第33話 女神

 状況を考えればなんとなくの予想はつく。


 だがそれ以上に確定的とも言えるのは、視界に入った一人の女性が姿をしていたからだ。



(剣と鎧を身に着けた女性……戦の女神様……ということは、目の前の3人は全員女神様ってことか?)



 教会にある石像の中で、唯一しっかりと判別のできる姿が右前方にいるんだ。


 まず間違いないだろう。



 話が違う。


 神官さんはどこに?


 なぜ俺はこんなところにいる?


 そもそもここはどこなんだ?



 思うことは次から次へと出てくる。


 しかし、そんな疑問が些細に思えるほどの衝撃が俺を襲い、まるで脳が許容を超えて震えたかのような錯覚を覚える。


(……ぜ、全員美人過ぎないか? こんな整い過ぎた容姿、今までの人生で一度もお目にかかったことがない。それが1人だけじゃなく3人共……いや、1人は明らかに少女だから2人か……)



「おまえ……神罰を食らいたいの?」



「―――ッ!??」



(うぐぅううう……地面に吸い寄せられる! こ、呼吸が……苦しい……し、死ぬ……っ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!)



「リア。時間も限られているのだし、まだ何も聞けていないのだから止めなさい」


 ――――フッ


「がはぁ……はぁ……はぁ……」


 駄目だ。


 これは明らかに女神様、というか人じゃない。


 おかしなことをで殺される……


 全身から冷や汗が止まらない。



「す、すみませんでした……」



 そう謝罪を告げながら顔を上げると、左前方にいる和人形にありそうな長い黒髪の少女は、明らかに不機嫌な顔をしている。


 この人、いやこのお方がリア様というお名前なのだろう。


 なぜか中央にいるツヤツヤした腰まで届きそうな茶色いロングヘアーのお方と、右前方にいる、まるで想像上のエルフのような金髪をした戦の女神様は顔を赤らめているが……


 余計なことを考えてはいけない。


 心を無にするしかない。


「いきなりで困惑するお気持ちも分かりますが、まずは確認をさせてください」


 中央にいる女性が発する言葉に自然と俺の視線も向く。



「あなたは何者ですか?」


「えっ……?」


「……」



 この状況で嘘を吐くつもりはまったく無い。


 しかし、なんと答えれば正解なのかが分からない。


 名前?


 今名乗っている『ロキ』か?


 それとも『間宮悠人』という本名か?



「ロ、ロキと申します」


「もう一度聞きます。あなたは何者で、どうしてこの世界にいるのですか?」



 ご希望の答えじゃなかった。


 となると、異世界人としての俺に用があるということか。


「すみません。元の名前は間宮悠人と言います。どうしてかは自分自身でもよく分かっていません。急に拉致されて森の中に捨てられました」


「拉致か。次元の狭間に飲まれたのではないのか?」


「次元の狭間というのが分からないのですが、どういったものでしょうか?」


「次元の狭間とは極小確率だがどこにでも起こりうる空間の歪、分かりやすく言えば突如現れる黒い亀裂だ。飲まれればそのまま亜空間を彷徨うか、運が良ければ別の世界へと繋がってそこで吐き出されることになる」


 そう答えてくれる戦の女神様の言葉を慎重に飲み込みつつ、俺は答える。



「確かに最初、黒い亀裂に飲み込まれました。そのあとに真っ黒い空間へ出て、っ……ッ……!?…………言葉が出ない……」



 俺の言葉に剣呑な表情を浮かべる戦の女神様とリア様を見て、マズいと感じるもどうにもならない。


 なぜ……なぜ、どんぐりとの経緯を言葉にできない?


 俺はどんぐりと会い、その後にパルメラ大森林へ飛ばされた。


 そう伝えるべきなのに言葉が……ッ! そうだ!

 

 この方達はどう考えても俺の心を読めている!


 ならば―――



(黒い空間に出た後はどんぐり頭の……名前は知らない少年に、武器と魔法とスキルの世界があると知らされ、拒否権も無いままこの世界に飛ばされました)



 これなら伝わるはず。


 ――そう思ったが甘かった。



「……リガル。途中でけど、私の気のせい?」


「いや、私もだ。アリシアは分かったか?」


「いえ、黒い空間に出た後が――空白のように何も読み取れませんでした。その後の武器と魔法とスキルの世界というのはこの世界のことでしょう。そして無理やり飛ばされたと」


「同じだな。記憶も……抜け落ちているのか? おい貴様、何をした? 死にたいのか?」


「おまえはこの世界の異分子。正直に話さないと殺すことになるんだけど?」


「ちょ……待ってください! 話そうにも、――――――ッ! やっぱりだ! 何度試しても言葉が出ないんです! だから頭の中で先ほど伝えたんですっ!!」


(かんべんしてください! 伝えたくても伝えられないだけなんです!)


