第4話 私は後悔なんてーーーー
リサに連れてこられた道をなぞる様に戻る。
部屋の前にある長い廊下の真ん中にある幅の広い階段を下り、その階段の裏に回る。
そこにはまた大きな階段があり、そこを下るーーーー
「?……!
階段を降りた先に広場があり、そこにフロスさんにヨハンさん、それにたくさんのメイドさんたちがいた。
ざわざわ
「あんな子供が?!」
「可哀想に……」
「残念ねぇ……」
メイドさんたちがざわつき始めると、ヨハンさんが、
「皆静かに!!」
怒鳴る様に言った。
「さてさて、君のメイドとしての着任式を始めましょうか」
フロスさんはにっこりと顔を笑顔にし、軽く頭を傾けた。
「お父様、アレを持ってきてください」
「持って来たぞ、フロスヴェト」
そう言うとさっきの変なおじさんが白と黒の布のような物をフロスさんに渡した。
「ありがとうございます。お父様。……おめでとう、優里」
その布のようなものをフロスさんが渡してきた。
「な、何ですか、これは」
「あなた専用の
渡されたメイド服は裾画短く、背中が空いているワンピースに、小さめのエプロン、猫耳カチューシャに、しっぽ?が付いていた。
「な、なんで猫耳にしっぽ……」
「それは単純にかわいいからさ!!」
私の質問に即答したのはあの変なおじさんだった。
「君なら似合うと思うんだ!!さあ着ろ!付けろ!私をーーーーーーーー」
「はいはい、あっちに行きましょうね」
「おいおい……そっちは斬首台ーーーー」
再びあのおじさんは連れて行かれた。
「すみません、また不快な思いをさせてしまって、
また別の服を持って来させるので少し待ってて下さい」
フロスさんに言われ、少しの間うつ向いていた。
「ありがとうございます。ナシャ
おまたせしました。優里。着任式の再開です」
私は頭を上げ、白と黒の布のような物を受け取ると、
「
「承知しました。フロスヴェト様」
一人の少女がフロスさんに近づき、礼をすると、こちらに近づいてきた。
彼女は細く鋭い目をしているが、鼻はつるんとして小さく、
唇は薄いがぷるぷるとしている。
「私の名は
海とでも呼んで下さい」
彼女は目つき通り、なんだか冷たい感じの声色だった。
しかし、どこか悲しそうでもあった。
「……私に付いてきてください。採寸します」
そう言われ、彼女に手を引っ張られた。
「……着きました。ここが服とかを採寸する場所です……」
「あ、ありがとうございます……?」
すると彼女は手で口を覆い少し下を向き笑った。
「あなた、物静かだけど面白いのね、名前は?」
「あ、わ、私は、
「……高野か……若そうに見えるけど、何歳なの?」
「じ、14です……」
「14!!随分と若いのね……私なんか今年で34なのに……」
「さ、34!!そんなには見えないですよ……」
「ありがとう優里さん、若い子にそう言われると嬉しいよ
さあさあ、腕を横にしてーーーー」
こんな感じの和やかな会話をしていると、いつの間にか
服の採寸が終わっていた。
「よし、これでいいかな、あとは切ったり縫うだけだから2日ほどあればできるから気長に待ってて」
そう海さんは言って部屋の奥に行った。
採寸部屋を出ると3人の背の高いメイドさんたちが私を囲んだ。
3人の目はまるで小さな弱い獲物を狩るトラのような目つきをしていた。
「あなたが新入りちゃんね……私はローズ・メロディテこれからよろしく」
彼女は見下すように腕を組んだ。
「私はマルコ・メロディテ、よろしくですはぁ、おチビさん」
