TS転生したが、親友を好きになってしまった。男女の関係になっていっぱい尽くしたが、裏で気持ち悪いって思われてた。

すけさん

第1話

すっかり天高くまで登った太陽の日差しが枕元まで光を送り込んできて、あまりのまぶしさに目を覚ました奏多は身体を起こし、首を振る。


奏多は身体に一切の衣類を身に付けていない。

おまけに昨日の情事の跡があちこちに残っている。


奏多の身体は美しい女の姿をしている。


この世界で女として生まれ過ごして17年にもなるが、自らの身体を見下ろすと真っ先に目に飛び込んでくる大きなおっぱいなどが自分の持ち物であることを考えると、未だに時折、得も言われぬ嫌悪感に背筋がぞぞぞっとなる。


奏多は転生前は男だったのだ。


「うええぇ。何時だよ……。」奏多は頭を振って、隣で寝ている康介を見る。


康介は転生前の日本で親友だった男で、今は……。


なんだろう? どう言い表していいかわからない。


少なくとも康介は転生時に性別が入れ替わる事がなかったから、男であることだけは間違いない。

また、昨日さんざん男女の睦み事をした相手であることも間違いない。


ただ関係性を問われると、なんと説明していいかわからずに奏多はもにょもにょとなってしまうのだ。


前世からの親友? 今は恋人? ただの身体だけの関係? 友情はまだあるのか? あるいはただ強いオスにすがるだけのメスの関係?


もやもやした感情が渦巻いてなんだか腹が立ってきた奏多は、康介の頭をぺちんと叩くと、「先に起きるぞー」と声を掛けてベッドから降りる。


そこらに転がった衣類を拾い上げて身に付けていると、後ろから裸の男が抱きついてきた。

目が覚めた康介が後ろから襲い掛かってきたのだ。


「止めろバカ! 俺は腹が減ったから、うおっ!」

抗議の言葉は康介の強引な力によって掻き消される。今の奏多の身体は女だから、男の力で押さえつけられると奏多は逆らえない。

奏多はそのまま引きずられるようにしてベッドに押し戻される。


そのまま後は言われるがまま、なされるがままとなる。


今の奏多は康介に逆らえない。

逆らえないまま、いびつな関係のまま、ここまで来てしまった。



修学旅行中のバスが事故を起こして全員が死亡、その後なぜか異世界で赤子となって転生していた……らしき記憶のようなものがぼんやりと残っている。


康介と奏多はたまたま同じ村の3軒隣で同じ日に産声を上げ、幼年期のうちに誰も知らないはずの日本語でぶつくさ言っている相手にお互いに気付き、「お前、康介か?」「奏多じゃねーか!」と二人で意気投合、その直後に「奏多お前女になってるじゃねーか!」「うるせぇっ! そういうおめーは不細工な顔のままじゃねーか!」と二人で爆笑した。


それから二人はいつでもどこでも一緒で、枝を1本づつそれぞれ持って裏山に乗り込んでいってワイルドボアの子供に追っかけられたり、果樹園に忍び込んで実り始めた果物を盗んで「異世界のりんごすっぺーっ!」などと言っているうちに大人に見つかってしこたま怒られたり、時折魔物退治にやってくる冒険者にあこがれてまとわりついて最初はウザがられたが最後は根負けした冒険者達に剣や魔法の基礎を教わったり、まあそんな子供時代を送った。


それで名前についても、本来は親がテキトーにつけた名前が二人にあったはずだが、二人がお互いに「カナタ」「コースケ」と呼び合うので周りもそういうものだと認識するようになり、そのまま「コースケ」「カナタ」が二人の名前になっていた。


もともと日本でもお互いぴったり息があっていたが、異世界に来てからは絶好調で、二人して「コースケが、」「カナタが、」いればなんでもできると二人して息まいていた。

大人達の目は冷ややかではあったが。



関係が大きく変わった最初が、奏多の生理であった。

いつものように「遊びにいこーぜ!」と乗り込んでくる康介に対し、奏多の母親が「今日は無理だから」とすげなく追い返し、腹を立てた康介がこっそり乗り込んできて、奏多のその惨状にびっくりとしたところから変化が始まる。


