―23― 混乱
僕はどうやら女になってしまったらしい。
もう少しつけ加えると、クローセルの魂を降霊させた影響で僕の肉体が変化してしまったらしい。
完全にクローセルの姿になったわけではなく、クローセルと僕の姿を足して2で割った感じ。
その証拠に、クローセルの天使の翼や天使の輪がなかった。
とはいえ大きく膨らんだ胸や長い髪を見るに、クローセルの影響のほうが大きいのかな。
それに服装も女物の服になっていた。
確かこの服、クローセルが普段来ている服に似ているな。白いレースがたくさんついたまさに天使が着ていそうな服である。
『ノーマン様申し訳ございません。わたくしのせいで大変なご迷惑をかけてしまって……。わたくし、ホント駄目駄目ですね……。主にだけではなくノーマン様にも迷惑かけるなんて。わたくしはどんな罰でも受け入れます。ですので、ノーマン様、ぜひ駄目なわたくしを罰してください』
うわぁああああああ、うるさい、うるさい、うるさい!
クローセルがさっきから僕の中でブツブツと独り言を始めた。
しかも、前のときのようにダウナーな感じでくるので、こっちまでダウナーになってしまいそうだ。
『クローセル! 僕は全然気にしてないから! ともかく落ち着いて、元に戻る方法を2人で考えよう!』
僕はそう言って、なんとかクロセルを落ち着かせようと必死になだめる。
『ノーマン様……本当に怒っていらっしゃらないのですか?』
『うん、全然怒っていないし。てか、原因は僕にあると思うから!』
十中八九、こんなことになったのは僕の降霊術が原因だ。
クローセルはなにも悪くない。
『ノーマン様ッッ! わたくしを庇ってくれるなんて、なんてお優しいんでしょう!』
クローセルは感激しきった声でそう言った。
ひとまずクローセルは落ち着いてくれたらしい。
1つ問題が解決した。
「マスタぁああああああ! マスタぁああああああ! どこへ行ってしまったのですかぁああああ! わたくしを置いてどこかへいかないでくださぁああああああい!」
あとは部屋で叫んでいるオロバスだ。
オロバスは僕がいなくなったと勘違いして、さっきからこんなふうに叫んでいた。
「オロバス、それ以上うるさいと退去させるぞ」
僕は魔導書『ゲーティア』を片手にそう言った。
「え? マスターですか?」
オロバスはポツリとそう言った。
今ので、僕がマスターだとわかるのかよ……。
「ほ、本当にあなたがマスターですか……?」
なおも疑っているようだ。
「信じないなら退去させる」
「マスタァアアアアア、申し訳ございません! 退去は嫌です! ま、まさかわたくし、マスターが女の姿になっているとは思いもよらなくて疑ってしまいました! ですが退去は嫌です! 信じるので退去だけはどうかお許しをッ!」
オロバスがとにかく退去が嫌なことが心から伝わってくる謝罪だった。
「まぁ、信じるなら退去はさせないけどさ……」
「な、なんて寛大な心を持ちなんでしょうかマスターは。わたくし、思わずマスターを尊敬な眼差しで眺めてしまいます!」
オロバスの太鼓持ちな態度。聞き飽きたせいか、実は退去されたくないがためにしている演技なんじゃないかと疑わしくなってきたな……。まぁ、いいんだけどさ。
ともかくこれでもう一つの問題も解決した。
これでやっと、どうやって元に戻るかについて悩める。
「ねぇ、お兄ちゃん。降霊術のほうは順調ー? 様子見に来たわよ」
なんと、もう一つ新たな問題が発生した。
突然、妹が家にやってきたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます