第358話 不可解な現象

『【体術】Lv8を取得しました』


『【闘気術】が解放されました』


『【跳躍】Lv7を取得しました』


『【空脚】Lv1を取得しました』


『【空脚】Lv2を取得しました』


『【空脚】Lv3を取得しました』


『【空脚】Lv4を取得しました』


『【捨て身】Lv6を取得しました』


『【魔法攻撃耐性】Lv6を取得しました』


『【剛力】Lv8を取得しました』


『【光属性耐性】Lv2を取得しました』


『【封魔】Lv6を取得しました』


『【威嚇】Lv1を取得しました』


『【威嚇】Lv2を取得しました』


『【威嚇】Lv3を取得しました』


『【威嚇】Lv4を取得しました』


『【威嚇】Lv5を取得しました』


『【拡声】Lv6を取得しました』


『【視野拡大】Lv7を取得しました』


『【闘気術】Lv1を取得しました』


『【闘気術】Lv2を取得しました』


『【闘気術】Lv3を取得しました』


『【闘気術】Lv4を取得しました』


『【獣血】Lv1を取得しました』


『【獣血】Lv2を取得しました』


『【獣血】Lv3を取得しました』


『【獣血】Lv4を取得しました』




「はぁ、しんど……魔力は――、4000切ったくらいか。このクラス相手に【睡眠】や【石眼】は狙うもんじゃないな」



 長く続くアナウンスを眺めつつ地べたに座り、一人そんな感想を漏らしながら足元に転がる虎女だった頭部に目を向ける。


 この現象をどう解釈すればいいのか。


 首の半分近くまで刃が通っていたのだ。


 本来なら絶命確定とも言える傷を負いながら、それでもより獣に近い姿へと変化していく姿をずっと眺めていた。


 口内からはみ出すほどに長く伸びた牙など、明らかに人のソレではなく、この生き物がどの『枠』に収まる存在なのか、判断に悩むが……



「しょうがないよな」



 体内に魔石が生まれていたのか、もうその確認は取りようもない。


 その場を動くことなく変化していったので、これはラッキーとばかりに身体の大半を『消失』で消し飛ばしたのだ。


 よく分からない"第二形態"への変身まではスキルの増加を期待して一応待ったが、律儀に戦ってやる義理も理由もないからな。



「ん~目新しいのは【威嚇】【闘気術】【獣血】、あとは小男の【土操術】もか」



【土操術】Lv3 流した魔力量に応じて土石を任意の形状に変化させ、スキルレベルに応じた操作をすることができる



 これは説明を見ただけだと何も分からないタイプだ。


 一応戦闘中に俺自身を模造し、まっすぐ飛ばす程度のことはできたが、小男が使っていたような旋回など少し複雑な動きになれば途端に反応が無くなってしまう。


 もっと魔力を籠めればやれるのかもしれないけど、今はそんな無駄遣いしている場合じゃないしなぁ。


 このスキルは試すなら落ち着いてから。


 『消失』以外に石を生み出した後の処理方法が増えたので、今後もまずお世話になるスキルだろうな。



 あと【空脚】も新規取得だが、これはギニエのDランク狩場にいる時、前提条件の達成で解放だけされていたから身に覚えはある。



【空脚】Lv4 足場のない空中で踏み込み、5段までの【跳躍】を行うことが可能になる 魔力消費:1段毎に5消費



 内容を見ても【跳躍】の上位互換で、有体に言えば二段ジャンプとかの類。


【飛行】できる俺にとっては虎女が使っていたような、空中での強引な立て直しや方向転換が主な使用用途になってくるだろう。


 間違いなく使いどころがある、優秀なスキルだと思う。



 そして【威嚇】は……うーん。


 これは何のためにあるスキルなのか。


 見比べることで、使いどころがほぼ無いんじゃないかと思ってしまった。



【威嚇】Lv5 前方5メートルの範囲に対し【威圧】効果を与える 魔力消費35


【咆哮】Lv5 前方5メートルの範囲に対し【威圧】効果を与え、自身に掛けられた精神ダメージを確率で無効化させる 魔力消費45



 自分が明らかに正常で範囲威圧を与えたい時、魔力10をケチって【威嚇】を選ぶという手もなくはないけどなぁ……


 スキルを使う時は咄嗟なのだから、使い慣れた方を選んでしまう自信がある。


 って考えてみたら、【咆哮】は魔物専用スキルなのだから、俺からするとただの下位互換に見えるけど、実際の扱いは違うんだろうね。



 んーで、【闘気術】はまぁまぁ想像していた内容に近い説明だ。



【闘気術】Lv4 体力の消耗と引き換えに、使用中は筋力値、防御力値、敏捷値、技術値を一時的に190%まで上昇させる 魔力消費0



 身体から湧き出る靄。


 不自然なオンオフ。


 そのオンオフで体感できるほどの明確な能力差。


 そして虎女の格闘に特化したような系統と、表情や言葉にまで出ていた焦り具合。


 この辺りでデメリットの存在するスキルが絡んでいるんだろうとは思っていたけど、体力消耗のみで魔力を一切使わないスキルだったとはな。


 癖はあるものの、"効果時間指定がない"というのがこのスキルの大きな特徴だろうから、近接戦を行う時は意識してもいいかもしれない。


 いちいち【闘気術】と、言葉にする必要のないスキルだしね。



「となると、やっぱりこいつだよなぁ……」



 残されたのは最後の一つ、【獣血】。


 改めて虎女の頭部に目を向けるも、変化した原因と考えられるこのスキルは何も俺に示してくれない。


 ここにきて初めての経験。


 人から得られたにもかかわらず、まさかのグレー文字で使用不可判定を受けていた。


 一見すれば文字通り『獣』に関係するスキルで、それこそ『獣人』の種族特性スキルにも見える。


 が、犬獣人のクアドはこんなスキルを所持していなかったし、今までスキルを覗いてきた獣人もこんなスキルは持っていなかったはず。



「それになぜ、こいつだけ<その他枠>で、しかもに来る?」



 不可解過ぎる現象だ。


 スキルを探してもなかなか見当たらず、まさかと思って下部までスクロールさせても、それでも【獣血】の文字は見当たらない。


 混乱しながら遡っていると、まさかのまさか。


 <その他>の枠の一番上。


 正確には空白スキルのすぐ下に、なぜかこの【獣血】が表示されていた。


 しかもグレー文字の状態で、だ。


 暫しその場で考え込むも、このスキルに限っては初めてのことが多過ぎて何も分からない。


 はぁ、と溜め息一つ。



(落ち着いたら女神様達じゃ分からなそうだし、ゼオにでも聞いてみるか)



 そう思いながら、虎女の耳についていた二つのイヤリングを。


 そしてちょっとやり過ぎたかなと思いながら、回収できそうな小男の装備品を【探査】で探し出し、俺は未だ争いの音が聞こえるマルタの南門へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る