ただでさえ文化レベルの低い異世界の、どうしようもないくらい田舎の開拓村に生理用品なんてご立派なものがあるはずもなく、むき出しの股間に簡単なあて布をした程度の奏多の股からはだらだらと血が流れだしているように見えた。


「うおっ! 奏多! 大丈夫か!」びっくりしてオロオロとなる康介。

「うっせばか! 生理だよ! 始まっちまったんだよ! ……じろじろ見るな!」


この時の奏多は自分の身体がどうしようもなく男とは違うことに激しい動揺を覚えていたのだが、対する康介は違っていたようであった。


奏多は気付いてしまった。康介が食い入るように自分の股間を見つめていることに。

奏多もかつては男だった人間だ。康介が何を思っているのか一発で分かってしまった。


康介は奏多に欲情していたのだ。


奏多は背筋がぞぞぞっとなった。


それでまあ、奏多としてはとにかく自分の中の女を見せないよう、だましだましで距離を置きつつ、今まで通りの関係を続けようとしたのだが、それは2年と持たなかった。



ある年の秋まつりの夜、旅芸人の奏でる陽気な音楽が夜の帳が降りた後も流れ続け、この日ばかりはあちこちに大きなかがり火が夜通し焚かれ、男も女も老いも若きも踊りあい、無礼講で酒もふるまわれ、ほろ酔い気分の奏多は康介に押し倒された。


「てめーふざけんなっ!」蹴り飛ばそうとする奏多。このころはまだ二次成長期が早くに始まった奏多の方が背も高かったし力も変わらなかったから、追い返すくらいのことは簡単にできるはず、であった。


「なあ、いいだろカナタ。俺、こんな顔だし、7男だし、モテねーし、このままじゃ一生童貞だよ。前世も童貞だったのに異世界でも童貞だよ。お前くらいしかやらせてくれるやついねーんだよ。頼むよ。」

「ふざけんな知らねーよ! 俺は男だぞ! そりゃ身体はこんなんになっちまったけど、もともと男で、お前の親友だぞ! 親友にお前、そういうことすんのかよ!」


「親友ならやらせろよ!」康介まさかの逆切れであった。


康介はさらに畳みかけるようにしてこんなことを言い出す。

「だいたいてめーは童貞じゃねーじゃねーか!」

「はあっ?」奏多も語気が荒くなる。「いや、俺だって一度も……。」

「嘘つけっ!」康介は怒りに顔を真っ赤にする。


「お前あんとき俺が童貞だって話したら俺もだとか言ってたけど、実際には中学んときに付き合ってた彼女いたって話じゃねーか! お前と同じヤナ中行ってたやつから聞いてんだよ! 1年近く付き合ってたんだろ!? やってねーわけねーじゃねーか!」


「あああー……。」言われて奏多はドキリとした。


確かに中学3年の時1年ほどミホコという女と付き合っていた。確かに何回かすることした。けどあのミホコという女はセックスした直後からすさまじく生意気な女に豹変して、やれアレを買ってこいだのどこどこに連れて行けだの、チャットの返事は20秒以内に返せだの同じ高校を受けろだの、まあいろいろうるさくなり、キレた奏多が別れ話をすると、なぜか学校中にクズ男だといううわさが流れ、奏多にとっての中学3年の最後はさんざんであった。

あの女とのセックスなど数えるほどしかしていない。おまけに今思い返せばあいつは初めて―とか言いつつも処女じゃなかったし、やってる最中もすごく適当な感じだった。全然ヤラせてくれないくせに、注文だけはやたら多い女であった。

あの女との思い出をなかったことにしたかった奏多はだから、康介が童貞カミングアウトした時に被せて乗っかってしまったのだ。

確かに康介に嘘をついていた。奏多に罪悪感がないでもない。


いやだからってそれ今の状況と関係なくね?


