第11話 貫け、必殺の一撃
迎撃の動きを見せた俺達に、第一陣目の大鷲蜂の攻撃が迫る!
推定、数百匹の群れが、一塊となって襲いかかってきた!
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
雄叫びと共にイスコットさんが愛用の戦斧を振り回す!
吹き荒れる斬撃の暴風に巻き込まれた大鷲蜂達が、次々に切り裂かれ、打ち砕かれていく!
「まだまだぁ!
イスコットさんのキーワードに反応して、その手にする戦斧の刃から炎が発生した!
斬撃と打撃に炎が加わり、荒れ狂う様はさながら炎の竜巻!
果敢に攻め来る哀れな大鷲蜂に、死と破壊を撒き散らしながら、イスコットさんは突き進んで行っていった!
◆
マーシリーケさんの方に目を向ければ、彼女は大鷲蜂以上の速度で移動して蜂達を翻弄している。
常に移動を繰り返し、突然の方向転換で追いすがる蜂の群れに突っ込んでは、戸惑う蜂を打ち砕いていく!
それに、ふと気がつけば、マーシリーケさんの手甲や脚甲からは、光る爪のような刃が出たり引っ込んだりしている!
おそらく、あれが彼女専用の防具に付与された能力なんだろう。
イスコットさんの戦斧から炎が噴き出すように、マーシリーケさんの防具からは刃が自在に現れる仕掛けになっているみたいだ。
自在に刃を纏い、蜂の群れを舞うように手玉に取る彼女は、ある種の美しさを放ちながら追い縋る蜂達を裂き落として行った!
◆
よーし、俺も負けてはいられないぞ!
迫る蜂どもを相手に拳を握り締めると、装着していた手甲の一部が伸びてナックルガードに変形した!
これが、俺の装備に仕組まれたギミック!
自在に形を変えることで、拳を保護しつつ投げに移行する時に掴みを阻害しない、地味ではあるけど便利な仕様!
よっしゃ、行くぜ!
マンガ知識の、なんちゃって拳法シリーズ!
「双拳密如雨、脆快一掛鞭」のキャッチフレーズでお馴染み(?)の『
降り注ぐ雨の如く、弾ける爆竹の様に左右の拳による連打を主体とするこの拳法、言ってしまえば具現化した背後霊使い達がバトルする某漫画の主人公の如し!
思わず「オラオラオラオラ!」と叫びつつ、目にも止まらぬ速さで繰り出される双拳の連続攻撃は、あっという間に迎撃された蜂の山を築いていく!
「テメーは俺を怒らせた」
テンションが上がり、独特の立ちポーズで決め台詞を吐く俺を、(なにやってんだろう……)と言った目で皆が見ていたが、敢えて無視しよう。
◆
大鷲蜂の襲撃、第一陣が全滅したのは時間にすればほんの数分。
数百匹の蜂だった残骸が散らばり、あるいは山を作っていた。
だが……。
「まずいな……」
圧倒的な強さの差を示したにも関わらず、イスコットさんは苦々しい感じで言葉を漏らす。
その意味は、俺にも解る。
なぜなら、上に目を向ければ数百匹を倒したというのに、空に広がる蜂の群れは減ったようには見えない。
むしろ、徐々に増えていってる様にも見えた。
もしかしたら、先程の
とにかく、このままじゃ退路を作る前に、数で押し潰されてしまう。
くそっ、何か方法は……。
『雑魚を相手取るより、統率する頭を潰す方が効果的じゃないかの』
またも、あの謎の声が頭に響く!
誰なんだ、お前は!
『ワシの事は後で語ろう。いまは、ヌシらが生き延びる方法を考えよ』
むぅ……気にはなるが、ストッパーを外して大鷲蜂と戦えるようになったのは、この声の主のお陰だ。
少なくとも、敵ではあるまい。
それにしても……統率する頭をってつまり、女帝母蜂を潰すって事か?
下からみ上げれば、闇夜にそびえ立つ小山の様なそのシルエット。
正直言って、正攻法では勝てる気がしない。
というか、勝つ方法が思い付かない。
仮に、俺達三人で一斉に襲いかかっても、ちょっとしたダメージを与えたくらいで、全滅する未来しか見えないんだよな……。
くそっ!これがゲームだったら、側面からのRPGで頭を吹っ飛ばしてやるのにっ!
『……まぁ、仕止める方法はそんな感じで良いのではないか』
(え?側面からRPGを?)
『この世界に、そんなものがある訳ないじゃろ!』
なぜか怒られた……そんな感じって、同意したくせに……。
『ワシが言っておるのは、女帝母蜂の頭を吹っ飛ばすという事じゃよ!』
ああ、そっちか……って、ちょっと待てよ!
