02

 ここは東京のとあるオフィス。君は仕事に慣れてきた入社4年目の社員だ。

 君には、心を寄せる先輩社員がいる。上司への愚痴や厄介なクライアントへの不満を君が口に出せば黙って聞いてくれるし、仕事が終われば食事をご馳走してくれる。

 いつも柔らかな笑顔を絶やさないそんな先輩が、今夜は妙に寂しげに笑っている。君は居酒屋の個室で、対面に座る先輩の物憂げな顔を見ることができなかった。徐々に減っていく生ビールのジョッキを注視し、君は先輩をどうにかして励まそうと思うだろう。

 減っていく酒、更けていく時間。先輩は眠たげに垂れた目で時間を確認し、呂律の回らない声で小さく呟く。


「終電、なくなったね……」


 先輩はふっ、と息を漏らすように笑う。その左薬指についた赤い痕を初めて確認し、君は全てを察する。

 声に出さずに全てを理解した君は、

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