奏多はそのように思ったが、どうも康介の言い分は違うようだった。


「ふざけんなカナタ! おめーは俺に嘘ついてたんじゃねーか! 親友と言いつつおめーは童貞のふりをして、童貞の俺を陰であざ笑ってたんじゃねーか! てめーは人の皮をかぶった悪魔だ! 俺が童貞特有のセックスしたい病に取りつかれていた時、おめーは陰で笑ってたんだろうがっ!」

「笑ってねーよ!」なんだこいつの言い分は滅茶苦茶じゃねーかと奏多は思ったが、

「じゃあなんで嘘ついたんだよ! 馬鹿にしてたんじゃねーのかよ!」等と涙ながらに訴えられると、なんとも返事がしづらくなってしまった。


「いや、馬鹿にしてたわけじゃねーけど、嘘ついてたことは謝るよ。けど俺も一応事情があって……。」

奏多の話を康介は最後まで聞いてくれなかった。


「頼むっ!」人の話を遮るようにして土下座をする康介。「悪いと思うのなら頼むっ! 一回でいいからヤラせてくれ! 1回だけでいいから! 俺に男の夢を見させてくれ!」


えええええっ。


奏多は心の中で大きなため息をついた。

ついたがしかし、結局その日、二人は童貞と処女を失った。


泣きながら土下座する康介があまりにも情けなすぎたのと、正直女の身体のセックスがどんなものか一回くらいは試してみたかったという奏多自身の馬鹿げた興味のためだった。


また、妊娠の心配がない事も大きかった。

こんな田舎村には避妊の薬などはなかったが、奏多には村によく来てくれる冒険者パーティのお姉様たちが分けてくれていたのだ。子供が出来ては仕事にならない冒険者のお姉様がたには避妊の薬は必須なのである。なんでも冒険者ギルドで積極的に配っているので、お姉様がたとしては在庫は潤沢なようであった。

「カナタちゃんすっごいかわいいから、万一大変なことになりそうな時、これがあった方が絶対いいと思う。」うんうんと頷くお姉様たち。

いやいやねーよ、万一なんてねーよ、だいたい俺、男だし。その時の奏多は思っていたのだがここはお姉様がたに先見の明があったという事なのだろう。


それでともかく、一回くらいならまあいいかとついつい身体を許してしまったカナタであった。


「めっちゃ痛てーっ!」


実際のところはろくなものではなかったが。

二人が数え年で12歳になった秋の夜、水車小屋の裏の空き地での出来事であった。

遠くの方ではかがり火の向こうで芸人一座の音楽がかすかな音となって鳴り伝わり、近くの草むらでは秋の虫が盛大に合唱をしていた。



結局のところ二人の関係は1回で終わるはずもなかった。

なにやら機会があるごとに土下座されて、どうにも情けなすぎる親友の顔についつい絆され、4回、7回と肌を重ね合う二人。

3回目あたりから奏多自身も楽しめるようになってしまったのがどうにもよろしくない原因の一つではあったが、それ以上によくないのが、とにかくセックスを求める康介に対し、ちょっと我がままなお願いをすると面白いようになんでも聞いてくれる事に奏多が気付いてしまった事情がある。


生理が辛いんで畑仕事かわってくれねーか。隣村の親戚が一家で遊びに来ることになって、ワイルドボアが一頭必要なんだ。次の行商人が来るまでに金になるタリア石を山ほど集めたいんだけど。


康介は全部叶えてくれた。むろん奏多も手伝いはしたが、面倒くさがりのあの康介が積極的に動いてくれて、最初のうち奏多としてはお姫様気分であった。


セックスやりたいだけの中学生パワーすげーっ!


そのしばらくのち、


セックス餌に男にあれこれ注文つけて、ミホコと俺、やってることかわんねーっ!


