4話 体力測定~何気ない会話

優一は飛んだり走って自分の身体の具合を確認する。

「おっ!身体が軽いぞ!」

「気を高めれば身体能力だけでなく放つ気の威力も上がります」

優一は自分の拳に力を入れて自分が気によって強くなったことを自覚して喜ぶ。

「それでは優一さんの体重を五倍まで上げますね」

「五倍!?俺に耐えれるか?」

「優一さんは基礎体力が元々付いているので大丈夫です。それによく気を使わないでここまで辿り着けましたね!」

ミティシアは優一の体重を二倍から五倍まで上げる。

「それでは今度は走って家まで戻ります」

そう言ってミティシアは来た道を走っていく。

「優一さんファイトです!」

ティファリアはミティシアの後を追うように走り優一はその後に付いて行った。

「一時間・・・」

優一はスマホで時間を計っておりタイムを口にする。

「その四角い鏡は時間まで計れるのですね!」

「俺の居た世界では十キロマラソンのタイムは二六分で走る人がいるからもっと早く走らないとな」

優一がそう言うと。

「良かったら私とティファリアのタイムを計ってくれませんか?」

「いいよ」

優一は二人が本気で走ったらどれだけ早いのか気になり二人のタイムを計ることにした。

「重さは優一さんと同じで五倍で走ります」

ミティシアとティファリアは優一がひいた線の前に立つと、走る体制をとる。

「位置についてヨーーーイドン!」

二人は優一の合図と共に世界樹に向かって走り出す。

先頭はミティシアであっという間にティファリアと距離が離れる。

ティファリアも後を追うように行き、あっという間に見えなくなる。

やっぱり早いな。

三分が経過した頃ミティシアが戻ってきた。

「何かあったのか?まだ三分しか経ってないよ?」

「もう世界樹まで行ってきました」

「はやっ!?」

ミティシアは全く息切れをしてなく余裕の表情でいた。

(往復でに十キロもあるのに化け物か!いや、さすが異世界の人だなと言うべきか・・・)

さらに十分が経過する頃にはティファリアも戻ってきた。

流石にティファリアは息切れしていた。

「はぁはぁっお母さん早いです。途中で見失いました」

(ティファリアも早いよ・・・身体の重さが普通ならこの二人は一体どのくらい早いんだ)

「優一さん、私のタイムはどの位ですか?」

「十三分だよ!」

ティファリアは汗を拭くために家にタオルを取りに行く。

「ミティシアさんは気を使えないから身体能力を上げないで走ってるのか?」

「私はエアストヴェルトの血も入ってるので身体能力が少し高いのと魔法で強化することも出来るのです。ですが今は魔法で身体は強化してません」

(普通の状態であの速さって事か。それに対して気を使って走ってたティファリアにこれだけの差を付けるとか、このままじゃ俺が守られる立場になってしまうな)

「ミティシアさん、俺も走ってくる」

優一はそう言い世界樹に向けて走った。

タオルを取りに行ってたティファリアは汗を拭きながら戻る。

「優一さんも走りに行ったのですか?」

「ええ」

「お母さん、私も優一さんに付いて行きます」

「分かった。気を付けていくのよ!」

ティファリアは優一の後を追うように走っていく。

(あの子があんな笑顔を浮かべて鍛錬するの、初めてみた。優一さんならきっと・・・・)

日が暮れ家に戻るとミティシアは大きなお肉をまな板の上に調理していた。

「二人ともおかえりなさい。今料理を作ってるので少し待っていてくださいね。それとお風呂はもう沸かして置きました。二人とも先にお風呂に入ってくださいね」

「ミティシアさんありがとう」

汗まみれになった優一とティファリアはお風呂に入る準備をする。

「ティファリア、先に入ってくれるか?俺はちょっと用事があるから先に済ませてくる」

「分かりました」

ティファリアはお風呂へ入ると優一はこっそりと家の外に出る。

(さてと、もうひと頑張りしないとな)

優一は二人には内緒で鍛錬を始める。


「やっぱり身体に負荷が掛かった状態だとキツイな」

日が完全に暮れると優一は鍛錬を止め、家に入るとティファリアが丁度風呂から上がる。

「優一さん何処かに行ってたのですか?」

優一は誤魔化すように適当に言う。

「ちょっと外の空気を吸いたくてぶらぶらしてただけだよ」

「そうですか。お風呂先に頂きましたのでゆっくり入って来てください」

「分かった」

ティファリアはリビングで夕飯の支度をしているミティシアの元に行き夕飯の支度を手伝う。料理の支度が終わると同時に優一もお風呂から上がりリビングのテーブルには見た事もない料理が沢山並んでいた。

大皿に山盛りのお肉やサラダがあり各席に取り皿が置かれていた。

「優一さん料理が出来ましたので食べましょう」

三人は食卓に着くとご飯を平らげ満足する。

「俺とティファリアで食べ終わった皿を片付けるので先にお風呂入ってください」

「そうですか?それではお言葉に甘えて」

ミティシアはお風呂に向かい優一とティファリアは皿洗いをする。

「今日食べたお肉だけどアレは何のお肉なんだ?」

「この前、気の使い方を教える時に倒した魔物のお肉です」

「へ、へぇ~。魔物って食べれるんだな」

「はい」

二人は皿洗いを済ませると珈琲と紅茶を入れてソファーでくつろぐ。

ティファリアは珈琲が苦くて苦手のようだ。

特にすることもなく優一は本を読んでいるとティファリアはウトウトしていた。

優一はティファリアを抱えてティファリアとミティシアが二人で使っている寝室に連れて行こうとするとミティシアがお風呂から上がってきた。

「あら、この子寝ちゃったのね。私が部屋に連れて行きます」

ミティシアはティファリアを連れて寝室に寝かしに行った。

そういえば琴音が小さい時よくああやって寝室に連れて行ってたな。

ミティシアはティファリアを寝室に寝かせて戻ってくる。

「優一さんありがとうございます」

「いえ、いいんだ」

ミティシアは紅茶を入れてソファーに座る。

「ミティシアさんは良いお母さんだな」

「そうですか?私はあの子に親らしい事が出来ているとは思ってません・・・小さい頃から厳しい鍛錬をさせて来て、あの子は・・・本当に幸せなのか」

「悲観しなくてもいいと思う。それはミティシアさんがティファリアに自分を守るすべを教えて挙げてることであって決して悪い事ではないと思う」

「そう言って貰えると嬉しいです」

「ミティシアさんにお願いがあるんだけ良いかな?」

ミティシアは唐突な優一のお願いに首を傾げる。

「何でしょうか?」

「俺と琴音の親は、まだ琴音が幼い頃に事故で亡くなったんだ。琴音はそれから親の愛情を受けずに俺と二人で暮らして来たんだけど、まだアイツには親と触れ合う時間が必要だと俺は思うんだ・・・だからアイツが目を覚ました時は俺達の事を家族と思って接して欲しいんだ」

「私はティファリアも優一さんも琴音さんも大事な家族だと思ってますよ!だって一緒に同じ屋根の下で暮らす中ですもの」

「すまない・・・」

優一はあっさり提案に受け入れてくれるミティシアに驚くも安心した表情を浮かべる。

「私に親が務まるかは分かりませんが優一さんも私に甘えて良いですからね」

「バ、馬鹿!俺はもう大人だから甘えるか!」

顔を赤らめてタジタジに断る優一の表情を見てミティシアはクスクスと笑う。

「家族なら丁寧な話し方は辞めよう。何か他人行儀なような距離を感じるしな!」

「・・・分かったわ優一君」

ミティシアの優しい笑顔に優一は心を躍らせる。


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