転生してないけどハンターになった件

第1話

 20XX年、 日本。

世界は大きく変わってしまった...。


 君達は知っているだろうか。

異世界転生系アニメやRPGゲームでよく見る、『魔獣』の事を。ヲタク文化が様々な人の生活に違和感なく存在し始めてから、耳にした事のある人も多いのではないだろうか。

昔ながら日本に存在している猫や犬、更に大型の動物でライオンやワニなど...。人間に害をきたす事もあり、最悪の場合死に至る。そんな危険な動物たちとは比にならない、魔獣モンスターだ。口から火を吐くだの魔法で攻撃してくるだの、

非現実的な特徴をもつ魔獣。倒す方法は現実には見た事の無いような馬鹿でかいつるぎだとか、現実に起こすのは不可能な魔法やら...。日本は愚か、この地球では到底成功しないだろう。この地球上で倒すならどうするか?


無理だというのが俺の考えだ。魔法だって、聖剣だってこの世には存在しない。

雑魚な魔獣モンスターは銃で倒せるとして、ドラゴンとか巨大骸骨スケルトンとかどうやって倒すんだ?軍兵器か?ミサイルか?


 まぁそもそも日本には存在しないけど...?


 とか思った人も大勢居るだろう。まぁ、そんなファンタジックな魔獣なんて日本には存在しなかった。

数年前まではな...。


 数年前、ニュースを見ていた。ニュース速報でそれが流れた時、

「紛らわしいドラマだな...ゴ○ラの新作か ... ? 」なんて、抜かした事考えてた。しかし、それは事実ノンフィクションだった。


そして社畜歴5年、守る子供も恋人もいないヘタレな中年おっさんの奮闘記が...始まる。




 俺は現在27歳。19の時に就職に失敗して、21までの2年間は親の脛齧すねかじりニート。22の時に親に家を追い出され、それからはハローワーク通いだった。

再び就職活動。

まともな会社は、低学歴でおっさんになりつつある俺を採用してくれる訳無かった。そのお陰で何も知らない俺はこのブラック企業に務めてしまったって訳だ。


今日も残業、残業。後輩の作った資料チェックをし、任されたプロジェクトの計画を進め、さらにはサボりたい部長に仕事を押し付けられ...もう散々だ。仕事の量が尋常じんじょうじゃない。

...もう3日も家に帰ってない...。まぁ、俺の家には俺の帰りを待ってくれている人など居ないがな。

あー...飯どうしよう。今日昼飯食ってねぇ...でも飯食ってたらこの仕事今日中に終わんねぇし...俺死ぬかもな。まじで。パソコンに向かいすぎて目と心が痛い。あぁー癒しが欲しい。早く家に帰りたい。なんなら土に還りたい。俺はあの時...何を考えてこの会社に就職したんだろうか。


「 ごめん橋本はしもと...

俺 寝るわ...10分立ったら起こして... 」

「 あぁ、お疲れ。頑張れよ村田むらた...」

クソ、1人潰れたぞ...。俺だって寝たいわ。

...いや、あいつ7日ぐらい家に帰ってなかったっけ...可哀想な奴。

......永眠しようかな。この会社潰れればいいのに。そもそもなんで俺は社畜なんだ?

たまに様子見にくる営業部とかまじで暇そうじゃねぇか。めちゃくちゃ肌ツヤツヤだったぞあいつ。なんか「今僕幸せです」みたいな顔してたな。そういう奴を憎み始めた俺は悪魔か?「営業部の新入社員はー...」 じゃねぇよ。営業部に新入社員入れてるんだったら新事業企画部こっちにも入れろよ。

...あー...外が明るくなり始めた...わー日の出だぞ日の出ー(棒)

真面目に人事部に苦情入れようかな。こっちにも新入社員増やせーつって。


 ...10分立った。...12分だけど。そろそろ村田を起こさねぇと行けないな...。

「...おーい村田ぁー...起きろー...」

.........呼び掛けだけじゃ起きねぇな。できればパソコンから手を離したくないんだが。

「...吉田よしだ。」

「はい ! なんですか?先輩 」

「村田を起こせるか?」

「あ ... やります。」

...後輩を持つのはいい事だな。好き勝手使えるぞ。多分。

「せんぱーい...」

「あ?どうした?中西なかにし

「もう...無理です...先輩...この企画書...任せます...すいません...」

「はぁ?お前がやれ...よ.......おい。おい ! 」

前言撤回。先輩は頼られる存在だ。2人も潰れた。凄い、傍から見れば死んでるわ。

「橋本先輩... ! 」

「なんだ?」

「村田先輩が起きません...」

「...チッ... 」

「アッッッ...オコシマス...」

宜しい。


 駄目だなこれ。このオフィス戦場だ。でも頑張れ俺。中西の企画書終わったら3日ぶりに家に帰れるんだぞ。俺の愛しのル○バが待ってる。喋らんけど。家に帰ったらまずは睡眠だ。そろそろ睡眠時間足りなくて死ぬ。でも晩飯も食わねぇと餓死する。うわぁ。

...この『個人の意見』は中西にしか書けないからいいだろ。

...やり忘れてる仕事はないよな?企画書、中西の企画書、予算管理表...。

...おぉ、終わった...!自由だ...自由だ...!!