「嘘を吐いている様子はないようですけど……これは困りましたね」


「さっきから【神眼】を使っても所持スキルが見えないんだけど? 次元の狭間から出てきた人間って皆そうだったっけ?」


「この世界で何かしらのスキルを獲得していれば見られますね。そしてこの方は神官と話している以上、少なくとも【異言語理解】は取得しているはずです。ということは【神眼】を使っても確認できない、私達ですら知らない未知のスキルが働いているということになるでしょう」


「こいつかなり危険じゃん」


「どういう経緯かは分からないが、世界のことを考えれば生かしておくべきではないな」


「そうだとしても、いったい誰がこんなことを……私達が知らないスキルとなると、まさか上位神様が!?」


「……これは一度フェルザ様に相談した方がいいだろう」


「でもさ、私達の管理世界ってもうフェルザ様からほとんど見捨てられてるよね? 話聞いてもらえるかな?」


「どうでしょう。それでも―――……………………」







 女神様達が、もうちっぽけな存在など認識していないかのように今後の相談をしている中、俺はただただ白いだけの空を見上げて自問自答していた。


 なんでこんなことになっているんだろう?


 俺が何かしたのだろうか?


 どんぐりからチートスキルを強請ねだったせい?


 冗談じゃない。これは便利なだけでチートではないだろう。



 勝手に連れ去られ、勝手にこの世界へ飛ばされ、死に物狂いで生き延びてやっと地盤が固まってきたと思ったら……



 俺はまた勝手に連れ去られて死の宣告を受けている。



 原因はなんだ?


 どんぐりか?


 確かにあいつがきっかけだ。



 じゃあ目の前にいるのは?



 この3人もどんぐりと同じじゃないのか?



 結局いきなり連れてきて殺すだなんだと言っているんだ。


 ある意味どんぐりより質が悪い。



 そして俺は、そんな相手を前にして未だに跪いている。


 はははっ……馬鹿にもほどがあるだろう。


 このままじゃ何もせず死ぬだけだ。だったら……




 パイサーさんごめん。


 さっき誓ったばかりなのに――――約束は守れそうにない。




 膝をつくのも馬鹿らしいと、俺は立ち上がりつつ言葉を発する。



「さっきからどうでもいいことでぴーぴーうるせえよ。なぁ。神様ってこんなゴミばっかりなのか? それともゴミだから神様になれるのか?」



 訪れる静寂。


 3人の視線が一斉に俺へ向くが……


 どうせ死ぬんだろ?


 ―――なら、もうどうだっていい。


「ほら。答えろよ? 神様ってのはみんな自己中の勝手なやつらばかりなのかって聞いてんだよ」


「き、貴様……ッ!! 神に向かってなんたる物言い!! 万死に値するぞ!!」


「うるせえな……敬意をもって俺は対応したのに、殺そうとしてんのはそっちだろ? 今更万死って……笑わすなよ。それにな、俺が出会ったベザートの町の人達になんてこんなこと言わねーよ。神に向かってだと? 神だから言ってんだよボケがっ!!」


「もういいよ、こいつ殺そう。あそこの町も巻き込まれるけど……私が神罰落として身体も消滅させる!」


「ちょっとリア! 神罰は待ちなさい!!」


「ほらな? すぐこれだよ。てめぇの都合なら無関係な人を巻き込もうが関係無しってな。犯罪者と同じかよおまえらは」


「ッ!? そんなわけ……」


「俺を拉致したやつにどんな思惑があるかなんて知らない。俺は元の世界で普通に生活していたらいきなり拉致された。そして納得もしていないのに強制的にこの世界の森へ捨てられただけだ。

 それでも必死に生き抜いたよ。右も左も分からない中で水を求めて彷徨い、訳も分からないまま魔物と戦い、食い物に困って火も通さずに生き物を食った。全部全部死にたくなかったからだ。

