第6話 魔術を、学びたい!


ㅤそれから一週間がたった。


ㅤ基本的に毎日ミアと遊ぶ生活だ。

ㅤミアとはすごく仲良しになった。

ㅤ今ではミアが遠慮なく甘えてくる。


ㅤ木下に一緒に座った時とかも。


「アディス様ぁ、なでなでして……」


ㅤなんて言ってくる。

ㅤまったく……可愛いやつだ。


ㅤ美味しいご飯が無料で食べられて、ふかふかなベッドで寝れて、美少女と毎日遊べるなんて……。

ㅤ正直今が人生で一番幸せかもしれない――




ㅤ現在は昼。


ㅤミアは配下の幹部達と会議的なものをしているので、俺は暇になってしまった。


ㅤなにか暇は潰せないかと、図書室に訪れていた。


「うわぁ、すげぇ……」


ㅤお風呂と同じく、木や葉っぱ、水が流れていて自然感がある。

ㅤそして何よりも天井が高く、階段が張り巡らされていた。

ㅤ光はランタンで灯されており、さらに図書室自体の作りが、魔術で少しづつ変わっていっている。


(幻想的だな……)


ㅤ他の魔族も数人利用している。

ㅤ自由に本を読めるようだ。


ㅤしばらく経つと、俺は気になる本を見つけた。


「魔術教本……」

「何読んでるの?」

「うわっっっ!」


ㅤ後ろを振り向くと猫耳美少女メイドのシノンがいた。

ㅤシノンは俺の唇に人差し指を置いてきた。


「ここは図書室だから、静かにするんだ」


ㅤふわっとミアとは違ういい匂いがする


ㅤ冷静な表情と声。

ㅤ彼女のいい所はそこにあるのだろう。

ㅤミアと真反対の性格と言ってもいい。


「ご、ごめん」

「1週間ぶりだね。エロ本でも読んでるの?」

「そんなもん読んでねぇよ」

「信じられないなぁ」


ㅤそりゃあパンツを盗むやつの言葉なんか信じられねぇよな。

ㅤハッハッハ。


「そもそも、この図書室にそんなもの置いてんないだろ?」

「こんないっぱい本があるんだから、一つぐらいあるよ」


ㅤそう言いながらシノンが壁に手を置くと、緑色の波動が図書室全体に広がった。


ㅤすると本棚が動き、目の前にピンク色の本が詰まった棚が現れる。


「ほら、君の好きな本だよ」

「……別に今はいらないかなぁ」

「へぇ、じゃあ性欲が溜まったら読むんだ?」


ㅤエロとか性欲とか、そういう単語を無表情で出してくる。

ㅤ恥ずかしくないのだろうか?

ㅤ俺はそういう女の子嫌いじゃないぞ!!


「そんなことより、それどうやってやるの?」

「本棚の位置を帰る魔術のこと?」


ㅤいやそれ魔術だったんかい。


「え、でも無詠唱だったよね?」

「ここの図書室には魔法陣がはられてるから、無詠唱でも魔術を使えるんだよ」


ㅤ魔法陣?


ㅤ魔術のことをあまり知らないこの時の俺からすれば、なんのこっちゃって感じだった。


「君もできるはずだよ。読みたい本を思い浮かべて壁を触ってみて」

「わ、わかった。やってみる」


ㅤな、なんだか緊張するな。

ㅤ読みたい本は魔術の教本だ。


ㅤ壁を触りながら、魔術教本思い浮かべる。

ㅤ先程と同じように緑の波動が図書室全体に広がり、目の前の本棚が魔術教本の本棚に変わった。


「便利でしょ?」

「す、すげぇ」


ㅤめちゃくちゃ感動した。

ㅤなんていったって生まれて初めて魔術を使ったわけだからな。


「魔術教本……君は魔術に興味があるの?」

「なんていうか、魔術を自由自在に操るミアを見てたら興味が湧いちまったんだよな」

「ふーん」


ㅤなんだよ。ふーん、て。


ㅤシノンは尻尾を立てながらゆらゆら揺らしていた。


「ん、んー……」


ㅤ本棚には様々な種類の魔術教本があって、どれを選べばいいのか正直わからない。

ㅤ適当に引っ張り出して、読んでみる。


「え、これ何語??」


ㅤなんと、人間が使う言語ではなかった。


「これはエルフ語だよ、魔術教本は基本的にエルフ語で書かれてる」

「え、じゃあ魔術を学ぶためには……エルフ語から勉強しなきゃいけないの?!」

「……そうです」




ㅤというわけで、自室でエルフ語の勉強をし始めて、数十時間経過したのだが……。


「ぜっんぜん分からん!!」


ㅤというのも、人間の話す言語とかけ離れすぎているのだ。


ㅤ俺は涙目になる。


「やっぱ、俺が魔術を使えるようになるのは無理なのかな……」


ㅤ《プロビデンスの目》で自分のステータスを表示して眺める。



――――――――――――

 【アディス】


 レベル:9

ㅤHPㅤ:27

ㅤMPㅤ:20

ㅤ攻撃力:9

ㅤ魔力ㅤ:12


ㅤスキル:プロビデンスの目、二連続切り。


――――――――――――



ㅤ冷静に考えたら、レベル9の奴を勇者がパーティに入れるなんておかしいよな。


ㅤクソ勇者パレオが悪いのではない。

ㅤ騙された俺が悪いのだ。


「俺のギフトがもっと強かったら……」



――――――――――――――――――

ㅤ【プロビデンスの目】


ㅤ対象の情報を抜き取り、まとめる。

――――――――――――――――――



ㅤそこで俺は重要なことに気づいた。


ㅤ対象の……というのは、必ずしも生物のだけのことを指しているわけではないのではないか?


「おい……まさか!」


ㅤ俺はすぐさまエルフ語で書かれた魔術教本を取り出して、スキル《プロビデンスの目》を使う。


ㅤすると、なんということだろうか。

ㅤエルフ語がスラスラ読めてしまった。


「ハハ……ハハハハハハハ!ㅤよっしゃぁぁぁぁぁ!!!」


ㅤ初めて自分のギフトが《プロビデンスの目》で良かったと思えた。

ㅤいやそれにしても、まさかこのスキルにこんな能力があったとは……。



「今日は夜だし、明日の朝魔術を練習しよーっと!」


ㅤうわー、これは明日からが楽しみだ。

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