第8話 クソ勇者を、地獄へご案内!
『パレオ視点』
「お前が仲間をダンジョンで置いてきぼりにしたのは事実か?」
「グハッ!」
俺様は手を鎖で繋がれて、鞭で叩かれていた。
「もう、やめ……痛い! くっ……」
「質問に答えろ」
拷問官は、さらに強く鞭を放った。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
「さぁ、言え」
「つ、追放したんだから置いていくのは当たり前だろ?!」
「はぁーなるほど、勇者としての自覚がなかったわけだ」
勇者らしい行動ではない。
つまるところはそういうことだろう。
「仲間が魔物に殺されてなんとも思わないのか??」
「アディスが弱いのが悪い!」
「口を開けばいいわけだな」
またもや鞭で叩かれる。
何回も……何回も何回も何回も。
パチンッ!!
という鋭い音が、部屋中に響いた。
「まぁ、アディスの件については正直どうでもいい。王や民を騙すのを前提で、アディスをパーティに勧誘をしたことが罪なんだよ」
「い、いや、それは違う!」
まずい、何とかしてもそれだけは騙し通さなければ。
全力で否定する。
拷問官はニヤニヤ笑い、大声で言った。
「おい、テレアとファステルを連れてこい」
すると、俺様のパーティの二人が上半身裸でこの部屋に入ってきた。
酷い拷問をされたのか、ほぼ原形をとどめていない。
一瞬別人だと思ってしまうレベルだ。
「二人に何をした!」
「おーいテレア、パレオは何故アディスをパーティに勧誘したんだ?」
「王と民を騙して、自分の価値がある人間だと騙すためです」
「おい、テレア!!」
震えながら、テレアはそう発言した。
彼の目の光は完全に失われいる。
衝撃的だった。俺様のことを第一に考えるテレアが、口を割るなんて。
「おーい、ファステル。短剣使いのアディスを初めから殺すつもりだったって、本当か?」
「……真実です」
拷問官とそれを見ている兵士は爆笑する。
「それは、誰の案なんだ??」
「「パレオの案です」」
ファステルの目が言っている。
すまない……と。
ふざけんな……ふざけんなふざけんな、ふざけんな!!
ㅤ何故俺様がこんな目に合わなければいけないんだ!
「お前ら三人は同罪だ。通常だったら死刑にするところだが……チャンスをやろう」
「「「!!!」」」
「この中で、二人だけ助けてやる。だが……残り一人は数ヶ月間、拷問にかける」
拷問官と兵士は楽しそうだ。
酒を飲みながら、傍観している。
「これはゲームだ。ルールは、俺が合図をしたら拷問すべきだと思う奴を指させ。ハハ、簡単だろ?」
俺様は唾をのみ込む。
そしてあたりは緊張の空気に包まれる。
「せーの」
俺様はテレアを。
テレアは俺様を。
ファステルも俺様を指した。
合計俺様が二票で、俺様が拷問されることに決定した。
(まじ……?)
「ふんっ。無様だな、パレオ。歴代の勇者様のパーティと違って、お前の仲間はお前を助けるつもりはないらしい」
テレアは、俯く。
一方ファステルは口を押え泣き始める。
なんで……なんでだよ。
ㅤ勇者である俺様が、なんでこんな目に……。
拷問という名の拷問官の遊びは、その日から毎日続いた。
日によって、拷問の方法は変わる。
火責め。水攻め。
爪剥がし。
百刻み。
三角木馬。
アイアンメイデン、ヒールというサイクルを繰り替えし行われたこともあった。
そうして、あの日から……二か月が経過した。
「おい、釈放だ」
「……」
「王がお前に会いたいと言っている。ついてこい」
兵士が、そう言って俺様とその仲間を牢屋から出した。
王との久しぶりの対面。
「随分とか細くなったな、パレオ」
「……はい」
お前は相変わらず横幅がデカいな。
「腐ってもソナタは勇者だ。仲間と協力し、魔王を倒してもらうぞ」
「はい……自分の罪を、それで償うつもりです」
「ほう? いい心がけじゃないか。まぁもう遅いがな。こっちはこっちで新たな勇者の器を見つけている」
周りの兵士、執事が笑い始める。
(クソが……)
「数々の魔王の中でも、お前に倒してほしい魔王がいる」
「名は……?」
「魔王ミアリハーツ」
(……?!)
聞いたことがある。
歴史上、最強最悪な人間初の魔王。
魔王ミアリハーツ。
数年前、この世で一番栄えていた大国を消滅させた。
それに加え、過去人間を数百万人殺したとか言う噂だ。
「そやつを倒せば、この国は有名になるだろう。倒すまで、この国に帰ってくるな」
(そうか、ならばこの国を有名にさせるつもりは無い。魔王を倒した後は他の国の手柄に仕立て上げる)
「……魔王の居場所はわかりますか?」
「まったく見当もつかんな」
「わかりました。それでは行ってまいります」
ㅤ使えないやつだな。
ㅤそうして再び、パーティメンバーと共に、歩き始めた。
ㅤこの国のヤツらを見返すためには魔王を倒して他の国につく必要性がある。
ㅤまずは他の国との契約が必要だ。
ㅤ絶対に、魔王を……この手で。
ㅤそう張り切ってはいたが、街で民から睨まれ心が押しつぶされそうになった。
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