第9話

「アイドルになる気はないか...??」


「勿論、ボイトレとかダンスレッスンとか厳しいが、

全力でサポートするよ...」


「あ、でも、うち、貧乏で、その、レッスン料とか、、」


ユナはおろおろしてた。

そうだよな。なんか、目の前でアイドルにならないか?

なんて言われたらしどろもどろになるだろ。


「心配しなくていい。

無償で大丈夫だ」


「でも...私が、アイドルになんかなれるかどうか、、」


「すごい地味だし...」


俺の方。


ユナのやつはちらりと一瞥したので、

俺は慰めの意味も込めて。

こう捲し立てた。


「大丈夫だろ!おまえってば、合唱部だし!

絶対音感あるって、小学校の音楽の先生に褒められたことあったろ!俺ちゃんと覚えてるし!」


「挑戦してみろよ!

そんで、アイドルになってさ!

兄貴シンヤや、あのむかつく部屋にいた女を

見返してやればいいわけよ...!!」


俺は思わずそう言いながらユナの両肩を

揺すった。


ユナはしばしのあいだ、躊躇っていたけど。


やがて。


決意したのか。


「宜しくお願いします!」と


もらった名刺を大事そうに握りしめ、そう

言ってのけたのだった。

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