サブカルギルド 31
光里を部屋から出ないように言いつけてから、シャワーにやってきた。
夜のネカフェで女の子一人とか危ないでしょ・・・よね?
過保護だとか言われたらそれまでだけど、本人も了承してくれたし大丈夫。
ささっとシャワーを終えて、氷水を取ってからブースに戻る。
「あ、おかえり広くん。」
言いながら画面とにらめっこである。
そして、その画面には文字がずらっと書いてあり、今まさに書き連ねられているのだ。
「ん、ただいま。なんか飲みたいものとかあった?」
「いや大丈夫、あ、それよりも広くんパソコン使う?」
書くか?という事だろう。さすがにメモリカードを持ってきてはいない。
「ううん、大丈夫。」
そう答えながら光里が股の間に入るように座る。
「・・・なんでそこに座ったの?」
「キーボードずれると書きにくいでしょ?」
「確かにそうだけどさぁ・・・」
二人用とはいえ狭いのだ。後ろは広いけど。
「嫌なら離れるけど」
若干遠慮の気持ちを示すと
「・・・むしろ抱きしめればいいと思う」
と、甘えてくるのだからものすごく可愛い。
お望み通り後ろから抱きしめると、お互いほどほどに体を預け合う。
「高い椅子買うより、広くんに背もたれになってもらった方が楽かも・・・。」
「お望みとあらばいつでも。」
「さすがに恥ずかしくて言えない。」
やりとりを終えると、重心を戻して書き始めた。
何かあるまで待っていようと、そのまま仰向けになり、スマホをいじっていたのだが、いつの間にか意識は飛んでいた。
暖かくて柔らかくて、心地よい感覚を覚えながら目が覚めていく。
一枚の布の内側にあるその熱は、光里のものだと理解できた。
できたから、そのまま寝る事にした。
重量と温もりが消えたことに気付いて、再び目を覚ますと、光里は机に伏して寝ていた。
こちらに倒れさせようかとも考えたけれど、もう一度寝れそうもないので、場所をずれてから光里を横にして、二枚目の掛け布団を光里に掛けた。
さて、光里が起きるまでかなり暇になる。
扉はカードキーのため、どこかに行っても問題は無いのだけれど。
少なくとも、俺が起きたときに光里が居なかったら割と結構不安になるから、部屋を出るのはやめておこう。
かといっても、暗い中パソコンを開いたら起こしちゃうかもしれない。
あの作品の続きでも考えるかぁ・・・。
しばらく妄想・・・もとい、構想を練っていると、光里がもぞもぞと動き出した。
「ん・・・くわぁあ・・・。」
壁だけ見ていて俺に気付いていないのだろうか?なんだか昨晩以上に無防備に見える。
そのまま頭を少し掻いて、こちらにまっすぐ倒れてきた。
「えへへぇ、おはよぉ・・・。」
最初のうちは笑っていたものの、言い終えるころには瞼が閉じていた。
いっそキスすれば起きるだろうか。なんて考えは流した。
「おはよ、光里。そろそろ起きよう?」
「このままねるぅ・・・。」
そう言いながら俺をがっちりとホールドした。
待って待ってダメだって完全に起きてる状態なんだから色々気にしちゃうんだって・・・。
それとは別に、首がつらそうな方向まで曲がっていることに気付いた。
仕方ないので、再び横にして、起こそうと試みてみる。
「おはよう。早く起きないと延長料金発生してとんでもない事になるよ。」
といったかんじで、理性に脅しをかけてみた。
「はっ!お、おはよう!チェックアウトって何時までだっけ⁉」
「大丈夫、あと一時間あるよ。」
飛び起きた。
ドキドキしてたのか、胸をなでおろす動作をそのまま再現する。
「とりあえず顔洗いに行く?さっぱりするでしょ。」
「うん、いくー。」
本当に寝起きは弱いな・・・気持ちは分かるけど。
二人とも顔を洗い終わってから、ひとまずブースに戻って天気を調べた。
「午前中は雨止まないって、なんか昨日の真夜中止んでたらしいけど。」
一人なら真夜中に歩いて帰ろうとして、降られてたんだろうなぁ。とか想像する。
「そうなんだ、じゃぁ、どうする?もう少しでチェックアウトしなきゃでしょ?」
「延長もできるけど、ちょっと高いしなぁ・・・。あ、レジ前に傘売ってたし、それ買って、また少し遊びながら帰る?雨の日ならほかの店でも人は少ないだろうし。」
「そうしよ!遊んで帰ろ!」
そのあとはゲームセンターに向かい、昨日やり切れていなかったゲームを一緒にプレイしたりしてから、近くのデパートで昼食を食べてそのまま帰ることができた。
自室に二人で入ると、クートとシロがゲームのコントローラーを持ちながら重なって寝ていた。
・・・なんでだ。
「ひろくん、これ、どうしよっか。」
優しいな光里、俺だけなら叩き起こしてたぞ。
「ま、叩き起こしていいと思うけど。実質不法侵入だし。」
「ま、まぁまぁ、そう言わないであげて、もしかしたら理由があったかもだし・・・。」
理由が無くても来ることがある。みたいに言うじゃないか。よく来るからそうだけど。
二人でどうしようかと少し悩んでいると、クートが起き上がった。
「んあ、お帰り、ツッチー。」
「うん、おはよう。で、説明してくれる?」
「ん、あぁ、お前が書いてた分の絵、描き終えたって報告に来ただけだ。」
え?は?キャラデザと差分、背景含めたら1000は余裕で超えるぞ?
「そりゃそんな反応になるわな、俺もなってた。どうやら本人とは別に協力者が居たらしくてね。それが理由だって言ってたよ。」
それにしても早いけれど、一人で描き切ったと言われるよりよっぽど理解できる。
「その協力者にも感謝しないとだな。まぁ、まずは本人が先か。」
当の本人は寝ているけれど、話を聞いていた光里が優しい表情で毛布を掛けていた。
サブカルギルド 埴輪モナカ @macaron0925
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