樹海魂

樹海魂

　この世には雑草魂なんて言葉がある。

　それは誰かが作った都合の良い言葉だ。どんなにキツくても雑草のように頑張れって？　そんな言葉一つで頑張れたら誰も苦労しねーんだよ。

　ここには、俺がいる場所には、色んな物が置いていかれる。ゴミ、愚痴、記憶、挙句の果てには魂まで置いていく奴だっている。

　そんな掃き溜めみてーな場所に長いこといると、自然と頭がバグってくる。それこそ死さえ希求するほどにな。

　雑草はいいよな、多くの人の目の留まる場所で、誰にも目を向けられないと嘆いている。

　でもよ、俺のいる場所は皆が知ってるが、誰も見たことねーんだよ。

　雑草はいいよな、名前の無い奴なんていない、って庇護されて。

　でもよ、俺のいる場所ではどんどん名前が消えていく。

　踏まれても挫けないんじゃない、踏まれ続けた結果ここにいるんだ。

　でもよ、ずーっとここにいるとたまに同じ目をした奴に出会うんだ。

　虚で、悲しげで、絶望的で、それでいて理想を捨て切れていない、正に俺みてーな奴によ。

　そいつに会った時初めて俺は生を感じた。何を喋るでもなく、互いの存在が、俺たちを救ってくれたんだ。

　気づけば人は増えていった、数え切れないほどに。

　そして何人も消えていった、人知れずに。

　俺たちは何度やられても立ち上がるなんて、そんな聞こえの良い奴らなんかじゃねー。

　俺たちは、何度死んでも現れるのさ。死んでも死んでも、また第二、第三の俺が現れる。

　何人消えようが、何人倒れようが関係ない。

　いつか、世に蔓延る雑草達に、俺たちがなんたるかを知らしめる為に。

　根が枯れたら終わりなんて甘いもんじゃない。俺らの根はとっくに枯れている、断ち切られている。

　俺たちは死んでから始まるのさ、それが樹海魂。

　死んだ者に恐怖などない。

　ーーー全ての民に告ぐ、我らは不滅なり。