第3話 共闘

部下の一人からーー正確には死神からだがーー遺物のある祠の在処を聞いた時、人類最強となった時以上に興奮した。

これで、俺は英雄に近づく。

全ての人類が求めてやまない救世の英雄。

遺物を完成させたとき、世界の全てが手に入る。


歴史も力も富も全て。


何も持っていなかったあの過去を捨て、俺は、全てを手に入れる!!


「ここでいいんだな?」

目的地にたどり着いた俺は、部下に聞いた。

「はい。私には見えませんので、英雄の祠だろうと」

「そうか」

やはり、器を持つものにしか見えないんだな。

聖女の言った通りだな。

「行ってらっしゃいませ」

部下に見送られ、祠に入って行った。




「なんだここ」

祠に入った瞬間から、大量の魔物が襲ってきた。

その全てが名前持ちの魔物、さらに上位種だ。


「やはり、ここにあるのか」

これだけの魔物が生まれるだけの魔素がこの空間にはあると言うことだ。

これは、楽しみだ・・・・・!!



祠の中心地と思われる空間に着くと目の前に子供が二人いた。

一人は人間の気配ではなかったが、もう一人はどこから見ても子供だった。


ここにいるということは、英雄の器か。

「小僧、お前も英雄の器ってやつか」

「そうだけど」


それにこの気配・・・・・

「大罪能力者か。しかも複数」

「お前は?」


久しぶりの強者に心が躍るのがわかる。

「暴食だよ」




◆◆



子供を殺して、大罪能力と遺物を回収しようと攻撃を仕掛けたが、魔力の障壁で防がれた。

「なに!?」

子供から離れ目を向けた。



こちらは、生命のやりとりをしているにも関わらず、ガキは、隣にいる何かと喜び合っている。

俺は、相手にもされてないのか?

世界最強の俺が?


「お前!!何もんだ!!俺は、人類最強だぞ!!」

俺は、苛立ちを隠しきれずに叫いた。


「俺は、アルベルト。この前十一歳になった子供だ」

「そうか・・・・・・・」

舐め腐りやがって・・・・・。

ガキだろうと関係ない。

強者だけが生き残る世界だ、こいつも強者なのだろう。

だが、とりあえず・・・・・


「殺す!!」


暴食を全力使用し魔法を使えないようにした。

力じゃ負けねぇ!!


「ヒノカグツチ!!」


「は?」

俺は、信じられないものを見ている。

なんで、魔素がない空間でこんな魔法が・・・・・・!!


「なんで・・・・・・魔法が・・・・」

そんな言葉しか出なかった。


「あーっと、ほんとごめん」

憐れむような声が聞こえてきた。

こいつはどこまで・・・・・・。


「ちくしょうがっ!」

俺は、悪魔のツノで作った槍に暴食を纏わせ、その魔法を喰おうとした。

「ガァァァァ・・・・・・・!!」


パキィィィィィィィィィン!!


とうとう砕けた。

「かはっ!」

初めてこんな傷を負った。

腕が、上がらねぇ・・・・・。


「おお、すごいな・・・・」

目の前のガキは、そんな俺を見て”よくやった”と言わんばかりのセリフを吐いた。

どこでそんな、お前は一体・・・・・。


「テメェェェ!!そんな力どこで!!」

こんなガキが俺よりも・・・・・、その事実に憤った。


「そういえば、名前なんだっけ?」


そこからはよく覚えていない。名前を答えたのかも記憶にない。

気がつけば、ぶっ飛ばされていた。




◆◆




「なぁ、あんたほんとに人類最強なのか?」

これで人類最強なら、俺はなんなんだ?

アリスやセナはもちろん、もしかしたらアイナも勝てそうだ。


「ゴフッ・・・お前が化け物すぎんだよ・・・・クソが」

ベルゼは、血を吐き出しながら文句を言った。

「だが、これがお前に止められるかな」

ベルゼが敵わないことを理解したのか、軽い足取りで近づいてくる。


「暴食:グラトニー。俺を喰え」


「・・・・・は?」

なにを言った?こいつ。

俺を喰え?

そんなことしたら・・・・・・し・・・


「死ぬぞってか?」

「・・・・・!!・・・・ああ」

ベルゼは、ニヤリと笑いながら宣言した。


「お前を殺せるのなら死んでも構わん。もし、お前が勝てば俺という暴食は、お前の中で生き続ける」

「いや、まぁ、勝てそうだけど・・・・・」

「そうか。なら、英雄の、世界の頂を俺に見せてみろ」

それを最後に、ベルゼは暴食に飲み込まれた。




「あ〜、ったくやっとかよ」

気の抜けた声が聞こえた。

「うん?」

いま、ベルゼもとい暴食がしゃべったのか?


「お前か、この男をこうまでさせたのは」

「え、ああ、そうだけど・・・・・」

アルベルトは、冷や汗が止まらなかった。

勝てそう?

馬鹿を言うな、こんなやつに勝てるわけが・・・・・。


「アル坊、妾も手を出すぞ」

ラキナが戦闘態勢に入りながら隣にきた。

「二人で勝てるか?」

「わからん」

「・・・・・それほどか」

「ああ、あれは、やばいぞ。やつほどではないが、おそらく一番近いだろうな」

「ちょっと、調子に乗りすぎたな・・・・・」

「じゃな」


「おしゃべりは終わりか?」

「ああ、わざわざどうも」

「いいさ、天魔と黒龍が二人になったところで俺様には勝てねぇぞ?」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

あ、こりゃヤベェ・・・・・・。



「ほれ、構えろ」

暴食が警告する。

「なにを・・・・・・・・!!」

隣で、風が靡いた。

「がはっ!!」

ラキナが消えた。

「・・・・・・え?」


「だから言ったじゃねぇか」

いくぞ?

その声が聞こえた瞬間、全力で魔力障壁を張った。


バリィィィィィィィィィン!!!


「うそ・・・・・、ちょまっ」

全身に衝撃が走った。


ドォォォォォォォォォン・・・・・・・・。


なんだこの威力は・・・・・・。

たった一撃で、しかも障壁も全て破壊されてこんな威力って・・・・・。

足が震える。

たった一撃食らっただけで、下半身に力が入らない。

ラキナは・・・・・・。


「アル坊、生きてるか?」

どうやら無事なようだ。

「ああ、なんとか」

ラキナを見ると、同じような状態だった。


「おいおい、こんなもんじゃねぇだろ?」

暴食は追撃することなくただただ立っていた。


「アル坊。あれをやるぞ、いけるか?」

「ここでか?」

一度も完成していないものをここで?

「あれでなければ勝てんぞ?」

「・・・・・・・・・」

「いいな?」

「・・・・・・・わかった」


「打ち合わせは終わったか?」

暴食は、合流する二人をなにもせずに見ていた。

「ああ、覚悟しろよ。油断は大敵だぞ」

「お前が言うな」


・・・・・・・・・・。


「い、いくぞコラァ!!」

その時のアルベルトは、とても恥ずかしがっていた。


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