23話 奴隷の馬車

「琴音、力を抑えるように言ったろ?」

「ごめんなさい・・・でも我慢できなくて・・・」

「琴音さんの気持ちわかります」

優一はため息を付く。

「でも、琴音ねぇ力を抑えていましたので大事にはならないと思います」

(確かに抑えていたが、あの冒険者の驚きからして、あの僅かな力の解放であそこまでリアクションからすると、あれ以上の力の解放はあまり街中ではしない方が良いようだな)

「まあ、今の力ぐらいならこの街にも数人いるみたいだしな」

優一は感知で街の人々の力を感じ取っていた。

三人は周りの客も一瞬、騒(ざわ)めいていたが気にせず料理を注文した。

相変わらず三人の食事量は凄く、先ほどの注目の眼差しがまた向けられていた。

会計を済まし、三人は宿の外に出ると街を探索する。

街は活気盛んで賑わっていた。

まるで、お祭りの屋台のように店主たちが声を張って客を呼び込みしている。

「賑やかですね!」

「街に来たのは久しぶりだからな」

琴音は目を輝かせて色々な店を見渡す。ティファリアは落ち着いた表情をしていたがローブからひょっこりでた尻尾がふりふりしていた。

優一の顔から笑みが少し出ると三人は店を見て周った。

琴音とティファリアは屋台で綿あめやアイスを食べ周り終え満足して宿に戻ろうとすると、三つに連結された馬車が大通りを通る姿を見かけた。

馬車には人だかりができ、賑わっていた。

「さぁ!!いらっしゃい!らっしゃい!今日は新しい商品が入荷できました!」

馬車を引いていた商人が大声で呼び込みをすると、人だかりは更に増す。

「おおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーー」

客たちは商人の言う新しい商品を見て歓声をあげた。

三人は気になり馬車に近づくと、商人の手には鎖が握られており、鎖の先には鉄の首輪を付けられた獣人の女性がいた。

その獣人は頭に耳が付いており、そしてティファリアと同じように尻尾があった。

三人は驚きの表情で呆然とした。

「いくらだ!」

「もっと他のも見せてくれ!」

街の人達はまるで奴隷売買が当たり前のように楽しんでいた。

(狂ってやがる)

琴音とティファリアは力一杯、拳を握る。

「二人共、力を抑えるんだ!」

優一の指摘により二人は怒りを抑えて力を制御する。

「兄さん・・・」

「優一さん・・・」

「分かってる。でも我慢するんだ!」

「お集りの皆さん、三日後にお店でオークションをします!!是非お待ちしておりますーー!!なお、この商品の他にも目玉商品が複数ございます」

商人はそう言うと、人々は更に歓声あげ、馬車が走り出す。

三人は宿に戻り優一の部屋に集まっていた。

「「見過ごせません」」

「二人の気持ちはよく分かる。俺も同じ気持ちだ」

「では、奴隷たちのオークションに参加するのですね」

「オークションには参加しない」

「何で兄さん!」

「どれくらいお金がかかるかも分からない。それに奴隷を買うと言う事は、俺達はアイツらと同類になるぞ」

「だけど・・・そうしないと奴隷の人達が・・・」

「考えはある」

優一は宿の窓から外を見渡す。

「三人とも気づいたか?」

「何の事です」

優一は街の豪華そうな格好をした男性に指を指す。

「あの男の着ている服は豪華だけど、その横にいる女性の服は小汚いだろ?」

「はい・・・」

「奴隷は、商人たちに捕まっている人達だけでは無くて、既に買われて奴隷として人生を送っている人もいるって事だ」

三人が窓の外を見て話していると痩せた小汚い服をきた子供がつまずき転ぶ。

転んだ拍子に持っていた荷物を落とすと、主人であろう女は子供に、罵倒しながら暴行を加えられる。

「ごめんなさい。ごめんさない。もうしません。ごめんさない」

「この役立たず。大事な荷物に傷が付いたらどうしてくれるの!!これは貴方を買った時よりも数倍の値打ちの品なのよ!」

二人が窓の淵(ふち)に足をあげて、飛び出そうとするが優一が二人を止める。

「何で止めるの!」

「あの子を助けなくては」

「慌てるな!二人にはお願いしたい事がある」

二人は踏みとどまり優一のお願いを聞くと了承した。

「くれぐれも感情的に行動しないこと!二人共分かった?」

「はい・・・」

「分かりました・・・」

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