すごく落ち込んだ。


それでこれはよくないなと、せめて康介のためになるお願いをしようと始めたのが、魔法の特訓だった。


「魔法がちゃんと使えるようになったら、ご褒美にエロい事してやるよ。」

「マジで!?」目をまんまるにして飛び上がるほどに喜ぶ康介。


恐らくこれが決定的なターニングポイントであったのだと、のちの奏多は思い返すことが出来る。


この世界では女性の方が魔力適正が高く、高位の魔導士などは殆ど女性が占める。

例えば冒険者稼業においては女性の存在はとても重要で、攻撃、回復、補助などの強力な魔法を駆使する女性冒険者が加わって初めていっぱしのパーティを名乗ることができるようになる、といった風潮であった。


ところが奏多に限っては魔法の適性がほとんどなかった。僅かに強化系の魔法に適性があったから、頑張ってそれを伸ばして、冒険者となった今では大剣を振り回したり大楯を構えたりもしてみたが、いかんせん力仕事については基礎能力の高い男性に分がある。

頑張って力をつけてみても出来ることなど限られているのが現状だった。


対する康介は男ながら土魔法に高い適性を示した。

魔法に熱心であれこれ練習していた奏多に対し、どうやら剣士になりたかったらしい康介は最初は冒険者のお姉様たちの魔法レッスンにおざなりな態度だったが、セックスを餌に魔法の訓練を始めたところ、これが恐ろしいほどにめきめきと力をつける結果となり、1年と経たないうちにいっぱしの土魔法使いにジョブチェンジしてしまった。


そうしたら康介は村の英雄になってしまったのだ。


そもそも田舎村では土魔法が使えることは開拓の強力な武器になると大変重宝され、ましてや魔法使いといった肩書きを持てるほどの実力があればこれは三顧の礼を持ってでも迎え入れられるべき特別な存在だった。


康介がちょっと魔法を唱えれば、大の男が4人がかりでも取り除けない巨大な岩がするすると崩れ落ちて砂利に変わったり、がっしり根付いてテコでも動かない大きな切り株が吐き出されるように脇へ移動したり、固くて鍬も入らない台地がふかふかの耕作地へと生まれ変わったり、なにより遠くにあってとても引き込めなかった川の水が地形変動であっという間に村の中央まで水を運ぶようになったり。


それで康介も例にもれず大変ちやほやされることになった。


ろくに野良仕事も手伝わず遊びまわるごく潰しの農家の7男が、突如として村の重鎮として迎え入れられることになったのだ。


奏多は知っている。村の女達は目の色を変えて康介に色目を使い出し、その中でも見た目の良い何人かと康介は実際に関係を持つようになったことを。


だが康介は適度に女をつまみ食いしつつ、必ず最後は奏多のもとに戻ってきて、「なあ、ヤラせてくれよーっ」とねだってくるのだった。


理由は簡単だった。

奏多は自分でもびっくりするくらいの美少女に育っていた。

鏡なんてありもしない辺境のド田舎村でも、奇麗に澄んだ水ならあちこちにいくらでもある。

何気なく覗き込む村はずれの貯水池に映る自分の顔を見るたびに、奏多自身もびっくりするほどの美少女がこちらを見つめ返してくるのだ。


誰だお前は!? ……あ、俺か。


おまけに身体もなんだかおっぱいが大きく育ったり、えらい色白だったり、顔がすごくちっさかったり、手足が異様に長かったり、腰が異様にくびれていたりと、まったくお前は誰なんだ、いや俺か状態の奏多であった。


だから康介が必ず自分のもとへ帰ってくるのは当然のことだろうと、そう奏多は考えるようになっていった。

優越感があった。


それに、奏多には自信があった。なんの知識もない田舎村の女達が男を喜ばせようとしてもできることなどたかが知れている。


一度、奏多が美少女に育つまでは村一番と呼ばれていた奥さん(旦那も子供もいる)が康介を誘って家畜小屋に消える後をついて二人の様子を覗き見してしまったが、まあ単純で分かりやすい行為の連続で、途中から康介が飽きてきている様子がはっきりと伺えた。