彼女は髪を手でさらっとなびかせた。
「私はフロディーナ・メロディテだ。よろしく、赤い目の少女。君の名は何と言う?」
彼女は……他の2人よりも断然しっかりとしている。とても
礼儀があるように見え、手を差し伸べ握手をしようとするぐらいだ。
「ちょっとフロディーナ!!裏切るつもり?!」
「けれどローズよ、気の弱そうな少女にあれは可哀想ではないか?」
「けどけど……この子甘えられるところを想像してみてよ」
「……んんッ、けしからん!ローズ!そ、そんな事に屈するなど、め、メロディテ家の恥だぞ!」
「お、お姉ちゃん、見栄張ってるのバレバレだよぅ……」
「マルコは黙ってて!」
「は、はいぃ……」
(何だこの劇は)、と思いながら見させたれてるこの喧嘩を、
「あ、あの、け、喧嘩は、やめたほうがいいですよ……」
とデクレッシェンドの様に声をだんだんと小さくしていきながらも、止めようとしたが。
「くッ……なんと!……ローズ!マルコ!彼女には悪い態度を取ったんだ。謝りたまえ」
「ご、ごめんね……えっと……」
「あ、高野 優里です……」
「あ、優里ちゃん」
「なに謝ってんのよマルコ!!」
フロディーナさんに抗う素振りも見せず言われるがままに従ったマルコさんにローズが怒る。
「早く、ローズも謝りたまえ、君の妹も謝ったんだ」
「それはこいつが勝手に!……ご、ごめんね優里……ちゃん」
「私も謝罪しよう。妹たちが君に傲慢な態度を取ってしまい、申し訳ない」
「え、妹たちって……わたしもぉ……?」
「フロディーナ、あんたも人のこと言えないでしょ……たく」
彼女たちは軽く喧嘩をしながらも私に謝ってきた。
「で、……えっと、……あ!優里ちゃん!、優里ちゃんは
今年で何歳になるの?」
「あ、14です……先月誕生日で……」
「14!!若!若メイドどころじゃないよ!幼メイドだよ!」
「14……あぁ……尊い」
「あ、ああ、お、お姉ちゃん鼻血ーーーー」
こんな感じのカオスな三姉妹と話しをしながら広場の方へ行き、幅の広い階段を登り、すぐ左側にある木のテーブルとイスが沢山置かれた開けた空間に行った。
「色々と話してるとお腹すいたね、優里ちゃん」
「そ、そうですね」
「少しここで食事を摂ろうか」
「……あ、あのここって」
「こ、ここは……えっと、き、貴族の方々に遣える人たちの食事のするところだよぅ……」
「そうなんですね……」
要するに食堂のようだ。ここでメロディテ三姉妹と食事をするのか……と嫌な感じを察しながらも彼女たちについていく。
「……高野さん、隣失礼」
「ッ!フロディーナ!!何勝手に隣座ってッ……」
「これは早いもの勝ちだ、それに、これ以上彼女に失礼なところを見せないようにしろ」
「なに言ってッ……でかケツのくせに」
「…………ッ!しーーしーー……」
マルコさんが人差し指を口に当てた。
「なんだと!!この胸なし品なし心なし!!3なし女!」
???「誰が3なしだって?もう一度言ってみろフロディーナ」
フロディーナさんの後ろから大人びた女性のような声が聞こえてきた。
振り向くと背が高く、色々とデカい女性がフロディーナさんの方へ近づいてきていた。
「ああ、もう一度言ってやろう!!胸なし品なし心な……」
フロディーナさんが声のする方へ顔を向けると、
色々とデカい女性と目が合ったのか、固まってしまった。
「ん?何だ?最後まで聞こえなかったぞ?」
「え、あ、いや、その……」
「胸なし、品なし、あと1つは何だ?」
「あ、も、申し訳ございません!!