「おっはよ~みんなお疲れちゃ~ん!」

只今朝の8時。俺が小さな幸せを

噛み締めている時にクソ部長が呑気にご出社。

「おはようございます...」

「おはよう...ございます」

まばらに聞こえる挨拶の声。聞こえる全ての声色は疲れていた。

「おぉ、高橋くん頑張ってるか?」

うわ、絡みに来やがった。というかそろそろ名前覚えろよ。俺橋本だぞ。

...仕事を押し付けられなければ良いが。

「まぁ...ボチボチです...」

「早速なんだけど...」

...うわ、やっぱりか。フラグ回収しちまったよ。

「部長、帰ります。」

「え?」

「帰ります。俺、疲れました。」

「あぁそう。お疲れちゃ~ん」

時には上司に反抗しないと死んじまう。これは正当防衛だ。

「...あれ、橋本帰んのか?」

「うん。もう帰るわ。疲れた。」

「お疲れ~...俺はまだ...帰れなさそうだな...」

村田のデスクに積み上げられた分厚いファイル。

「...頑張れよ村田。せめて死ぬな。」

「フラグ立てんのやめろや...。」

あいつは見た目の割には高学歴なのになんでこの会社に就職したんだろうか。

まぁ、あの性格じゃ分からなくもない気がするが 。


 俺の家は会社から駅まで歩いて7分、駅から家の最寄り駅まで電車で5分、そっから歩いて2分の所にあるマンションだ。決して広くはない1K。

祖母が就職祝いに買ってくれたルン○が部屋の埃という埃を吸い終わって充電器に鎮座している。

「...ただいま...。」

誰もいない部屋に向かって帰ったという合図を送る。当然返事は帰ってこない。というか帰ってきたら怖い。ホラーだ。部屋の明かりを付けると、4日前と全く変わっていない部屋が現れる。掃除する暇もないから床以外は散らかっている。

...まだ、空になっているカップ麺の容器が放置されている。パンツと靴下が干されたままだ。まずは寝ようと思ったが何日か着替えてないからなんだか汗臭い。最後の体力を振り絞ってまずは風呂に入ろう。


心做こころなしか空気清浄機のセンサーが赤くなった。



 久しぶりに入った風呂はやっぱり気持ちいいものだ...。何回か湯船で寝落ちして溺れかけたのは笑い事じゃない。危ない、本当に。現在8時52分。夜勤で出社は午後6時だから上司から電話が無い限りは9時間休憩ができる。まずは睡眠だ。寝なさ過ぎて気分が悪い。寝よう。せめて5時間は。



...........なんだ?携帯が鳴ってる。

...上司からじゃないよな?はは...

......母さんだ...。

「...もしもし...」

《もしもし?!祐樹ゆうき、あんた大丈夫?!》

「大丈夫だけど...なんで...?」

《今にも死にそうな声してるじゃない!何かあったの?お母さん心配...。》

「...大丈夫じゃない...」

《え?》

「大丈夫じゃないんだって...」

《ほら!やっぱり何かあったんじゃない?!》

「...勤めた会社がブラックだった。」

《え?!祐樹今あそこに勤めて何年よ?》

「...5年。」

《なんで早く言わないのよ...!》

「なんでって...」

《辞めなさい!そんな会社...!》

「辞めようにも...」

《何があるの?》

「...他の会社が雇ってくれると思うか?」

《.........思わないわね...。》

いや思わねぇのかよ。

「...まぁ、考える...。」

《考えるって...とにかk 》

ブチッ

...母さんには悪いが...寝たいんだよ...今...何時だ?

...............午後2時。

..............................どちらにしろ起きないとな...。


 飯を食べないと死ぬ。作る気力も無いからカップ麺とサラダを帰りに買ってきた。

寝れたから体力は回復している。でも会社に行く気力と体力を取っておかないと...こんな食生活を続けていると、将来死んでも死体が腐らなそうで怖い。とある国で大地震があった時、日本人観光客の死体だけ腐らなかったみたいだからな。日本は添加物大国らしい。


 滅多に出入りしないキッチンに生きるための湯を沸かしに行く。沸かしている間に飲みかけのペットボトルやら脱ぎ捨てられた部屋着やらを片付ける。空気清浄機があるから臭くはない。はず。毎日フル稼働してくれている空気清浄機のフィルターも掃除しないとな。きっと大変な事になってるだろうよ。


のこり3時間と30分の間で飯と掃除を済ませないといけない。簡単なように思えるだろうがお前らの想像を絶する汚さだ。ゴミ屋敷とまでは行かないが相当...。この中で俺が死んでても誰も気付かないままな気がする。