 初めて人を見た時は心底嬉しかったよ。初めて町を見た時は感動で言葉を失ったよ。生きるために必死で足掻いて足掻いて……地道にこれまで生きてきたんだよ……

 やっとこの世界を楽しく感じて……これからも生きていくつもりだったんだよ……」



 気付いたら、立ち上がったつもりの俺は地べたに膝をついて項垂れていた。悔しいからか、悲しいからか、自然と涙が零れた。



「なぁ? 教えてくれよ?……俺が何をしたんだ? あんたらにとって俺はどんな悪いことをした? 必死扱いて生きようとすることがそんなに悪いのか?……なぁ……教えてくれよ……」



「「「……」」」



 知りたかった答えは返ってこない。


 でも言いたいことは言った……


 悔いが無いと言えば嘘になるが、こうしたことに後悔は無い。



 ―――あとは死ぬだけだろうと目を瞑る。



(輪廻なんて眉唾物の話は本当にあるのかな? それなら次は――……次もこの世界のように、努力が報われる世界で生きてみたいな)



「あなたは……」



「……」



「あなたは、本当に何者なのですか?」



「……知りませんよ。神じゃないんだから、そんな客観的に自分を見られるわけもないでしょう? ただ生にしがみついて、この世界を楽しいと思い始めた男というだけです」



「そうですか……1つだけ、1つだけ確認をさせてください」



「……なんでしょう?」



「あなたはこの世界へ来る前に、何かしらのスキルを授けられましたか?」



 急になんの話をしているのだろうか?


 心なしか、場の空気感も変わったような気がする。


「スキル?」


「はい。私達ももちろん合意があった上でですが、亡くなった別世界の魂を転生させてこの世界に呼び寄せることがあります。その際には特別にスキルをいくつか授けるのですが……あなたもそのようなことがあったのではないのですか?」


「そういうことですか。俺がしてもらったのは年齢が若返ったこと。今あなた達にどう見えているかは分かりませんけど、元は32歳なもんでね。それとステータス画面がいつでも見られること。この2つです。ただそれがスキルなのかどうかは分かりません。なぜか俺が見られるステータス画面では状態になっているんで、その2つがスキル扱いになっているのは間違いないと思いますけどね」


「……本当のことは言ってるね。隠されているっていうのが、私達が【神眼】を使っても覗けない理由?」


「うーん、どちらも私達が知らないスキルであることは間違いないでしょうけど、ただ世界を脅かすスキルかというとまた違う気がしますね……」


「ふむ……ステータス画面をいつでも見られると言ったな? どのように見えているのだ?」


「伝わるか分かりませんけどね。前の世界にあったゲームという画面に似ているんですよ。だから受け入れやすかったわけですが……レベル、魔力量や各能力値、それにスキルツリーが見られて、一部隠されている物もありますけど、自分がどのスキルを取得しているか、あとどれくらいで取得できそうかも分かります」


「何それ……私達が【神眼】で見られる内容よりよほど優秀じゃない?」


「スキルは分かりますがレベル? 能力値?……リガル、どういうことか分かりますか?」


「いや、私も分からない。フェルザ様がこの世界を構築する基盤として設けた何かか?」


「そんな世界の元みたいな深い話は知りませんよ。ただ分かりやすいところで言えば……女神様への祈祷ってあるでしょう? あれ、何を基準にスキルレベルを上げたり、新しいスキルを授けたりしてるんです?」


「それは魔物を討伐したという、その者の世界に対する貢献具合からだ」


「それは数値化されていないので?」


「数値ではない。ただ私達女神にはその貢献の度合いが分かるから、満たしていればとしてスキルを与えたりスキルレベルを上げたりしている」


「その根っこが『レベル』であり『スキルポイント』ですよ。魔物を倒せば自身のレベルが上がる。自身のレベルが上がればレベルに見合ったスキルポイントを得られる。そしてそのスキルポイントを使ってスキルのレベルを上げたり新しいスキルを取得するんです。それを代わりにあなた達がやってあげているのが女神様への祈祷でしょう?ポイントが足らなければ無理だし、逆にポイントが多くあれば一気にレベルを上げることもできるってね。まぁ俺が見ているステータス画面での話なので、本当にこの世界の人も同じ仕組みかは分かりませんが」