「フンッ……最初から謝罪するような事を言うな。何度言ったら分かる」
いちばんまともだと思っていたフロディーナさんが、いちばん幼稚だった事に驚きが隠せない。
「フンッ!ざまあないーーーー」
「えっと、デカ……なんだっけ、ローズ」
「ギクッ……も、申し訳ございません」
「お前は揚げ足を取ろうとするな」
ナシャと言う女性を前に、二人は撃沈した。
「マルコ、お前も二人を止めれるように気をしっかり持て」
「は、はぃ……」
ナシャがこちらへ近づいてくる。
「すまない、こいつらの変なところを見せてしまって……そうだ、自己紹介を忘れていた。
わたくしはナシャ・ヴァルシーラ、メイドの総管理者だ。
一瞬だったが私の事を覚えているかい?」
着任式のとき、フロスさんが呼んでいたのを思い出した。
「あ、あの、メイド服の布を持ってきてくれた人……」
「そうそう!覚えていてくれてわたくしも嬉しく思う」
そう言うとナシャさんは、突然周りを見渡し始め、何かに警戒する様にしゃがみ、小声で
「君は高野 彩夏と言う名の身内はいないか?」
「あ、います……私の姉です……」
「ッ!…………そうか……それは残念だったな。
わたくしは用事があるので失礼するよ。
メロディテ三姉妹!くれぐれもだ」
彼女はそう言い残し去っていった。
「あ、あの……残念だったなって……どう言う意味ですか?」
一番の疑問を三姉妹に聞く。
「それは……その……あれだよ」
「そう、あれだ」
「う、うん、行方不明になったんだよ……」
行方不明と言う言葉に聞き覚えがあった。ここに来る前、
どこかへ失踪した。
画面の所々砂嵐が流れて、音が割れて聞こえる古く、四角く分厚いテレビに流れたニュースで姉の名前が出て
“行方不明になった”とアナウンサーが言っていた。
「行方不明ってどう言う事ですか?!」
「そのままの意味だ。……彼女はこの屋敷から失踪した」
「……いつ行方不明になった後ですか?」
「優里ちゃんが来る2日前よ……てかもうこんな話やめにしましょ」
私がここに来る2日前…………あのログハウスにいた頃?!
私はその次の日に空港に行って一日かけて飛行機でこの国に来て、その次の日に、空港からこの家の大きな車で一日かけてこの屋敷まで来て、やっと今日着いて、
リサさんやおじさん、三姉妹に海さん、ナシャさんと会って
今ここにいる。完全にきれいにすれ違った気分だ。
けれど絶対にすれ違っている訳ではない。
もしかしたら姉は大日国には行っておらずこの国のどこかにいるのかもしれない。けどそれはあくまでも予想。
行方不明だから姉の居場所は分からない。
「へ、変なこと聞いてすみません。メロディテ三姉妹さん」
「さッ!三姉妹!!」
「お、お姉ちゃん?!」
「ああぁ!尊い……」
「気持ち悪い事言わないでよ」
「気持ち悪いとはなんだーーーー」
また始まったか、と思いながら、姉の事を考え、それと同時に、食事をしに来たのを思い出す。
「あ、あの……お腹空いてきたのでなにか食べませんか?」
「あ、そうだったな、失敬、食事しに来たのを忘れていた」
「そうだ!優里ちゃんはどんな食べ物が好き?ここにはいっぱいお店があるから一緒に見て周ろっか」
そう言ってローズさんについていき、食堂にあるお店を一通り見てみた。
「いちにのさんはい!マクダァナルダにサイゼリア〜ケントッキープライドチキン!なか尾にスゴキヤドメノにピッゾいろんなお店がありますよ?」
ローズさんがミュージカルの様に食堂にあるお店を歌で教えてくれた。
彼女の歌唱力は遊び?で歌ったのにも関わらず侮れないぐらいで、これには自然と拍手をしていたほどだ。
パチパチパチパチ
「う、歌っただけなのに拍手されると照れるよ……//」
私の昼ごはんはマクダナルダに、
ローズさんはドメノピッゾ、マルコさんとフロディーナさんはなか尾にした。
二人は昼食中にも会ったときの様に仲睦まじく口喧嘩をしていた。それを見ているマルコちゃんを目が合いにっこりと微笑む。何だかここは悪いところではなさそうな気がする。
優しい人や面白い人、変な人が沢山いるけど、ここから出たい、逃げたいなんて、ここに来て1度も思わなかった。
むしろ楽しいと思った。
けれど私の姉と思われる人は、ここから出ていったのは事実
何かがあったに違いない。
食事を終え、三姉妹と別れたあと、この屋敷にいるメイドさんや側近さんたちに挨拶をして周り、日が沈んだ頃に自分の部屋に戻った。
部屋にある本棚に軽く目を通すーーーー
上から3段目に薄いノートが2冊挟まっていた。1冊はライ・ロストアークと言う人のノートで、もう1冊は白紙の新品のノートだった。ライさんのノートは一言日記の様に使っていた。
私はそのノートを見て、新品のノートに自分も一言日記を書くことにした。
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