第253話 魔物分布状況

(魔物の名称が分からないのは想像以上に不便だな)


 そう思いながら、俺は一人で周辺魔物の調査を進めていく。


 今まではハンターギルドの資料に名称がしっかり書かれていたのだ。


 無ければ適当に名付けるしかないと、なんとなくの雰囲気で手帳に所持スキルや分布エリア情報を書き込んでいった。


 ひとまずはデータを取ってからどこを重点的に攻めるか、効率重視で決めていく。



 <一度通過したBランク帯>


 ・ガーゴイル:【飛行】Lv3 【絶鳴】Lv5 【爪術】Lv4


 ・青い鳥:【飛行】Lv5 【氷魔法】Lv3 【氷魔法耐性】Lv3


 ・ユニコーン:【雷魔法】Lv4 【雷属性耐性】Lv3 【突進】Lv4



 <拠点付近のAランク帯> 


 ・黒象:【踏みつけ】Lv5 【威圧】Lv4 【物理攻撃力上昇】Lv2


 ・マンティコア:【飛行】Lv1 【爪術】Lv5 【咆哮】Lv4


 ・6本角の牛:【突進】Lv5 【狂乱】Lv5 【旋風】Lv3



 一度通過しているルートの魔物。


【絶鳴】のボーナス能力が魔力なので、こいつのスキルレベルを8にして魔力を盛りたいところだし、地上にいたことだけは知っていたユニコーンの【雷魔法】も俺の主な攻撃手段になっているので、できれば粘ってレベル8まで上げたいところだ。


 狩ればついでに未取得だった【雷属性耐性】もついてくるわけだしね。


 だだ何よりも嬉しいのは、黒象の所持していた魔物専用スキルの【物理攻撃力上昇】だろう。


 これはかつて<ボイス湖畔>で出会ったマッドクラブの【物理防御力上昇】と同じで、レベル1上がるたびに筋力が3%ずつ上がる割合上昇タイプだ。


 伸びている筋力だからこそ恩恵も大きいので、肉はあまり美味しくないって結論が昨日出たばかりなのに、この黒象を見るとヨダレが出てきてしまう。


 スキルレベルが高くなかったのはちょっと残念だけど、拠点付近ですぐ出会えるってところもかなり大きいし、デカい象牙も素材として高く売れそうな気がするので、ゴリゴリ狩りまくっていこうと思う。



 今いるパルメラ北部のデータ取りが終了したらお次は東へ。


 すると入り口付近でスライムに入れ替わったのと同様に魔物構成が少し変化した。



 <東のBランク帯>


 ・赤目のフクロウ:【飛行】Lv4 【夜目】Lv5 【爪術】Lv3


 ・青い鳥:【飛行】Lv5 【氷魔法】Lv3 【氷魔法耐性】Lv3


 ・ユニコーン:【雷魔法】Lv4 【雷属性耐性】Lv3 【突進】Lv4



 <東のAランク帯>


 ・6本角の牛:【突進】Lv5 【狂乱】Lv5 【旋風】Lv3


 ・黒象:【踏みつけ】Lv5 【威圧】Lv4 【物理攻撃力上昇】Lv2


 ・空を飛ぶ小型の虎:【飛行】Lv2 【噛みつき】Lv5 【爪術】Lv5



 夜間飛行でも通過させない気満々の怖い顔したフクロウがBランク帯に登場し、Aランク帯もマンティコアと似たような系統でありつつかなり素早さも高い、羽の生えた虎が登場した。


