03

 君は怒りに満ちた表情で、乱雑に日用品やゴミが置かれた床を踏みつけている。薄暗い部屋に、存在証明のように置かれた空の酒瓶。生ゴミと糞尿の悪臭が充満する日本家屋で、君は自らの衝動の発散方法に悩んでいた。

 目の前の男を殺す。きっかけは怒りかもしれない。積年の恨みかもしれない。或いは、突発的な殺人衝動なのかも。とにかく、君はなんの計画性もなく部屋に忍び込み、この床に転がる中年男を苦しめて殺したいと考えている。

 凶器は用意していない。あるのは、床に落ちていたボールペンくらいだ。君はそれを拾い上げ、指先で弄ぶ。強度は申し分ない。

 男は眼を剥いている。無防備で、何も抵抗できずにただ唸っているだけだ。君はその開いたままの眼に、強烈な衝動を覚える。

 君はふと部屋の壁を見つめ、そこに飾られた家族写真に目を留める。この男にも守るべき家族があり、幸せな人生があった。ここで眠っているのはその残滓であり、連綿と続く時間を切り取った写真に切り離された生き人形だ。

 君が選んだのは、単純な答えだ。ボールペンを握り、君は

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