6話 家族みずいらず
「そうですか!琴音さんのお母さんはオールワールド出身の方ですか?」
「はい」
「それでしたら大体の事情は説明しなくても大丈夫そうですね」
「それじゃあ琴音はお風呂に入っておいで。俺達で食器を片付けておくから」
「私も手伝うよ!」
「琴音は病み上がりだから無理しなくていいよ」
「分かった。それじゃあ、お風呂入ってくるね!」
「そうだ!水道は使えないからお風呂のお湯を使ってな。それと水が飲みたいときは冷蔵庫の中にあるペットボトルを使うように」
優一がそう言うと琴音は左手の掌を上に向ける。
「『ウォータークーゲル』」
琴音は優一が初日、風呂掃除の時に使ったティファリアと同じ呪文を唱えると掌に小さな水の球体が出る。
「ママに魔法の使い方、教えて貰ったから大丈夫だよ」
そう言って琴音はお風呂場に向かう。
三人は琴音が魔法を簡単に使う姿を見て唖然した。
三人は食器の片づけを済ませてリビングのソファーに座りくつろぐ。
「優一君も気づいていると思うけど琴音ちゃんの気魔(クラフト)はティファリアより上です」
(いや、全然分からない・・・)
「私も驚きました。琴音さんの力がここまで凄いなんて」
「前から気になっていたけど、どうやったら相手の強さが分かる?」
「簡単です。意識を集中して空気に漂う相手のエネルギー感知するのです。他には自分のエネルギーと他人のエネルギーを触れ合うことによって分かります。」
優一は身体の気を発してティファリアの近づく。
「魔力や気は基本、目では黙視することが出来ないが発するエネルギーが強ければ目でもとらえることが出来ます」
優一の気とティファリアの魔力が触れ合う。
「なるほど。今の俺の力とティファリアの力はほとんど同じか」
「まだティファリアの方が少し上ですけどこれは凄い事です。短期間でここまで強くなるなんて普通では出来ないことです」
三人が話していると琴音が風呂から上がった。
「よく温もれたか?」
「うん!」
琴音は優一の横に座ると話を続けた。
「それでこれからの予定だけど俺はこのまま鍛錬を続けるが琴音は体調が整うまでゆっくり休んでいていいからな!」
「体調なら、もう大丈夫です。私も明日から兄さんの鍛錬に参加します!」
琴音は気合が入った声でミティシアに鍛錬を付けてくれるようお願いする。
「ミティシアさん私も兄さんと一緒に鍛えてください!」
ミティシアは一瞬悩む。
「分かりました。明日から琴音ちゃんにも優一君と同じ鍛錬を受けてもらいます」
優一はミティシアとティファリアと打ち解けれるか心配していたが三人は仲良く雑談をしている姿を見て一安心する。
優一は両手で手を叩くと。
「よし!今日はもう遅いからティファリアと琴音は早く寝る!」
「「子供扱いしないで」」
二人は声を揃えて優一に言う。
「まだ子供だろ!早く寝る!」
ティファリアと琴音は渋々二階に上がる。
リビングに残ったミティシアと優一は話を続けた。
「安心しました。最初は上手く話せるか心配でしたけど、琴音ちゃんとティファリアが仲良くて良かったです」
「俺も。前の世界ではあまり琴音は人と関わろうとしなかったけどちゃんと打ち解けてくれて良かった」
「はい」
二人は話を終えると二階に上がる。
優一は自室に入ると琴音がベッドの上に座っていた。
「あっ!兄さん」
「どうした?早く寝ないと明日は早いぞ」
「兄さんと久しぶりに会った感じで、もう少し一緒に居たいなって思っただけ」
「そうか」
優一はPCの置いてある机の席に着くと電源を立ち上げる。
「琴音!コービーを入れてくれないか?」
琴音は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「はい!」
マグカップを二つ持って琴音は優一の部屋に戻ってくるといつもの定位置で本を読む。
優一がPCで小説を書いていると。
「ねぇ兄さん」
「ん?」
「怖く無いですか?」
「怖く無いぞ!異世界にコレて嬉しくて仕方がない」
優一は琴音が不安がらないように威勢を張る。
琴音はそれを呆れる。
「兄さんはお気楽ですね・・・」
(そんなことないよね・・・兄さんも不安なはず・・・)
優一は悟られなかったと思い安心して笑う。
「私も、ママの生まれた世界に来れて嬉しいけど・・・兄さんまで居なくならないか心配です」
琴音は心配そうな表情で下を俯く。
「俺は居なくなるわけないだろ!琴音が寝ている間はずっと傍にいたしな」
優一は笑いながら琴音に言うが嘘を付いたことに少し罪悪感が沸く。
「兄さん約束して・・・私の前から居なくならないで」
琴音は小指を出す。
(そう言えば転移する前もこんな事したな)
「分かった」
二人は指切りをする。
「もう一つ約束が増えたね兄さん」
「ああ!」
「兄さん、ミティシアさんとティファリアちゃんの事なんだけど」
「二人がどうかしたか?」
「二人共まるで私を家族みたいに仲良く接してくれて私もそれは嬉しいのだけど・・・でも私は二人と上手くやっていけるかな?」
(そうか。琴音はまだ二人の事をよく知らなかったな)
優一は琴音の傍に行き、ミティシアとティファリアの二人の過去を話した。
「酷すぎます。自分の子をそんな風に・・・」
琴音は怒りで顔が煮えたぎっていた。
「ミティシアは俺達の事を大事な家族だと言ってくれた」
「私も家族のように接することが出来るか分からないけど、いずれは気遣い無くお互いに接することが出来るようになりたいです」
「そうだな!」
二人は話し終えると琴音は自分の部屋へと戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます