怒りの裁き

海鮮かまぼこ

怒りの裁き

「俺の無罪を主張しまーす」

被告のその一言が僕の堪忍袋の緒を助走つけて引きちぎった。

「遺族の方たちの前でよくぬけぬけとそんな事が言えますね」

怒りを抑えてそう言うと、鼻ピアスに金髪モヒカンの日焼けした被告は

「何?キレてんの?w」

と、小馬鹿にした態度をとった。この男は先日、14歳で人を殺したのだ。自分のした事の重さを理解していない。命の重みだったり、尊さを知らないのだろう。だからといって、これからに期待して更生して欲しい、などとは思わない。吐き気すら覚える犯罪者だ。気持ちを抑えながらちらりと検察と弁護士を見ていると、何かが変だ。弁護士と検察の言い争いは熾烈を極めるでもなく、被告を責め立てている。それだけだ。弁護士は目立った反論をするでもなく、減刑も要求しない。情報によると、どこの弁護士もこの案件を拒否したという。唯一受けたこの弁護士はこの業界ではあくどい奴としてよく知られている。金だけ貰って裁判ではニート状態というのはこいつが弁護士を引き受けた時だと最早いつもの事まである。そんな弁護士に依頼をしたのは哀れとしか言えない。被告の肉親たちには責任はない。だからこそ、こんなあくどい弁護士には捕まって欲しくなかった。しかし、被告には情け容赦は無用。

「判決、死刑」

そう言い放つと、被告は

「は?何言ってんだよ!14歳までなら何しても少年院に送られるだけなんだぜ。」

と返して来た。

「その通りだ。法律上はな。」

「だろ!?じゃあ」

「法では裁く事はできない。だったらこの場でお前を裁く。」

被告のそばで囁く。

「今からここで不幸な事故が起こる。たまたまこの上空を飛んでるヘリコプターが壊れて、たまたまここに荷物が落ちて、それがたまたまお前のいるここになる」

そう言うと、僕は席に戻った。すると次の瞬間、たまたま上から降ってきた荷物が被告ごと床にめり込んだ。

「あー、職業体験楽しかったー」

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