詩「夜の梅雨」
有原野分
夜の梅雨
夜は三角柱だ
それらは観察することによって
更に明確になる
だから鼠は追いかける
どこまでも続く線路の上を
風を左右に切りながら
その音は
ホトトギスのように鳴いて
私は私を淘汰する
背中に感じる空気
その圧が強ければ強いほど
私はいつも悲しくなる
それは近い将来
思い出となって
私が吸い込むはずの空気になるのだから
遠くに行く自転車よ
君はまたひとつ
不可能を可能にした
瑞々しい季節に
晩柑の果汁を想像して
明日もきっと雨が降る
それはカラスの雨だ
手の甲で指示を出す高台の
前髪にその身を隠して
夜の下に
落とし穴を掘って
君の写真を忘れないように
辺りを見回す犬
走り出す飼い主
もうすぐ梅雨が明ける
詩「夜の梅雨」 有原野分 @yujiarihara
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