11話 密告者
ゴブリンから攫われた人達は助けられ、意識を失っていた者たちも目を覚ます。
ゴブリンによって犯された者の中で妊娠している者がおり、その人たちは頑(かたく)なにゴブリンの子供を産みたくないといい、ミティシアの魔法に寄って摘出(てきしゅつ)された。
「兄さんミティシアさんどこに行ってるか分かる?」
「ミティシアさんなら今、先週攫われた人たちが目を覚ましたから看病しに行ってる」
「そう・・・」
暖炉の近くにあるソファーに座って話しているとリリィが紅茶を入れて持ってきた。
「宜しければお茶でもどうですか?」
「ありがとう。いただく」
「私もお願いします」
お茶をリリィがお茶を注いでいるとティファリアは買い物から戻ってきた。
ゴブリン討伐でお金を貰ったティファリアは街にお菓子を買いに行っていた。
「ただいま~。お店に美味しそうなお菓子があったのでいっぱい買ってしまいました。皆で食べましょう」
四人はティファリアの買ってきたお菓子とリリィの入れた紅茶を飲みながらミティシアの帰りを待っていたらミティシアが戻ってきた。
「おかえりなさい、お母さん」
「ただいま」
すると後ろにはガレスが一緒に付いて着ていた。
全員ソファーに着くとガレスが話を始める。
「実は大変な事が起きまして・・・」
ガレスは深刻そうな顔をしていた。
「どうしたのですか?」
「私の執事が、ここ数日行方不明が分からなくなっておりまして」
「またゴブリンか!?」
「いえ、皆様がゴブリンを討伐して帰ってきた際、執事からティファリア様と琴音様が気の力と魔力を使っていると報告を受けました。執事はコレを国に報告すべきだと言ったのですが・・・私が強く口止めをした次の日に姿をくらましたのです。それから暫くすると王都から手紙が届きました。二人に気付かれず街に留める様にと・・・」
四人はそれを聞いて驚く。
「今日中にミティシア様・優一様・ティファリア様・琴音様はこの街から逃げた方が良いかと。国の兵に囚われてたら何をされるか分かりません」
「そしたらガレスさんはどうなるんだ!?」
「私なら心配ありません。皆様は手紙が来た前日に旅に出られてとでも何とでも言い訳する事が出来ますの」
ガレスは笑いながらそう言って家から出て行った。
「優一君・琴音ちゃん・ティファリア今日の夜にココを出発します。夜なら暗くて視界を避けて逃げる事も出来るので」
「今すぐ逃げた方が良いんじゃ?」
「いえ。先ほどガレスさんに聞いて、私はいち早く上空から確認したところ南の方角からおよそ1万の軍勢がこっちに向かってきているのを確認することが出来ました。明日の朝には到着するかも」
(恐らくだが、何人かはもう街の中に潜んでいると思うから夜に空から飛んで逃げた方が良い)
「分かった。なら急いで支度を済ませよう」
四人は旅の支度に部屋に戻り支度を終わらせて食卓へ行くと夕飯の支度が出来ていた。
五人で最後のご飯を食べ終わるとティファリアはミティシアに包み袋に入った箱を手渡す。
「コレはどうしたの?」
「お母さんにプレゼントです」
ティファリアは街にお菓子を買いに行った際にミティシアに初めて自分で働いて稼いだお金でプレゼントを買っていたのだ。
「本当は琴ねぇと優一さんにも買ってから渡そうと思ったのですけど、街から出るのが早まってしまったので皆の分を買う事が出来ませんでした」
優一と琴音は笑って気遣う。
「良いのよ気にしなくて」
「また今度楽しみにしとくな」
(ティファリアちゃんも同じ事を考えてたのね)
(ティファリアに先を越されるとは)
二人は同じ事を考えていた。
ミティシアが包みを破り箱を開けると中には指輪が入っていた。
ミティシアは左手中指に指輪をはめてティファリアを抱きしめる。
「ありがとうティファリア。とっても嬉しい!」
その光景を見て優一、琴音、リリィは和(なご)やかな気持ちになる。
日は暮れて琴音、ティファリア、リリィが三人でお風呂に入ると優一とミティシアは二階のベランダで話をしていた。
「恐れていた事が起きてしまったわ・・・二人の力を国に知られてしまうなんて」
「大丈夫だ。俺とミティシアが入れば二人を守ることは出来る」
「はい。必ず二人を・・・優一君を守って見せる」
「俺は守る必要ない。二人の事だけで十分だ」
ミティシアは優しく微笑み。
「優一君は頼りになるね」
優一は照れながら左手で頬をかくとベランダの柵に触れていた優一の右手をミティシアは握る。
(えっ!)
「暫くこうしていていい?」
ミティシアは不安そうな顔で優一を見つめる。
「あ、ああ」
ミティシアは優一の肩に頭を預けてベランダから見える景色を眺める。
ココで何か言った方がいいのか?
(でも俺には女性とこうやって接したことが無いからどんな言葉を掛ければいいのか・・・・)
そうこう考えているとガレスがこちらに走ってくるのが見えた。
優一はベランダから飛び降りガレスの元まで近づく。
走ったせいで息を荒くしていたガレスは呼吸を整えた。
「た、大変です。国からの軍勢が街の中へと入ってきました。急いで逃げてください!」
「何!?」
予想していたよりも早く王の軍勢は到着して街の中を進行してこちらへ向かってることを知った優一とミティシアは急いで家に入る。
すると、ちょうどお風呂から上がった三人が通路を歩いていた。
「急げ!国からの軍勢が予定より早くついた!!」
「「「えっ!?」」」
お風呂から上がった二人は驚き、琴音とティファリアは急いで部屋に置いてある鞄を取りに行く。
ガレスも家に入ってくると。
「リリィは私と来なさい。急いで屋敷に戻るぞ。ココに居ては皆さんをかくまったと思われてしまう」
「わ、分かりました!」
優一とミティシアも荷物を取り、一階へ降りるとガレスが裏道を案内してくれた。
「こちらから行けば兵には見つからないと思います。どうかご武運を」
ガレスはミティシアと優一に握手を交わす。
琴音とティファリアはリリィに別れを告げていた。
「どうかお気をつけて下さい」
「はい」
「リリィちゃんも元気でね」
ガレスとリリィは手を振って四人を見送る。
「リリィ、私達も急いで屋敷に戻るぞ」
「はい!」
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