第6話 パーティと役割

「でも、アーザはどうして『医師』を封印したのお? 殺せばいいじゃんねえ、人間くらいぃ」


 「封印」は、手法はどうあれ、対象を容器や空間に閉じ込め、内外からともに物理的、意識的に接触できないようにする戦術であり、殺すことではない。

 ゆえに屍王は首を傾げた。魔王の実力を鑑みれば、人ひとり殺せないはずがなく、わざわざ封印という手法を選んだのが謎だった。


 武王も同じ疑問を抱いていたらしく、腕を組んで唸る。


「俺も、それを調べていたところだ。アーザが人間を殺せないはずはない……当時の記録が残っていないか、探している」


 この発言を聞き、法王が肩の高さに手を挙げる。


「儂の使いのゴーストが、アーザ殿の最期の戦いを記録していたはずぞ! 『医師』の封印を目撃したゴーストもいるはずですからな、もう一度詳細に聞いてみますぞ」


「そうか、頼む」と武王は頷く。


「それでさあ、結局、考えないといけないのは、勇者パーティとどう戦うか、だよねええ。一人減ったとはいえ、肝心の勇者は残ってるんだしい…」

 屍王は、両手を後頭部で組んで、退屈そうに告げた。


「ケッケ、確かにそうですぞ! それに、勇者以外の二人も無視できるほど弱くないですからな」


「確かにあのパーティは全員、人の理を超えた強さだ。戦うなら少なくとも三対三。理想的には、あちらを孤立させて、一人を俺らの総力で確実に叩く方が良いが…」


「むむ、難しそうですな」

 法王は顎を引いた――ように、フードの形が歪んだ。実際にフードの奥でどんな表情をしているのかは、誰にも見えない。

「勇者パーティの連携はよくできていますからな。意地でもパーティが散開するような立ち回りを避けるでしょうぞ」


「…対して、こちらは今まで一度も手を組んだことの無い烏合の集。チームプレイの心得は皆無だからな、くっく…」

 武王は自虐気味に笑い、肩を小さく揺らした。

「ケケ…連携の心得が無ければ、連携を散開させるのも難しい…さて、どうしましょうぞ?」

 法王のフードがさらによじれる。首を傾げているようだ、と武王は思った。


 静かに話を聞いていた屍王は、ぱん、と手を叩いて、嬉しそうに微笑んだ。


「ねえ、ぴいいんと来たよお、僕。勉強すれば良いんだあ、そのチームプレイってやつさあ!」


「勉強と言っても、どうやるんだ? 俺らに教えてくれる者など、この世にいないだろう。その上、時間もないのに」武王は顔を顰めて、たしなめるように言った。



「いるよお」と屍王は言った。「――勇者パーティから勉強させてもらおお。プロから学べばいいよお!」



 屍王の提言に、武王と法王は顔を見合わせた。

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