対する奏多は性の情報が氾濫していた日本の知識があり、おまけにかつての男子高校生としての記憶から、男がどういったものに喜びを覚えるかを身をもって知っている。


だから、ふらふらよその女へと目移りしそうな康介をうまく誘い、自分のもとに呼び戻すことなんて簡単だった。


これなら勝てる、奏多はそう考えた。じっさいその通りになった。

なんだか楽しくなっている自分がいた。


「魔法の特訓のために身体を餌にしているだけだ。」そんな風に言い訳しつつ、ずぶずぶと康介との肉体関係は続いていた。

結果として康介の魔法はちょっとしたものに育っていたから、ただの言い訳とも言えない状況ではあった。


この時点ですでに奏多の心はそれまでのものとは大きく変わってしまっていた。

恐らくこの時にはもうすでに康介の事を……。


性自認が男から女へと変わったのもこのころのことだった。

奏多は自分が心も体も女になったことを自覚した。

不思議と悪い気はしなかった。


さて、そんなこんなでいっぱしの土魔法使いとしての才能を開花させ、すっかり村にからめとられそうになっていた康介は、一時は村長の娘との結婚話まで出たそうだが、とにかく冒険者になりたいという強い意志があり、奏多と二人、半ば家出するように村を飛び出し、辺境伯領の領都に転がり込んできた経緯があった。

二人が数えで15歳の春の事であった。春麦が青々と育ちつつあるのどかな田舎村の夜を駆けるように抜け出しての一幕であった。


そのころから二人の関係は奏多が康介に依存するようないびつなものへと変化してゆく。


冒険者になっても康介の土魔法は強力で、休息時や戦闘時のの簡易拠点生成や戦闘中の地形操作による妨害工作など、様々に活用してめきめきと力をつけていった。


それで基本は康介と奏多は二人きりのパーティで、よそのパーティにスポット参戦するような形であちこち渡り歩くような活動の仕方をしていたが、康介はあちこちで大人気となり、引っ張りだこであった。


後になって少しだけ悔しいのは、魔法の使い道についてあれこれ考えたのは主に奏多の方だったのに、いざ実際に皆の前で魔法を使ってみせるのが康介なので、康介ばかりがちやほやされ、奏多はほとんどおまけ扱いとなっていったところである。


けどまあ奏多としては仕方がないところもあった。そもそも奏多が使えるのはどこまでいっても簡単な生活魔法と肉体強化の魔法のみで、戦闘では次第に足手まといになっていった。

だから荷物持ちだの食事の用意だの道具の準備だのといった仕事ばかりが奏多の役割となっていった。


また、奏多は一般的な女性に比べて生理痛が重く、避妊の薬に生理を抑える効果があっても、月に何日かはどうしても冒険に出られない日があることも問題となった。


例えば2週間程度のちょっとした遠征の際、奏多が生理を計算したところ自分は参加できないといったことが多々あった。

そんな場合、康介が一人で参加してきて、それで全然問題なく帰ってきたりする事が度々あると奏多の存在意義はどんどん損なわれていくことになった。


そんな奏多が唯一武器に出来るもの、それが自らの美しさと身体、更にはセックスの技術だった。


奏多はそれらの全てを総動員して、懸命に康介を引き止めようと努力を重ね、どうしようもないくらいずぶずぶの依存関係となっていくのに時間はかからなかった。


ライバルが多いのも奏多にとって辛い事だった。

領都はそれなりに栄えている10万人都市で、この世界で10万人とはこれは相当の数なのだ。

美しい女、着飾った女、性の技術に長けた女、奏多のライバルはそこら中にいた。


そして、力をつけ少しづつ名を上げてゆく康介には、次第に多くの女が群がるようになっていった。


奏多はいっそう努力した。康介を誘うため、冒険の際にも太ももや腹などの露出の多い衣装を無理して着こなしてみたり、康介の求めにはどんな場所でも応じたり。

酒場で皆に見せつけるようにして奏多の肩を抱く康介にしなだれかかる様にして自分が彼のものであることをアピールしてみたり。


まるで娼婦じゃないか。奏多は自分に吐き気がするほどだったが、それでも康介の寵愛を失う事の方がよっぽど恐ろしかったのだ。


「やっぱりカナタが一番だぜ。」時折そんな事を康介が言ってくれるだけで、どんな無茶も頑張れる気持ちになれた。


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