簡単にいうけど、あの高さまで届く攻撃が、無いんだっつーの!
『確かに、このままでは埒が開くまい。とりあえず、ワシの策を聞いてみよ。ささ、他の二人も呼べい』
謎の声の言う通り、確かにこのままでは埒が開かない。
嫌な予感はするものの、とにかく作戦だけでも聞いてみるか……。
そう判断した俺は、イスコットさんとマーシリーケさんを呼び、その作戦とやらに耳を傾けた。
どうやら謎の声は俺だけに聞こえていたようで、二人に対して伝言ゲームの要領で作戦を伝える。
何処の誰が語っているのかは謎だが、現状を変える一手になるならと判断したらしく、二人はすぐに受け入れてくれた。
魔法とかある世界の人は、不思議な出来事に対して順応性が高いな。
『さて、ワシの提案する策だが……』
声の立てた作戦を聞いて、俺達は呆気にとられる。
しかし、他に良策があるわけでもなく……結局、謎の声の作戦を採用する運びになった。
作戦とは言っても、やること自体はいたってシンプルで、俺達三人が力を合わせての一点突破するというもの。
ただし、タイミングはかなりシビアで一発勝負と言う、一か八かのギャンブル的な方法である。
こんな状況でなければ、却下したい作戦ではあるが、すでに大鷲蜂の攻撃の第二陣が行動に移ろうとしている気配があるため、に迷ってる暇はない。
仕方なく、俺達は即座に配置に着いて、同時に『
『よいか、狙うは女帝母蜂の頭部。ワシがザコ蜂どもを撹乱してやるから、キッチリ頭を潰すのじゃ』
「よし!来い、マーシリーケ!」
イスコットさんが愛用の戦斧を背中に担ぎ、バレーボールのレシーブのように両手を構えて腰を落とす。
そのイスコットさんに向かって、マーシリーケさんが走り出した!
一気に加速してイスコットさんに迫ると、その体を駆け上る勢いで彼が構えた両手に足を掛ける!
次の瞬間、加速の勢いも利用して、イスコットさんがマーシリーケさんを上空へと打ち上げた!
『限定解除』の超パワーで打ち上げられたマーシリーケさんは、あっという間にはるか上空へ!
そのまま、大鷲蜂の群れに突っ込んだが、謎の声の言うとおり、何か混乱していた蜂達は、突っ込んで来るマーシリーケさんをスルーしていた。
「よし、次はカズナリ!」
「はい!」
元気よく返事をして、俺もイスコットさんに向かって走り出す!
先程のマーシリーケさんと同様に、片足が彼の手に乗った瞬間、勢いを利用して俺を上空に打ち上げた!
ぐんぐん上昇していく、俺の肉体!
『打ち上げ花火って、こんな感じなのかのぅ……』
ちょっとだけ不吉な事を言う謎の声をあえて無視し、勢いのままに、いまだ混乱する蜂の群れを抜けてさらに上へ!
上昇していく俺の視界に、先に打ち上げられたマーシリーケさんの姿が入った!
「カズナリ!」
すでに落下してきている彼女に向かっていく俺は、体を半回転させて足を向ける!
そうして、下に向けていた彼女の足と、上昇していく俺の足が空中でドッキングして溜めを作る!
「いっけえぇぇぇぇぇぇっ!!」
気合いと共に蹴り出された俺は、眼下にあった巨大な女帝母蜂に向かって加速していった!
マーシリーケさんをカタパルトにして、『限定解除』の効果も加えた俺の体は、亜音速に迫るすさまじい勢いで、女帝母蜂に向かう!
とんでもない風圧を受けながらも、俺は再び体を半回転させ、蹴りの体勢をとって狙いを定めた!
「ライ〇アァァァァァ!キイィィッックゥゥゥッッ!!!」
某特撮ヒーローばりに必殺キックを叫びながら、俺は夜を切り裂く流星となって、女帝母蜂の頭部に着弾した!
堅い外骨格が、砕ける感触があった!
次いで、柔らかい頭の中をえぐる感触が伝わってくる!
その中を突き進み、またも堅い害骨格を破壊して、俺は再び外気に触れる!
狙い通り、頭部に風穴を開けられた女帝母蜂!
しかし、破壊の余波はそれだけに止まらず、ぽっかり口を開けた風穴を中心として亀裂が走り、女帝母蜂の頭部を爆発、四散させた!
断末魔の声すら上げる事が出来ず、頭部を失った女帝母蜂の体は、噴水のように体液を撒き散らしながらゆっくりと崩れ落ちる!
地響きを立ててその巨体が倒れるのと、勢い余った俺が地面に激突したのは、ほぼ同時であった。
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