16話 絶体絶命
剣と刀が重なり合い大気が揺れ、あまりの速さに剣と刀が重なり合った後に衝撃音が響き渡る。
「流石と言うべきかロゼ様が選んだ理由がよく分かる」
「では私達も始めよう」
優一は戦闘態勢を取りながら魔王ロゼとミティシアの戦いを伺う。
「よそ見とは余裕ですね」
ローブを被っていた男は優一に距離を詰め、横降りの蹴りをするが優一はガードして相手の顔に拳を打ち込む。打ち込まれた拳によりローブの男は吹き飛ぶ。優一は尽かさず気弾を撃ち込む。
すると、男のローブは燃え灰になり姿が現(あらわ)になる。
魔王と同様角の生えた頭に顔には戦果で付いた、であろう傷が頬に付いていた。
「くそが!」
男は額から血を流すも立ち上がり優一に突進する。
しかし、優一は飛び上がり相手の頭に手を付き交わす。
だが、もう一人のローブの男は優一に向けて気弾を連打に打ち込み、突進してきた男も体制を直ぐに直して殴り掛かる。
優一は殴り掛かってきた男に足払いをして、体制を崩して宙に浮いた男の足を掴み、飛んでくる気弾に向けて男を投げつける。
男と気弾は衝突して激しい爆音が鳴り響くと男はその場へ倒れる。
「情けないですね。馬鹿の一つ覚えに突っ込めばこうなる事ぐらい分かるでしょ」
気弾の放った男は仲間に詫び入れる事なく暴言をはく。
「戦いとは常に相手の動きを見て予測しながらするもの。それなのに貴方ときたら・・・」
ローブ男はローブを脱ぎ捨てる。
その男も同様に角が生えており、鋭い目に鍛え上げられた肉体、それに魔王ほどでは無いが高い気を秘めていた。
「自己紹介がまだでしたね。私は魔王直属護衛の一人、アティスと申します」
「律儀に名乗るとは随分余裕だな!仲間の一人が殺られたというのに」
「この様な単細胞などロゼ様の部下には相応しくありませんからね。一応部下ではあるが故に、私の手で殺るのは少々気が引ける者もので」
「だが、そいつはお前の放った気弾で死んだけどな」
「これは戦いに置いての事故なので仕方ありません。それに私のせっかくの攻撃を敵に足を掴まれて防(ふせ)ぎの道具として使われるとは何て情けない死に方を晒すとは・・・無様で仕方ありません」
不気味な笑みを浮かべながら語るアティスに対して優一は距離を詰める。
「おやおや、せっかちな人ですね。まだ人が話していると言うのに」
優一の拳とアティスの拳はぶつかり合うと轟音が鳴り響く。
「こっちは時間が惜しいのでな。早くケリをつけさせてもらう」
「戦いのセンスは、少しは有るようですが、所詮は人間と言った所でしょうか」
優一とアティスは互角の戦いを繰り広げている中、ミティシアはロゼに押されていた。
「あら♡あら♡片腕無くては実力が出せませんかぁ~~?」
息を切らしながら間合いを取り戦うミティシアと比べてロゼには少し余裕があった。
「うるさい」
ミティシアは間合いを詰めて剣に渾身の力を込めて振り下ろす。
剣と刀の激しい衝突により両者は武器を手放してしまう。
ロゼは反動で片手が上がったミティシアの懐に重い蹴りを一撃入れるとミティシアは吹き飛ばされてしまう。
「ほら!もっと頑張って~~♡まだまだ楽しみましょう」
地べたを這いつくばりながら蹴られた個所を抑えるミティシアはロゼを睨みつける。
「その顔良いね!♡」
ロゼはミティシアの顎を蹴り上げ宙に浮いたミティシアの懐のもう一度重い蹴りを入れる。
倒れ込んだミティシアの髪を掴み持ち上げるロゼは、口から血を流し、まだ息のあるミティシアを引きずりながら戦いを繰り広げている優一とアティスに近づく。
「まだ終わらないの?」
優一はロゼの声がした方向に振り向き虫の息のミティシアを見て絶叫をあげる。
「申し訳ございません。直ぐに終わらせます」
優一はアティスを蹴り飛ばし、鬼の形相でロゼに殴り掛かろうとする。
優一の拳はロゼの顔に命中するが微動だにしなかった。
「女性の顔を殴るなんて最低な男」
ロゼは腕力でミティシアを振り回し優一にぶつける。
優一とミティシアは転がるように飛ばされると、ロゼの手には引きちぎられたミティシアの髪があった。
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