「なんかとんでもない話になってない?」


「えぇ……たぶんこれは上位神様しか知らない内容なのでは……?」


「いかん……ちょっと興奮してきた」


「「リガル……」」


「ち、ちなみに能力値というのは!?」


「確認したいのは一つだけという話でしたが?」


「あれはアリシアが言ったことだ! さ、先ほどの対応はこの通り謝罪する! だから教えてくれ!」


 死を覚悟して、もうどうでもいいやと思ってペラペラしゃべっていたが、なんだかおかしな方向へ話が進んでいるな……


「ま、まぁ悪いと思ってるなら良いんですけど……能力値っていうのは筋力や防御力、知力といった人それぞれの個別能力数値ですよ。レベルが上がれば能力値も上がっていきますし、スキルを得てもそのスキルに応じた能力値が上がるみたいですね。これだってなんとなくは知っているんじゃないですか? シスターさんは選ぶ職業によって伸びやすいスキルが違うようなことを言ってましたし、職によって力が強くなったり手先が器用になったりという差が出てくるんでしょう?」


「確かに職業選択は女神による加護の一種だから、選ぶ職業に合わせて関連スキルが成長しやすくなるようにしているが……それが具体的な数値として見えているということか?」


「そうですね。今のところ1レベル上がれば魔力量が+6、その他の能力値が全て+3に。スキルを取得すれば対応する能力が+1、スキルレベルが2になれば+2になることなども分かっていますね。あと言い忘れましたが加護や称号なんてものも見られます。俺は何もありませんが」


「すごっ……」


「か、確定です! こんな芸当、下位神である私達には到底できません。絶対に上位神様が絡んでいます!」


「あぁ……とんでもないことを聞いてしまった気がする。まぁ聞いたからといって私達に何ができるわけでもないが」


「それは俺も同じですよ。あくまで見られるだけ。だからあなた達が何の心配をしているのか知りませんけど、スキルを使ってチートヒャッハーなんて能力は俺にありません。今でもDランクくらいのハンターと対峙すれば、確実に殺されるのは俺の方でしょう」


「一切の嘘が無さそうだな……」


「そうだね。心に違和感も無い」


「ですね……」


「分かっていただけましたか? それなのにあなた達はこちらの事情も碌に聞かず、名乗りもせず、いきなり飛ばされた中でもセコセコ生きようとしていた俺を殺そうとしたんですよ? 理解してます?」



「「「すみませんでした!!!」」」



 ふぅ。


 とりあえず殺されることは回避できたっぽいし、反省しているならもういっか……


 一応女神様にもこの世界を守るという大義名分があるんだろうしな。


 それならこちらも先ほどの暴言はしっかり謝罪しておこう。


「事情を分かってもらえたなら良かったです。こちらこそ先ほどは暴言を吐いてしまいすみませんでした」


「悪いのは早とちりした私達ですから……今更ですが私はアリシアです。愛の女神と言えば分かりますか?」


「あーいえ……まだこの世界に疎いものでして、そちらの剣を持った方が戦の女神様っぽいなーということくらいしか分かりません」


「そ、そうですよね……」


「貴様の予想通りで私が戦の女神、リガルだ」


「貴様……? そうですか。色々教えてあげたのにキサマキサマキサマ……」


「ッ!? 違う言い間違えだ! ロキ! 君はロキだ! そうだろう!?」


「えぇ正解です。てっきり最初に名乗ったことすら忘れているんじゃないかと不安になりました」


「そんなことあるわけないじゃないか! これでも女神だぞー! ハハハッ!!」


「……私は罪の女神リア。よ、よろしく……」


「こちらこそよろしくお願いします。そうですか罪の女神様でしたか。だから事情に関係無くいきなり神罰ドーンというわけなんですね」


「うぅ……うわぁあああああああああ」


 裸足でどこかへ走り去っていくリア様を眺めながら、俺は一つ尋ねる。


「ところで、俺が教会に来た本来の目的は職業選択なんです。ハンターとして生きていく予定なので、できればリガル様に職業選択をと思っていたのですが、俺はどんな職業が選べるんでしょう?」


「むっ? そうか。それなら私が……あっ……すまない。ロキの職業選択は無理だな……」


「えっ? ハンターとしての適性が無いということですか?」


「そうではない。さっきも言ったように職業選択とは加護の一種だ。そして加護とはこの世界の人間に対してしか授けることができない」


「そ、そんな……」


「私達6人の女神はこの世界を管理している神ですが、この世界のみを管理している下位神でもあります。なのでこの世界で生を授かった人種以外に加護を与えられるような能力を、私達は上位神様から授かっていないのですよ」


