御子柴くんは今日も私に脅される。~家政夫を雇ったら、来たのはクラスで一番のイケメンでした~

あゆう

第1話 おニューの可愛い水色フリル付き

 初めまして。私、渡良瀬わたらせ 瑞希みずき。十六歳のピカピカ高校一年生。


 突然ですが私には今、入学してからずっと気になっている人がいるの。そう、気になるだけでまだ好きとかじゃない人が。


 それは隣の席の御子柴みこしばくん。

 お母さん譲りって噂の、サラサラ銀髪に切れ長の憂いを帯びた蒼い瞳。

 耳の奥に残る低い声。高い身長。


 そしていつもボーッと外を眺めながら小さくため息を吐くの。

 超カッコイイ!


 まぁ、話したことはないんだけどね? 多分話そうとしても緊張でワタワタしちゃうと思うし。


 っていうか、御子柴くんが誰かと話してる姿自体あまり見たことがないの。


 たまに女の子に呼ばれてどこかに行ってるけど、すぐに帰ってくる。この前なんて女の先輩にも呼ばれてたっけ。

 そりゃそうだよね。カッコイイもん。入学した時から人気で、クラスの女子や女の先生に、高校の前を通る小学生の女の子までキャーキャー騒いでたくらいだもんね。

 これはもう罪だよ罪。ギルティ!


 だけど、まだ誰とも付き合ったとかって言う話は聞いた事が無いの。なんでだろ? 実はもう彼女がいるとか? それとも誰にも話せない秘密があるとか? う〜んミステリアス!



 そんなある日、たまたま早く起きたから張り切って学校に行くと、そこには御子柴くんの姿。

 他を見回すけど、教室には私と御子柴くんだけ。

 こ、これは仲良くなるチャンス到来!?



「み、御子柴くん、おはよう……」



 とりあえず挨拶から。基本だもんね。って言っても、隣になってから挨拶しかした事ないけどね!



「……んん? あ……おはよ……」



 はい、眠そうなイケボ頂きました。ありがとうございます! 録音して目覚ましのアラームにしたいです!

 ……いや、それはさすがに自分でも引いちゃうな。


 ってそうじゃなくって! せっかく二人きりなんだからもっと話さないと! またすぐに外を向いちゃったし。えっとえっと……あ、御子柴くんの襟足、一本だけ髪の毛伸びてる。なんか可愛い♪


 とその時、教室の窓から吹く春の風。

 それと一緒に私の鼻をくすぐるいい匂い。

 香水かな? それともフェロモン? カッコイイ人は匂いも良いの?



「………(えり)あし(のアホ毛可愛いなぁ)……(こ)の匂い(何の匂いだろ……)」


「なっ!?」



 あ、思ってただけなのにいつの間にか声に出てたみたい。可愛いって言ったの嫌だったのかな? 凄い勢いで振り向くと、なんだか凄い驚いた顔をしてる。こんな顔見るの初めてだなぁ。いつも表情変わらないもんね。



「あ……ああ、あ、足が臭いのか!?」


「……はぃ?」



 御子柴くん? いきなり何を言ってるの? 臭くないよ? むしろいい匂いだよ? 足は知らないけど!


「はいって……はいって言った!? やっぱり臭いんだな!?」



 ち、違うよっ!? あーもうっ! 日本語ってムツカシイ!

 だから私がその誤解を解こうとした時、さっきよりも強い風が窓から入り込んできた。

 そしてその風は私のスカートを豪快に捲りあげる。

 チラッ! どころじゃない。ガバッ! って感じに。


 急なこと過ぎてスカートを押さえる事も出来ないまま風は止み、捲れたスカートも元に戻る。


 えっと……今日どんなパンツ履いてたっけ? ゴムが伸びた古いやつじゃないよね? 確か先週卸したばかりのおニューの可愛い水色のフリル付きだったハズ。ブラとセットの。

 ほっ、それなら見られても大丈夫…………なわけないじゃない!


 パンツ! パンツ見られた! しかも真正面からしっかりと!



「み、見てないっ! 見てないからなっ!」



 絶対嘘。この距離とさっきの捲れっぷりで見えてないハズがないもの。



「ほ、ホントに? 良かった……。今日は大人ぶって真っ赤なの履いて来てたから……」


「え? 水色じゃ…………あ」


「やっぱり見てたんじゃん……」


「ぐっ! そ、そんなことよりもさっきの足の匂いって発言はなんだったんだ!? そ、そんなに臭うのか!?」



 私のパンツをそんなこと扱い!? おニューの可愛い乙女のパンツを!? ゆ、許せない! いくらイケメンでも許せない事があるのよ! だからちょっと仕返し!



「そうね。ちょっと……ね?」


「そ、そんな……。ちゃんと昨日は風呂に入ったのに。頼む! 誰にも言わないでくれ!」


「どうしよっかなぁ〜? さっきパンツ見られたし、そのことを扱いされたし〜?」


「ううっ! た、頼む! 何でもするから匂いの事と、その……を見たことは誰にも言わないでくれ!」



 ん? なんでも? 今なんでもって言ったよね?



「しょうがないなぁ〜。ならちょっとお願いしちゃおっかな?」


「な、なんだ?」


「それはね?」



 私は自分でもわかるくらいに意地悪な笑みを浮かべると、こう言った。



「私と友達になって?」






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 亞悠です。

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