 DPS狙いの【体術】―【爪術】コンボは今後も使いそうなので、高レベルの【爪術】は俺にとってもかなりありがたい魔物だ。


 ついでに今は敏捷が足らないので、コイツから【魂装】で敏捷数値170超えを引き当て補強しておく。


 この世界に飛ばされた直後にこんなのと出会っていたら、確実に失禁コースだろうけどなぁ。


 今は灰色の毛皮が気持ち良さそうとか思っているわけで、人間慣れとは恐ろしいものである。



 そして拠点から南西方面へ向かうとこのように構成が変化する。



 <西のBランク帯>


 ・赤目のフクロウ:【飛行】Lv4 【夜目】Lv5 【爪術】Lv3


 ・青色の竜:【飛行】Lv5 【氷結息】Lv4 【氷魔法耐性】Lv3


 ・ユニコーン:【雷魔法】Lv4 【雷属性耐性】Lv3 【突進】Lv4



 <西のAランク帯>


 ・カトブレパス:【石眼】Lv5 【爪術】Lv3 【石化耐性】Lv4


 ・マンティコア:【飛行】Lv1 【爪術】Lv5 【咆哮】Lv4


 ・斑模様の熊:【突進】Lv5 【噛みつき】Lv4 【爪術】Lv5



 なんと、ここで初めての竜が登場だ。


 と言ってもBランク帯だし、自分の背丈よりちょっと大きい程度のかなり小型なので、出会った時はワクワク感の方が大きかった。


 既に竜の親戚みたいな恐竜のボスと対峙はしていたしね。


 初めて氷系のブレスも見ることができたので、【火炎息】――【灼熱息】と同じで、きっと【氷結息】の上位版もあるんだろうなと予想している。


 ちなみに氷系ブレスは【発火】で余裕でした。


 ただ西のAランク帯にいる一つ目の獣――たぶんカトブレパスは、あれはなかなかヤバい。


 過去の知識から近づく前にスキルを覗けば、案の定危険極まりないスキルを所持していた。


【石眼】――たぶんフォトルシープからゲットした【睡眼】の親戚みたいなものだろう。


 まぁ上空から有無言わさず魔法で殺しまくっていたら【石化耐性】のレベルが上昇したので、そこからはただの牛程度にしか見えなくなったが。


 ちなみに凶暴な熊はただデカくて硬いだけのパワー系でした。




 最後の拠点南部はこの通り。



 <南のBランク帯>


 ・魔物の木【気配察知】Lv3 【不動】Lv3 【光合成】Lv3


 ・青色の竜 【飛行】Lv5 【氷結息】Lv4 【氷魔法耐性】Lv3


 ・ガーゴイル【飛行】Lv3 【絶鳴】Lv5 【爪術】Lv4



 <南のAランク帯>


 ・カトブレパス【石眼】Lv5 【爪術】Lv3 【石化耐性】Lv4


 ・空を飛ぶ小型の虎【飛行】Lv2 【噛みつき】Lv5 【爪術】Lv5


 ・斑模様の熊【突進】Lv5 【噛みつき】Lv4 【爪術】Lv5



 グルッと回った反対側でも「おぉ!」と声を上げてしまうような神スキルとの出会いが。


 それはBランク帯で樹木に擬態していた魔物の持つ【不動】というスキルだ。


 俺がよくお世話になっている【硬質化】の亜種みたいなもので、身体が動かせないことを条件に、スキルレベル1でも1秒間防御力12倍という破格の上昇値を叩き出してくれる。


 しかも物理防御だけと思われる【硬質化】と違い、こちらは詳細説明に魔法防御もしっかりと記載されていた。


 ただ【硬質化】は動けるし、消費魔力も【不動】より断然少ないので一長一短。


 それでも完全防御に回る時は動かないことの方が多いので、このスキルは今後も確実に使うスキルだろうなという予感がビンビンしてくるね。


 ちなみに『動けない』のではなく『動かせない』なので、例えば飛行中だとしても一応使えることは使える。


 使った途端接続が切れて落下という"動作"をしていたので、スキル使用中は自らの意思で身体を動かすことは一切できないと思っておけばいいだろう。




 これで全部かは分からないにしても、パルメラという広大な森が東西南北という4ブロックに分かれていたことは判明した。


 空間転移と飛行を駆使してでも相応の日数は要してしまったが、それでもこれだけ探索が進んだ結果は非常に大きいと、地図画面を見ながら一人頷く。



(残りの中心部は、ちょうどラグリース王国が収まるくらいの大きさか……)



 マッピングはドーナツ状に、中心部を囲むような形で行なってきた。


 しかも生息魔物の調査が目的ということもあり、Aランク帯とBランク帯の繋ぎ目を意識して移動していたので、もしあったとしてももう1層――第七層が最後にあるかどうか。


 未踏破領域の規模を考慮すればそのくらいが妥当なところだろう。


 そして、中心部には―――


 思わず眼を細めて中心部を眺めるも、何も見えない。



「……うーし、まずはA―Bランク帯のスキルを回収していくか」



 ドクン、と。


 心臓が高鳴るも、ここは我慢だ。


 この先はもっと強くなる可能性もあるのだから、眼下で手軽に拾えるボーナス能力を拾っていかないのはタダのバカである。



「お楽しみは、後に、美味しく」



 そう呟き、俺はコチラに向かってきていた青色の飛竜を両断した。

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