 一人でカップ麺をすするのはこんなに寂しかっただろうか。床を○ンバが掃除してくれるから床にはなにもゴミはない。その分、机やベットに高々と積み上げられている。家政婦を雇いたい気分だ。そのまま一緒に食卓を囲む関係になりたい。あの某ドラマみたいに。


飯を食い終わってゆっくりしている場合ではない。積み上げられたこのゴミ達を片付けなければ。そのままポイポイとゴミ袋に突っ込みたいが、地球の未来のためだ。ちゃんと分別しよう。ペットボトルはラベルとキャップとボトル。コンビニ弁当は洗って乾燥させてプラごみ。カップ麺の容器もきちんと分別。洋服は色移りしそうなもの以外はまとめて洗濯した。これだけでも大分部屋は片付いた方だろう。今片付けたので出た埃を感知して空気清浄機が仕事をしてくれる。便利。

俺がこの家に住み始めてからカーテンを開けたことがあっただろうか。今の会社に勤めて、1週間後から仕事だったからその間に引越しして、家具やら何やらを付けて...。こっちに来て4日であの会社の闇を知って帰れなくなった。帰って1時間で出勤生活を何回か繰り返したお陰でカーテンを開けて換気をしたことが無い。空気清浄機があるとはいえ、太陽の光を浴びながら換気するのとは全然違う気持ちよさだ。今日は上司から怒涛の電話もないし、もう少し綺麗に出来そう...

.........よし、携帯の音は鳴ってない。


 掃除に換気は必要不可欠だ。かと言って掃除の初めから窓を開け放していれば掃除の意味はない。入ってきた風のせいで埃が舞いうせいだ。

換気は最後。これが掃除の鉄則...らしい。どうしても最初に換気がしたいなら換気を数分してから窓を閉め、掃除をするのがいいらしい。

...某テレビで見た。


 家に帰ってきた時とは全然違う、他人の部屋のように綺麗になった。俺は掃除が好きなのかもしれない。


...にしても今日は本当に電話がないな...。こんなに長く休みが取れたのは初めてだ。


なんだか嫌な予感しかしない。

『休んだんだからこれぐらいできるよな?』って言われるような気がする。部長あいつの事だ。


...本当に連絡こないな?まぁ、出社まであと30分だし...取り敢えず連絡するか?




《おかけになった電話番号は現在電波の届かない所にあるか、電源が入っていません》


...おかしいな。村田には悪いが、怖いから電話するか...


《おかけになった電話番号は現在電波の届かない所にあるか、電源が入っていません》


...とうとうあいつ死んだのか?ただ単に充電が切れただけなのか? まぁ...偶然...なのか...


《おかけになった電話番号は ──────》


出ねぇ...


《おかけになった電話番号は──────》


みんな何やってんだ...?


《おかけになった電話番号は──────》

《おかけになった電話番号は──────》

《おかけになった電話番号は──────》

《おかけになった電話番号は──────》

《おかけになった電話番号は──────》

《おかけになった電話番号は──────》



...畜生 , 吉田とか中西とか...宮原とか丸山とか...誰も出ねぇじゃねぇか...!! どうなってんだ...???

タカヤハラうちの会社のコールセンターも出ないぞ...?俺の携帯がおかしいのか?地震があったとか...?でもこっちは揺れなかったよな...携帯も鳴らなかったし...外の状況はどうだ...?そうだ、ニュース...!


《ニュース速報です》


やっぱり...地震かなんかか...?事故?


《東京都の上空に謎の亀裂が現れました。》


は?亀裂?


《亀裂からは , 未確認生物が次から次へと出てきています。》


...はは...未確認生物...?俺は信じてないからな...未確認生物なんか...

紛らわしいドラマだな...ゴ○ラの新作か...?中々クオリティも高いんじゃないか?この...巨大トカゲみたいな...ゴリラとクジラの次はトカゲか...??はは‪w連ドラかなぁ...面白そうだな...?

...............これって本当なのか?うちの会社周辺に現れてるじゃないか...ま、まぁ...リアルだな...風景を忠実に再現してる...し...。

第一、これはなんて言うドラマなんだ...???

...ニュース?うちのテレビも壊れたのか...?どう見ても...ドラマじゃないか...?フィクションの...番組表が...おかしい?ってかこんな時間にドラマやるか...?

.........いや、深く考えるな...

...?!?!?!?! う , うちの会社のビルが潰れたぞ ... ?!物理的に...。なんだ?この巨大トカゲは...


............もしかして... ?まぁ...信じ難いし...


《周辺にお住まいの方は直ちに避難してください》


...まじ...なのか...?!窓はさっき閉めた...し...み、見ないと...わ、分からない...よな...??


 カーテンを恐る恐る開けた俺は、自分の想像を絶する光景を見てしまった。


「 な っ ... ?!?!?! 」


声も出ない程に驚いた。


そう ... 俺の 視線の 先には ...


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