「さっきリア様が言っていたことがよく分かりました。異分子、この世界に認められていない存在ということなんですね俺は……」


「た、ただもう事情は把握しています! ロキ君は巻き込まれた側であって、今も懸命に生きようとしている。ならば何かしら救済の道を示すことも女神の役割です」


「でも加護も職業選択もできないわけじゃないですか。もしかして元の世界へ戻せるんですか?」


「それも無理だな……私達下位神が使える力は人種が得られる力の限界と似たようなものだ。そして人種に肉体も含めた次元移動や超長距離転移なんて芸当はできない」


「「「……」」」


「そ、そ、そうです! これはどうでしょう? ロキ君はこの世界のことを知らない。そうですよね?」


「そうですね。まったく知らない世界に放り込まれたわけですから、日々手探りで生活をしています」


「なら【神託】というスキルを特別に授けます。本来なら教会で大きな働きを成した信仰深い者だけに与える特殊なスキルです。それを特別に。ロキ君だけには特別に授けます。加護は与えられませんが、スキルだけならなんとか残せるはずですので。んんんーーーーっ!!」


「「えっ?」」



 すると俺の身体がポワッと全体的に光り、数秒後には何も無かったかのように光が消える。


『【神託】Lv1を取得しました』



「「……」」



 いやいや、なぜ話しているそばからいきなり行動に移るんだ?


 アリシア様もドングリと同じタイプかよ!


 リガル様もいきなりの行動に驚いているが、神様ってもしかしてって言葉を知らないのだろうか?



「これで何かこの世界で困った時に、常識的な範囲に限りますが助言を与えることができます」


「あの……まず合意も無しにいきなり行動に移られたのが、この世界に飛ばされた時と同じ感じでビックリしちゃったんですが……」


「え!? あ……あぅ……」


「一応確認ですけど、【神託】って普通は一方通行じゃないんですか? 俺が質問をするとかではなく、一方的に女神様から言葉を授かるという認識なんですけど違ってます?」


「そ、そうだな……なぁアリシア?」


「その通り……ですね……」


「ということは、俺がをどうやって知るんです? まさか常時俺を監視するんでしょうか?」


「そんな監視なんて! それに私達は神像の近くに来てもらわないと個人までは判別できません! なので何か困ったことがあれば、今回のように教会に来てもらえれば……」


「先ほどご説明した通り、俺はステータス画面を見られますので『ステータス判定』を教会で受けることはありません。『女神様への祈祷』も、自分のステータス画面でポイントを振れますのでどこでも自分でできます。おまけに職業選択はできないとはっきり言われてしまいました。つまり俺が今後教会へ行くことはそうそうないと思うんですけど……?」


「「……」」


「職業選択のためにコツコツお金を貯めたんですよね。こんな継ぎ接ぎだらけの中古の服着て50万ビーケも。価値分かりますか? ちなみに俺が泊っている宿で1泊3000ビーケです。おまけにお金はもう払ったんですよね。それで職業は結局選べず、まぁもういいんですけど殺されかけ、結局一方通行の言葉を受けるスキルって……そりゃありがたいですよ? 何の脈絡もなく女神様の清らかなお声が聞けるなら。寝ている時に話かけられたら眠気も吹っ飛ぶと思います。ただそれでも、ちょっと悲しくなっちゃいますね……」


「ア、アリシア……?」


「いっ、いっ、いっ、一方通行じゃなければいいんですか!?」


「え、えぇそうですね……質問をする側としては、こちらから質問できなければ意味が無いかなーと……」


「ん?……え? まさかアリシア……?」


「……そこまで言うのなら分かりました! 世界に一人だけ! 本来は『神子』しか得られない【神通】スキル! これなら文句無いでしょう!?」


「アリシア!? 自分で言っている通り『神子』しか持てないスキルだぞ? しかも今『神子』はいるんだから、世界で二人になってしまうぞ? 頭は大丈夫なのか!?」


「ふぅ~ふぅ~……これはお詫びも兼ねていますから……いいんです! ただし! このスキルは私の力をほぼ使いきりますからスキルレベルは『1』ですよ! 誰だって最初はそうなんですからそこは我慢してください!」


「え、あ、はい……」


「それと! 世界の根幹に関わるような質問をされても答えられませんからね! 精々世間話の延長程度に思ってください! 分かりましたか!?」


「は、はい! よく分かりませんけどもうそれで良いです!」


「じゃあ与えますからね! リガル!」


「な、なんだ!?」


「私はしばらく寝込みます……他の4人に宜しく伝えておいてくださいよ?」


「分かった……をなぜか使ったと説明しておこう……加護はないが」



 こうして俺は、なんだかよく分からないまま教会へと意識が戻っていった。

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