかったので、帰ることはなかったんでしょうね。
今の日本だったらいなかに住む女子高生が、「スターに会えるかも」と、日本ではなく、ハリウッドのオーディションを受けてみたら通ってしまった! ぐらいの感じだと思ってください。まあ、そのぐらいすごいことでした。
これを断るなんて、とてもとても言い出せることではないでしょう。
おじいさんは、もしかして合格してしまったらもう一緒に暮らすことはできないと思い、本心では引き止めたかったのですが、それでもミーヤがいつもキラキラしながら神殿のお手伝いをしている姿を見ていたのと、娘夫婦が若くして亡くなってしまったことから、
「人間は年は関係なくいつどうなるか分からない。ミーヤにやりたいことがあるのなら、その気持を尊重してやりたい」
そう思って送り出してくれました。
もちろんミーヤにもそのことを言ってあります。
それでミーヤもおじいさんの気持ちを知っているだけに、合格したけど村に帰りたい、とは言い出せなかったのでしょう。
それから八年、一生懸命宮の侍女として勤め、トーヤがシャンタリオに流されて来た頃には「小物係」を経て「衣装係」となっていました。
そのまま宮で静かに時が過ぎて、そのうち「誓いを立て」て、一生を宮で過ごすのだろうと思っていたら、ある時、託宣の地に出向かれるマユリアが廊下をお通りになる時、他の侍女たちと一緒に並んで片膝をついて座り、「正式の礼」を取ってお見送りしていたところ、
『このオレンジ色の侍女をカースへ同行します』
いきなり頭上からこの世のものならぬ美しい女神の美しい声でそう告げられ、そのまま嵐の中に巻き込まれていくこととなりました。
「本当に、何がなんだか分かりませんでした」
そりゃそうですよね、元々が小さないなかで暮らすごく普通の少女が、ハリウッド映画に抜擢されたと言ってもその他大勢でコツコツがんばっていたら、大プロデューサーの作品の主演に選ばれた、よりももっともっと大抜擢、みたいなものですから。
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