サド

レックス・ジャック

 男はシャベルで女を首まで鶏糞で埋める。

 鶏糞、牛糞、豚糞。

 あらかじめ三種類の肥料をちゃんと用意していたが、

 男はあえて一番臭い鶏糞を選んだ。

 無数の蠅どもが群がる。

 とにかくもう鼻が曲がるような臭さだ。

 男はにやりと笑った。

 彼はサドだ。

 変態だ。

 残酷さのなかに快楽を感じるド変態男だ。

 無抵抗の女に対して、容赦なく男はシャベルで女を首まで鶏糞で埋める。

「もう許して、ここから出して!」と女がしびれを切らしていう。「あまりにも臭くて息もできないわ」

「ものすごい大金を現金でくれたら出してやる」と男はからかって答える。

 そして、女のからだを掘り出しにかかるができない。

 鶏糞がまるで沼みたいなのだ。

 人食い沼にかわってしまったのである。

「ねえ、冗談はよして。ここから出してよぉ」女はあえぎながらいう。

「ちょっと待ってろ、いま助けてやる」と男がいうが、 てのひらでぐいぐい女の頭を押しつける。

 鶏糞がぴちゃっと女の顔にかかった。

「助けて、助けて」と女は取り乱して断末魔の悲鳴をあげた。

 まったく人気のない家畜小屋の畑。

 いまにも殺人鬼が現れそうな場所だ。

 うっそうと生い茂る牧草と樹木の間に、

 夏至らしい透き通った赤と青の対比色。

 雲ひとつないブルーモーメントの夕暮れだ。

 

 

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